ホンダサンクスデーで今年も奮闘の佐藤琢磨。気になる2023年のシートについては「なるべく良い環境、良い状態でのぞみたい」

 快晴となった11月27日、モビリティリゾートもてぎで“ホンダレーシングサンクスデー”が開催された。観客を入れてもてぎで行われるのは3年ぶり。コロナ対策をして国内外のホンダドライバー、ライダーが一堂に会しイベントを盛り上げた。

 F1ではレッドブルのマックス・フェルスタッペン、セルジオ・ペレス、アルファタウリのピエール・ガスリー、角田裕毅、MotoGPのマルク・マルケスが揃うなどホンダならではの豪華なラインアップとなった。

 インディカードライバーとして唯一の参加となった佐藤琢磨。前日土曜日にはHRSの校長としてマルチコースで生徒たちを指導し、アンバサダーにレッドブルのセルジオ・ペレスを迎えて、生徒たちに直接F1ドライバーと触れ合う機会を与えた。

 HRSのスクール生の模擬レースにペレスも飛び入り参加。ウエットコンディションながら流石のパフォーマンスを見せたものの、不幸にもカートにトラブルが出てしまった。

 だがスクール生はその後もQ&Aセッションを英語でトライするなど、F1への道標となるペレスのアドバイスにしっかりと耳を傾けていた。HRSならではの貴重な経験だっただろう。

土曜日、HRSにアンバサダーのペレスを迎えて一緒に記念撮影

 日曜日は朝から快晴で朝早くから多くのファンがもてぎのグランドスタンドを埋めた。3年ぶりのホンダレーシングサンクスデー開催を待ちわびたようだった。

 琢磨の最初のアピアランスはモビパークでのカート大会。二輪ライダーとのコンビでチーム対抗戦となるレースで、ライリーレイドのライダー、エイドリアン・ヴァン・へべレンと組むことに。

 エイドリアンは身長186cm、体重も大柄でかなりのハンディがあったが、琢磨はカートのコースと乗り方を指導して作戦を練り、9台中最後尾だったマシンを早めにドライバー交代して3位まで浮上、レース巧者な所をアピールする。

 残念ながらファイナルラップで角田に抜かれてしまったが、カート場内を大いに盛り上げてくれた。

カート大会。ファイナルラップで琢磨をかわす角田

 その後はNSX-GTに乗って、SUPER GT×市販車混合レースに参加。これは紅組と青組に分かれ、SUPER GTのNSXと市販車の車5台ずつによるリレー形式のレース。

 場内アナウンスで「絶対負けたくない男」とまで評された琢磨は、前日のシートフィッティングを兼ねてテスト走行もしており、かなりの意気込みを見せていた。幸いにも琢磨の青組は勝利して終わった。

SUPER GT市販車リレーで、NSX GTでピットアウトしていく琢磨
NSX GTのレースで青組が勝ち、山本尚貴、角田、牧野、伊沢らと喜ぶ佐藤琢磨

 あいにく琢磨によるインディカーのデモランはなかったために、今回のサンクスデーは場内放送の解説などトークに駆り出されることが多かった日曜日だったが、F1やMotoGP、国内外のドライバーやライダーと多く語らうことができ、フェルスタッペンやペレス、ガスリー、角田などもちろん、二度のインディ500チャンピオンに対するリスペクトはさまざまな場面で見られた。

 ある全日本のモトクロスライダーなどは「子供の頃ずっとF1で見てました。一緒に写真撮ってもらっていいですか?」と殊勝な態度でセルフィーをおねだりする場面も。出演したドライバー、ライダーを眺めても大ベテランとなった琢磨は尊敬される側の立場になっていた。

 今季のインディカーシーズン終了して帰国後はHRSの仕事などをしつつ、スポンサーへの報告やミーティングなど来季の準備に向けて余念がなく東奔西走している。特に来季デイル・コイン・レーシングのシートを巡って若手ドライバーが名乗りを上げてテストもしていることから、様々な憶測も流れた。

 当然このオフのイベントなどでもその質問が向けられたが、琢磨は「今は来季に向けて準備を進めているところです。今日の段階ではっきり決まって言えることはないんですが、なるべく良い環境、良い状態でのぞみたいのは毎年同じ。皆さんに良い報告ができるように頑張ります」とコメント。

 このホンダサンクスデーでも、琢磨の3度目のインディ500制覇を切望する声も多く聞かれたが、何よりも渇望しているのは琢磨本人自身だろう。来季の向けて明るいニュースが聞かれるのを待つばかりだ。

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