【INTERVIEW:由薫】葛藤をそのまま歌詞にすることが、等身大の自分

由薫

動画配信サービス「GYAO」、ストリーミングサービス「AWA」のフォローアップのもと日本工学院専門学校の学生がアーティストインタビューを行う、ネクストブレイクアーティストをプッシュするコラボレーション企画『G-NEXT-Z』。この企画には、「LINE VOOM」でのオリジナルコンテンツ動画やFm yokohama「Startline」での楽曲OAもあり、多角的なプロモーションを展開している。

今回の選出アーティストは、シンガーソングライターの由薫(ゆうか)。6月にリリースされたデビュー曲「lullaby」が映画『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』の主題歌に抜擢され、パワープレイは36局獲得と確かな実力を武器に幅広い世代に支持を得て、数々のフェス、イベント等にも出演している。本インタビューは、11月4日にはリリースされたデジタルシングル「No Stars」について、今作に込めた想いやデビュー後の心境、そして音楽とは何かを訊いた。

由薫

――まず歌うことに興味を持ったきっかけを伺いたいのですが、幼少期をアメリカとスイスで過ごされたことでの影響は大きいのでしょうか?

「そうですね、1歳から3歳頃のアメリカでの記憶はなくて、5歳から8歳までスイスにいたんですが、そこで物心がついたというか記憶の始まりになるんですけど、歌の興味はスイスでミュージカルに出たことですね。それが『サウンド•オブ・ミュージック』という映画のミュージカルで、私が「出たい!」と言ったらしくて、幼かったし、いっぱいセリフをしゃべったり本格的な演技をした訳ではないんですけど、ステージに立って曲を歌ったりする経験を初めてして、多分、歌うことに興味を持ったきっかけはその辺なのではないかなと思います」

ーーなるほど。話が飛びますが、その後、日本に戻り現在のシンガーソングライターになるまでの道のりというと?

「シンガーソングライターになるぞ!って思ってなったわけじゃなくて、高校の頃に部活で文化祭に出るくらいのアコースティックバンドをやっていた時に、私は「このままオリジナル曲とか作ってオーディションとか出ちゃおうよ」くらいの熱量だったんですけど、それをみんなに話したら「えっ、やらないでしょ」みたいな感じで言われて。気づいたらひとりでやっていました(笑)」

ーー初めてオリジナル楽曲を制作されたのはいつ頃ですか?

「どこからがオリジナル楽曲なのか自分でも判断しづらいんですけど、最初に曲っぽいものを作ったのはその高校生バンドの練習している時期くらいです。きっかけは私の一番仲の良い友達が結構な毒舌なんですけど…、その頃は何かをしようとする度に天気が悪いことが多くて、それを「由薫ちゃんが雨女なのではないか?」って感じで言われて、「いや違うし!」って作ったのが「雨少女」という曲で、雨ばかり降っちゃう女の子の話を歌ったのが初めての曲なのかな」

ーー(笑)そうなんですね。その後、2020年に行われたオーディション『NEW CINEMA PROJECT』に出たことがメジャーデビューへとつながりましたが、オーディションに出るにあたっての考えというのは?

「その当時、すごい音楽にのめり込んでたんですが、でも自分がどれくらい真剣に音楽をやりたいのかってことはわかっていなかったので、知りたいなって思ってて。で、タイミング的には将来を考える時期だったので、いろいろと検索してたら、このオーディションのことを知って、趣旨がすごく好きだったので応募しました。応募した時はグランプリを獲るんだっていうよりは、納得のいく形で一度自分のことを評価されてみたいなっていう気持ちでした。自分なりにその時のベストを尽くした曲を送ってみて一次審査を通るか通らないかが私にとって一番大事でした。そこで通ったら音楽続けたいって気持ちになるだろうなって思ったし、逆に落とされた時にどう思うのかなって。だから一次審査を通過したことは声が出るくらいとても嬉しくて、これだけ嬉しいという事は本気でこのまま続けてみようって思えましたね」

――かなり面白い感覚ですね。結果として審査員特別賞を受賞し、インディーズとしてのリリースを重ねた上で、今年6月に待望のメジャーデビューを迎えました。デビュー曲「lullaby」は、映画の主題歌にもなりパワープレイ36局獲得など新人としては異例の活躍でしたが、主題歌だと知らされた時の心境はどういうものでしたか?

「抜擢された時の心境はよく覚えているのですけど、映画の主題歌を歌うことに選んでいただいたっていう事とその曲のプロデューサーがONE OK ROCKのToruさんであるという事が同時に知らされて、なんか完全にキャパオーバーでした。だから楽曲が配信とかされるまで、いつ「嘘です!」って言われるかわかんないなって思っていました(笑)。喜びが湧いてきたのは配信された時に本当だって確定してからですね」

由薫

――今作の『No Stars』は引き続きToruさんのプロデュースですが、この曲に込められた思いやテーマについて訊かせてください。

「Toruさんと話して、前作は映画の世界観を守りつつ曲を作ったので、今回はちゃんと等身大の自分が現れるような曲を作るという事を趣旨として作り始めました。出来た曲は前向きさのカラーがある曲だったので、最初は歌詞も前向きをテーマに作りました。でもToruさんに見てもらった時に、いいねとはならなくて…。前向きな若者らしい曲を作ろうと意識しすぎて自分らしさがなくなっていたんです。そこから何度も書き直した後に、”考えすぎるのはやめよう”って葛藤していることを歌詞にするのが等身大の自分なんじゃないかって思って、タイトルも「No Stars」という事になりました。Noが否定語なので星がないという意味なんですけど、その単語を思いついた時にすごくしっくりきたんです。それこそコロナで辛い経験をされた方がたくさんいる中で”世界は明るいよ”なんて言えなくて。だから世界は明るいって考えを一回捨てようって思いました。でも聞いてもらうからには”世界は暗いよ”で終わるのではなく、空に星がなくて真っ暗でも、”人って内にある光るもので明かりを灯し続けることができる”ってことを伝えたかった。Z世代は今までとは違う雰囲気が流れている感じがして、元気いっぱいで明るいっていうよりも諦めとかを知っちゃっているような。そういう世代に聞いてもらったときにもちゃんと届くような曲になったらいいなという気持ちで作りました」

――歌詞の中で気に入っているフレーズはありますか?

「ひとつ上げるのであれば《流れるRadio》って歌詞ですね。実際にラジオで流れるのが嬉しいです。今回が一番、一つひとつを吟味して作詞をしてそれぞれのラインに自分の思いが詰まっていて、なのでどこか一部分でも聞く人に刺さればなと思います」

――2022年を振り返り、デビューから半年たって今感じることを教えてください。

「インディーズの頃に出したEP『Reveal』が隠していたものを表に出すって意味なんですけど、曲を出すっていう行為は最大の自分の内側を出すってことだと思うんですよね。「lullaby」でデビューして、今回「No Stars」をリリースして自分の内を出すってことを繰り返してくうちにちょっとずつ見えてくるものがあって、ただそれはまだ始まったばかりでこれからどう走り出すかみたいな未来への希望だと感じています」

――来年の目標や今後チャレンジしてみたいことはありますか?

「どうしたいかちょっとずつわかってきているので、楽曲をたくさん出していきたいなって思うのと、Oasisの「Don‘t Look Back In Anger」を大合唱した動画に感動したので、最終的にみんなでシンガロングするべく、”由薫”っていう音楽を多くの人に知ってもらって最高にいい景色が見たいので、沢山ライブをしたいなって思います」

――では最後の質問です。由薫さんにとって音楽とは?

「意見が変わっていってはいるんですけど、それはいつも考えていて…。今まではコミュニケーションが苦手で人と関わるのが好きじゃないって思っていたんですけど、実は逆で、どうでもいいと思ってないからこそいろいろ気にしちゃって「うわー」ってなってしまってたんだと気づいて。だから今は「由薫って、人のこと大好きだよね」っていろんな人に言われて、そうだよなって思っています。そして音楽に今思うのは、人とのコミュニケーションというよりかは自己表現かもしれないし、聞いてくれる人がいて初めて曲を作りたいと思うので、その人と私を結んでくれるものかもしれないし、ちゃんと矢印がある音楽というか、私からあなたへの音楽として私だけで完結することはできないと思う。だからライブで聞いてくれる人がいたりして初めて私は音楽し続けられるのかなって。そんな私にとっての音楽とは、”何かを共有するためのもの”だと思います」

由薫×三井優奈、佐藤真優(日本工学院専門学校 蒲田校 / コンサートイベント科)

配信シングル「No Stars」

2022年11月4日 配信

日本工学院専門学校コンサート・イベント科 ページ

由薫 オフィシャルHP

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