雷や花火の音を聞くと目むき出しでヨダレ…犬の「恐怖症」の対処方法、飼い主はどうすれば【ペットドクター相談室】

相談者かつこさんの愛犬の雑種(投稿写真)

雷や花火の音を聞くと、耳をピンと立て目をむき出しにしてヨダレを垂らし、落ち着きがなくずっと吠えています。普段は外で飼っていますが、雷の日は玄関に入れて繋いでいます。隣に飼い主がいても、吠えて壁などを噛むこともあります。玄関の中で吠えても外に声が響き、近所から苦情がくるのではと不安になります。夜通し吠え続けてしまい、どうしてあげたらよいかわかりません。(雑種犬、かつこさんの相談)【お答えします】福井県獣医師会 開業部会 わかさ動物病院(福井県小浜市)泉本桂子獣医師

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雷の音を聞いたときや、花火の音を聞いたときに落ち着きをなくしてしまい、いつもと違う行動をしてしまう症状のことを「恐怖症」といいます。それぞれ「雷雨恐怖症、花火恐怖症」という呼び方をすることもあります。主な症状は、軽いものだと、歩き回る、震える、よだれが多くなる、隠れる、などです。重症なものだと、破壊行動などの動物自身にとって危険であり、けがの可能性もある反応になることもあります。恐怖は危険に対する防御であり、正常な情動反応です。この恐怖に対する防御反応が過剰になったしまった時に恐怖症という判断をします。

さて、相談者さんのワンちゃんは家の中に入れてあげてそばにいても吠えて壁なども噛んでしまう、ということですね。最初に、雷のなった時の対応について考えていきましょう。

雷雨恐怖症の対応、対処方法

雷が鳴る前は気圧の変化、空が暗くなる、風、雨が強くなる、などといったことが起こります。犬は敏感にこのことを感じとります。

まずは、飼い主さんの取るべき態度についてです。「〇〇ちゃんが怖がってしまう」と焦ってしまうかもしれません。でもここはじっと我慢です。何事もないように普段通りの態度でワンちゃんを安心できる場所へ誘導しましょう。相談者さんのおうちでは玄関に入れてあげられるスペースがあるようなので、そこへ誘導してあげてください。

そしていろんな音や光が玄関に入ってこないような工夫をしましょう。例えば、普段飼い主さんが好んで聞いている音楽をいつもより大きな音量でかけたり、遮光のカーテンを使って外の光が入り込まないようにしてみるといいでしょう。

また、スペースが許すのであれば、身を隠すことのできる場所としてクレートを置いてあげるといいかもしれません。ただし、この場合はクレートのドアは閉め切るのではなく必ず開けておいてあげてくださいね。

楽しいことをして恐怖を和らげてあげることも効果的です。狩猟本能を満足させる遊びを用意して、遊んであげるといいでしょう。これらのことを普段から繰り返し行って飼い主さんと犬の予測可能な関係を作っておくことをお勧めします。何度も繰り返すことによって、飼い主さんとの楽しい時間が始まる、という条件付けができ恐怖症の症状が和らぐかもしれません。北陸の冬は雷も多いですから、普段から楽しい遊びを繰り返してトレーニングしましょう。

花火恐怖症も同じ対応で緩和、ひどい時は病院へ

花火の音に対しても、雷の時の対応と同じように過ごすことで、恐怖症の症状が緩和できると思います。幸い花火の音は日時が決まっていることが多いので、事前に安心できる場所に移動ができると思います。

最後に、雷や花火の後、吐く、下痢をする、血便をする、痙攣(けいれん)をする、失神するなど、症状がひどい場合は放っておかず、かかりつけの動物病院に相談してください。動物病院では病気が隠れていないかの検査やカウンセリングを行い、恐怖症に対する緩和方法などを相談させてもらいます。不安を感じにくい環境づくりや接し方、恐怖を緩和するサプリメントや投薬などをご家族と相談して処方します。また普段からその子の性格を知っている獣医師に相談することで、よりよい方法を選択してくれると思います。

どうぞ、相談者さんが、ワンちゃんとのより良い生活を送れることを願っております。

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