民間勤務でも返済免除を 医師育成奨学金で要望書 医師不足の埼玉「医療は公共財、私立も公立も変わらない」

大野元裕知事(右から5人目)に要望書を手渡す秩父病院の花輪峰夫理事長(右から6人目)=25日、埼玉県庁

 埼玉県内の医師らでつくる「県の地域医療を守る会」(花輪峰夫代表)は25日、民間病院でも医師育成奨学金を返済免除とするよう大野元裕知事に要望した。要望には県内の42医療機関が賛同。県の奨学金は、医師免許取得後に産科などの特定診療科か、県北や秩父地域などの特定地域で一定期間勤務すれば返還免除となるが、特定地域では公的医療機関に勤める必要がある。

 要望書では、公的病院と同様に不採算医療や医師教育、中核的機能を担う民間病院があり、若手医師にとっても選択肢が多い方が望ましいとして、条件を満たした民間病院を奨学金免除指定病院にするよう求めた。また、将来的に生活圏や医療機能の分担などを配慮して特定地域を決定することも要望した。

 秩父病院の花輪理事長は「現場の意見が県の医療行政に反映される体制を作ってほしい。将来的に毎年40人以上の奨学生が出ていくようになるが、今のままでは研修先が少ない」と訴えた。本庄市児玉郡医師会の鈴木和喜会長は「医療は公共財で、私立でも公立でも医師のすることは変わらない」と指摘。県医師会の丸木雄一副会長は「地域医療がとにかく大切で、連携を図らなければ県の医療は成り立たない」と後押しした。

 大野知事は「医師不足地域の医師の話として重く受け止める」と話した。「中核的で不採算医療を担う公的医療機関を優先すべきとの議論があって始めた制度」と説明しつつ、「民間医療機関に広げることについて関係者と議論していきたい」と意欲を示した。

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