習近平国家主席と岸田首相が笑顔で握手、ただし「好事」の背後に「魔多し」の現状―香港誌

中国の習近平国家主席と日本の岸田文雄首相は17日、タイのバンコク市内で会談した。日中首脳が約3年ぶりに直接対面しての対話だった。会談では建設的で安定した両国関係を構築する上での多くの共通認識が確認された。習主席と言えば、2019年に安倍晋三首相(当時)と会談した際の、「仏頂面」が話題になった。今回の岸田首相との会談では、冒頭に笑みを浮かべて握手を交わす姿が公開されるなど、中国側の対日姿勢の変化が目立った。しかし香港誌の亜洲週刊はこのほど、「『好事』の背後に『魔多し』」などとする、毛峰東京支局長の署名入り記事を発表した。以下はその、主要な論点だ。

11月17日夕方にバンコク市内で行われた岸田文雄首相と中国の習近平国家主席との会談は、両首脳が直接話し合う初の機会だった。日中の指導者の3年ぶりの握手が実現した。待ち構えていた習主席が笑みを浮かべて岸田首相を迎えると、岸田首相も情熱的に言葉を交わした。日本のメディアは近年まれに見る良好な雰囲気だったと評した。

両首脳は約45分間の会談で、建設的かつ安定した二国間関係の構築や首脳・閣僚級対話の推進などで協力していくことで合意した。岸田文雄首相は、日中関係にはさまざまな協力の可能性があると論じた上で、多くの課題や懸案に直面していると指摘し、建設的かつ安定的な関係の構築に向けた努力を加速させることが重要と強調

した。これに対し、習主席主席は両国関係について「重要性は変わっていないし、変わることはない」と表明した。習主席はさらに、中国としては、日本と共に戦略的な高い見地から両国関係の大きな方向性をしっかりと掌握し、新時代の要請に合致する関係を構築していきたいと表明した。

岸田首相はまた、尖閣諸島を含む東シナ海情勢や、ミサイルを発射して日本の排他的経済水域に落下させた中国の行動について、深刻な懸念を表明した。同時に台湾海峡の平和と安定を確保する重要性にも言及した。習主席は岸田氏の発言に対して、台湾と人権問題は中国の内政に属すると強調し、他国の干渉は受け入れないと論じた。

中日双方は直接対面式の首脳会談を行うか否かについて、何回も協議と意見のすり合わせを行ってきた。日本側は、会談に前向きであると主張しつづけて、中国の指導者に日本側の重要な懸念を直接伝えたいと考えた。一方の中国側は、日本が改善ムードをより具体的に示す状況が出現した上で、日本側に今後の中国の対日方針を示したいと考えてきた。

双方は最終的に、両国関係が急速に「温暖化」することは不可能でも、悪化させ続けることは避けねばならないという考えを優先し、双方の指導者の直接会談を3年ぶりに復活させ、各レベルのハイレベルの実務交流を再開することにした。

今回の中日首脳会談を経て、日中双方は二国間関係の安定と発展についていくつかの共通認識に達した。中でも急務とされる重要な共通認識は危機管理を強化し、釣魚島などの問題で不測の事態や危機的事態が発生することを防止することだ。そのためには中日の防衛関連上層部が直接電話で連絡できる海空連絡メカニズム、いわゆる「軍事ホットライン」の電話を速やかに実現させるべきとの認識がある。

海空連絡メカニズムについては、中国の李克強首相が2018年に訪日した際に、開設についての合意文書が締結された。しかし、発効はしたが実行されない状態が、それ以前からも含めて約10年も続いている。双方が不測の事態は避けねばならないとの意向を明らかにしているだけに、習近平・岸田会談の波及効果として本当に設置されるかどうかが、今後の注目点と言える。

中国と日本が、突発事態の回避や、これ以上の緊張関係の激化を回避する志向をしていることを「好事」と言うならば、その背後には実現を阻む「魔」も多く存在しているのが現状だ。

まず、尖閣諸島をめぐる日中の緊張は高まるばかりで、台湾海峡などの周辺領域にも拡大しつつある。今年の場合、中国側の海洋警備を担当する海警船が尖閣諸島周辺を巡行した日数は、11月21日までに294日間に達した。うち、尖閣諸島から12カイリ内という、日本にとっての領海内に進入した日数は48日間に達した。また、日本の漁船が海警船に追い払われたために、日本の海上保安庁艦船が海警船と長時間にわたりにらみ合うという危険な事態がしばしば発生している。

また、4月から9月までの間だけでも、中国の戦闘機が接近してきたために日本の航空自衛隊戦闘機が緊急発進する事態は、前年同期より59回多い340回に達した。中国の戦闘機が日本の戦闘機に向けて火器管制レーダーを照射したこともある。日本の戦闘機は曳光弾を発射して離脱した。

さらには、米中の緊張が高まっている背景のもとで、日本は台湾海峡有事が日本有事であると明確に表明することになった。このことは中国にとっては「日本に、軍事戦略の切り札を突き付けられた」ことを意味する。

さらに、日米は大規模な合同軍事演習を繰り返している。そして軍事演習における「これまでなかった状況」が出現している。例えば10月末から11月中旬にかけて実施された日米合同軍事演習の「キーンソード」では、日本の南西の端に位置して台湾からわずか100キロの場所に位置する与那国島に、陸上自衛隊の16式機動戦闘車が空輸された。空輸のために動員された航空自衛隊のC-2輸送機は民間空港である与那国空港に着陸した。

また、米軍が初めてヘリ部隊を与那国島に進出させ、双方が同島に連絡の拠点を設置して合同訓練に臨んだ。日米の合同軍事演習に与那国島の民間飛行場が使用されたのは初めてで、与那国島の日本の基地で日米両国の部隊が合同演習を行ったのも初めてだった。この演習の主たる目的は、台湾海峡有事の際に公共インフラの使用を拡大することで、台湾と周辺地域の突発的な緊急事態に備えることだった。(翻訳・編集/如月隼人)

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