衆院山口1~3区、誰がどこへ 4議席独占の自民、補選の候補次第で変化も

 次の衆院選で山口県内の小選挙区の定数1減が決まり、関係者はさまざまな反応を示した。県内の4小選挙区は2012年の総選挙から4回連続で自民党が独占してきた。新たな区割りで現職の地盤が重なるケースもあり、誰がどの選挙区から出るか戸惑いが広がる。候補者の調整には、安倍晋三元首相の死去に伴う4区の補欠選挙も影響する。

 現在の1~3区の現職は自民党の有力議員で占めている。1区は高村正彦前副総裁の長男正大氏、2区は安倍氏の実弟の岸信夫首相補佐官、3区は林芳正外相が陣取る。

 新しい区割りは県央部の山口、宇部、防府の3市が新1区、東部の岩国市や周南市などが新2区、下関市を中心とする西部が新3区となる。新1区は高村氏と林氏、新2区は岸氏と高村氏の拠点が重なる。新3区には林氏の本来の地盤の下関市がある。

 市域が1、2区にまたがっていた周南市は全域が新2区に入る。高村氏を支援する周南市議は「高村さんだから、父子に票を入れてきた有権者もいるはず。同じ自民党でも別の候補者に替わるなら有権者は複雑な思いを抱くだろう」と胸中を明かす。高村氏の祖父は徳山市(現周南市)の市長を務めた元衆院議員。新1区に立候補することになれば、築いてきた地盤に別れを告げることを意味する。

 別の周南市議は9月の安倍氏の国葬における同市の扱いを疑問視する。2区内の全10市町で唯一、首長に案内状が届かなかった。「新2区が岸さんになったら周南市が外様のような扱いにならないか。要望を取り上げる優先度も見通せない」と警戒する。

 岸氏を支える岩国市議も気をもむ。岸氏は体調面が不安視され、代替わりが取り沙汰されている。「次は本人が出るのか長男の信千世さんが出るのか。早く決めてほしい」。別の同市議は「新2区は岸家で決まっとる。宇部や下関ほど影響はない」とみている。

 林氏は昨年の衆院選で参院から転身を果たし、宇部市が拠点となった。今年6月に区割りの改定案が示された時点では同市を含む新1区に臨む見方が強かった。県政界でライバル関係だった安倍氏が7月に亡くなり状況は一転。下関市では新3区での立候補を望む声が強まる。自民党関係者は「両にらみできる林さんは一番有利。何も動く必要がない」とみる。

 新しい3選挙区の候補者の調整には、早ければ来年4月にある4区の補選が影響してくる。山口市議は「安倍さんが亡くなり、本来は分が悪かった高村さんが新1区で残る可能性が高くなった」と強調した上で「補選に誰が出るかで状況は変わる」と補足する。ただ安倍氏の後継者選びは定数1減のあおりで難航している。

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