「やめておこう、がない」ぬれ煎餅に、夜景列車…“鉄道BIG4”も「どんな化学反応が起きるのか」サミットからみえた地方鉄道の“伸びしろ”=静岡・富士市

■地方鉄道サミット共同宣言

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私たち地方鉄道は、

一つ 地方鉄道を利用する人々の暮らしの足としての役割を確実に果たしていきます。

一つ 地方鉄道各社が互いに協力を惜しまず、一丸となって困難に立ち向かっていきます。

一つ 地方鉄道ならではの魅力は何であるかを常に探求し、発信していきます。

これは11月25日、静岡県富士市のふじさんめっせで開催された「地方鉄道サミット in FUJI」の場で読み上げられた共同宣言です。

共同宣言には、地元富士市の岳南電車と静岡県の鉄道事業者各社、そして、全国から銚子電気鉄道(千葉県)、富士山麓電気鉄道(山梨県)、明智鉄道(岐阜県)、水間鉄道(大阪府)の4社が参加しました。

共同宣言後、記念撮影でポーズを決める鉄道事業者ら=11月25日 静岡・富士市

厳しい地方鉄道の経営状況

地方鉄道は、モータリゼーションの進行などによる利用者の減少により、多くの事業者が苦しい経営状況に置かれていますが、ここ数年は、それに新型コロナが追い打ちをかけています。

こうした中、岳南電車に補助金を出すなどして、運行を支えている富士市が、地方鉄道の魅力を発信し、さらに鉄道会社の連携を深めて、この困難に立ち向かおうと企画したのが、この「地方鉄道サミット in FUJI」なのです。

「鉄道BIG4」の一角も登場

南田裕介さん:「KYK。これは(K)個性(Y)豊かな(K)会社名ということでございまして、会社名だけで、どこを走っているか、車窓とか風景が思い起こされる会社名になっている」

共同宣言の後には、静岡県内の大学出身で、「鉄道BIG4」として知られるホリプロマネージャーの南田裕介さんが、基調講演を行いました。

鉄道ファンではない人にも分かりやすい内容から、時には「ULO、(U)運賃箱は(L)LECIPか(O)ODAWARAか」など、マニアックな着眼点なども織り交ぜながら、地方鉄道の魅力をアルファベットの頭文字で次々と紹介し、会場を沸かせました。

鉄道会社なのに売り上げの7割が「ぬれ煎餅」

銚子電鉄 竹本勝紀社長:「千葉県の最東端、銚子市におきまして、煎餅屋を営んでおります。当社の売り上げの7割が、ぬれ煎餅。あまり知られていないことかもしれませんけれども、当社、電車を運行をしております」

その後、行われたのは、岳南電車、銚子電気鉄道(千葉県)、水間鉄道(大阪府)、富士山麓電気鉄道(山梨県)、明智鉄道(岐阜県)、の5社による各社の取り組み事例の発表です。

「ぬれ煎餅」に続き、「まずい棒」をヒットさせるなど、売り上げのおよそ7割をお菓子の販売が占めることで有名な銚子電鉄の竹本社長が、自虐交じりに会社紹介をすると、会場は笑い声に包まれました。

そのほか、車内の照明を落として、工場夜景を楽しみながら走る岳南電車の「夜景電車」や、今では全国で78社が参加するまでになった明智鉄道の「鉄カード」の仕組みづくりなど、各社の特徴的な取り組み事例が次々と紹介されていきました。

「成功体験をまねする」

サミットの最後には、取り組み事例を発表した5社に、富士市副市長、岳南電車利用促進協議会を加え、南田裕介さんをコーディネーターとして、「地方鉄道の未来」と題してパネルディスカッションが行われました。

富士山麓電気鉄道 上原厚社長:「鉄道各社がいろいろな工夫をしたり、成功体験を持っています。きょう知ったこともたくさんあります。その成功体験を、自分の会社ではうまく使えるかなと、そこはしっかりと見極めて、まねしてよいかなと思っています。成功体験を共有化することで、まだまだ、鉄道が伸びるチャンスがあるかなという認識」

それぞれの会社で成功した取り組み事例を共有するなど、地方鉄道会社同士の連携を深めることが重要ではないかという意見が出され、富士山麓電気鉄道の上原社長からは、まさに、今回のサミットの事例発表で知ったこともあるという発言もありました。

大手にはできない地方鉄道の売りとは

また、規模の小さい地方鉄道だからこそ、新たなチャレンジに果敢に、スピーディーに取り組んでいくことができるのではないかという意見も目立ちました。

水間鉄道 藤本昌信社長:「やめておこうというような部分がなく、非常にスピーディーにどんどん、本当にその典型の社長(隣にいる銚子電鉄の竹本社長)いらっしゃいますけども。『そんなお菓子作ってどうすんの?』と、いうようなことは、大手では絶対にやらせてもらえない。でも、中小ならできる」

明智鉄道広報担当 伊藤温子さん:「広報とか、いろいろな企画を担当させてもらったりするんですけれども、やりたいと思ったことがやれる。それは大手の鉄道会社さんとお話ししていても、本当にうらやましいっていわれます」

そして、地方鉄道は、小回りの利く規模感であるからこそ、沿線に住む人たちとの協力や、地元企業とのコラボレーションなども行いやすく、地域と一体となって歩んでいくことができるのです。

会社だけでは地方鉄道は存在できない

岳南電車 橘田昭社長:「地方鉄道っていうのは、事業をしている鉄道会社だけでは、もはや存在できない。地域と一体になって、鉄道会社が魅力を発信できる、そんな立ち位置で運行できるっていうのが、地方鉄道の魅力なのかなと思いながら、日々過ごしている」

およそ1時間のパネルディスカッションは、パネラーが7人いたこともあって、1人あたりの発言時間は短かったですが、各社の思い描く地方鉄道の未来の姿が見える、充実したものとなりました。

「まだまだ可能性がある ワクワクしてしょうがない」

南田裕介さん:「まだまだ可能性が今後、まだまだいろんな展開があるんじゃないかと。しかも、どの会社さんもそれぞれ個性的じゃないですか。いろいろな個性が混ざり合って、ぶつかり合うと、どんな化学反応が起きるのか、これからどんなことが展開されていくのか、ワクワクしてしょうがないですね!」

コーディネーターとして参加した南田裕介さんも、地方鉄道の可能性を感じ、今後どうなっていくのか楽しみだと、パネルディスカッション終了後のインタビューに、興奮気味に答えてくれました。

フェアには4000人が来場

今回の「地方鉄道サミット in FUJI」ですが、同じ会場内で同時開催の別イベントとして、「地方鉄道フェア2022」を開催していました。

こちらは、地方鉄道各社のPRコーナーや、鉄道模型の展示、ミニトレインの乗車など、鉄道ファンだけでなく、家族連れで楽しめるイベントとなっていましたが、来場者数は両イベント合わせて4000人を数え、地方鉄道の持つポテンシャルを感じさせる大盛況となりました。

「一つ 地方鉄道ならではの魅力は何であるかを常に探求し、発信していきます。」

今回のイベントは1度限りのものとして企画されましたが、共同宣言にある通り、地方鉄道の探求は、日々、続いていきます。

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