相互扶助の考え一貫 小埜裕二・上教大教授 未明の本質語る 小川未明文学館講座

 小川未明文学館講座が20日、上越市本城町の高田城址公園オーレンプラザで開かれた。
 本年度第3回の講座で、小川未明研究会の小埜裕二会長(上越教育大教授)が「アナキズム童話と戦争童話と戦後童話」をテーマに語った。

第3回講座は小埜教授が講師。童話作家宣言以降の作品の変化と、一貫した思いを解説した

 社会主義活動を積極的に行っていた未明は大正15年に童話作家宣言をし、昭和12年以降は戦争や戦意高揚の童話を発表。戦後はヒューマニズムを主題とした童話を書いている。この変化を「変節者」と批判されることもある未明だが、小埜教授は、未明の中に「相互扶助」の考え方が一貫してあったと解説した。
 相互扶助はロシアの政治思想家、哲学者のクロポトキンが提唱した考えで、生物や人間は利害を超えて助け合うようにできているという考え方。未明は大正11年から相互扶助をテーマにした作品を多数発表し、文学の力で社会を変えていこうと考えていたという。
 昭和17年に発表した『戦友』は国家や種族の幸福のため自分の命を投げ出す自己犠牲が描かれている。小埜教授は、未明が自己犠牲を最も崇高な相互扶助の形と考えたのではないかと指摘。「今の私たちの考え方では、それは間違いのように思う。しかし、未明は崇高な精神の表れと思ったのではないか」と語った。

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