【厚労省】コロナ・インフル同時検査キット、OTC化を了承

【2022.11.29配信】厚生労働省の薬食審医療機器・体外診断薬部会は11月28日、新型コロナウイルス及びインフルエンザウイルス抗原定性同時検査キットの OTC化を了承した。リスク区分については11月29日夜の医薬品等安全対策部会で議論されるが、日本薬剤師会から第1類医薬品を要望する意見が出た。第1類医薬品は薬剤師による販売となるが、ネットでの販売が可能。

新型コロナウイルス及びインフルエンザウイルス抗原定性同時検査キット(同時検査キット)のOTC化に関しては、11 月 22 日に開かれた厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで議論されていた。論点として、「様々な意見があるものの、医療ひっ迫の回避に資するといったことも考えられるため、今冬、新型コロナとインフルエンザが同時期に流行することに備えた
対応としての自己検査用のキットについて、新型コロナの抗原定性検査キットを基本としつつも、一つの選択肢として、同時検査キットの一般向け販売を可能とすること」の方針が議論され、「インフルエンザの検出感度や陽性が出るタイミング等に留意が必要等の指摘はあったものの、大きな反対意見はなかった」とされた。

この議論を踏まえて、厚生労働省として、供給量に制約はあるものの、同時検査キットについてOTC 化の検討を進めることとしたと説明された。

体外診断用医薬品の一般用検査薬への転用については、通常であれば業界が一般用検査薬として取扱う際の使用上の注意、使用方法、性能等を盛り込んだ評価の指針(ガイドライン)案を作成するが、今回は厚労省で作成。部会においてそのガイドライン(案)の妥当性も議論され、了承された。ガイドラインについては、了承後、ガイドラインとして速やかに通知される見込み。

なお、当該一般用検査薬のリスク区分については、当該使用者に提供すべき情報等を踏まえ、11月29日夜の医薬品等安全対策部会で議論される。

新型コロナウイルス感染症対策本部によると、コロナ・インフルの同時流行の対応をまとめる中で、国会でも同時検査キットのOTC化が必要との指摘あり、そういった背景からも関係学会等と調整を進め、アドバイザリーボードでの議論となったとした。議論の中身については、「医療逼迫を回避することも考えられるということで緊急時の対応と理解すべきという意見や感染症診療において検査戦略は根幹となるものであるため恒久化はやめた方がいいという意見、今回の取り組みを検証し今後に活かすべきという意見、インフル陽性によってかえって外来が逼迫するのではないかという意見、インフルの検査結果はコロナと異なり発症直後は陰性になりやすいことに留意すべきといった意見があった」との議論の中身を紹介した上で、「大きな反対意見はなかったこともありOTC化することになった」と説明した。

委員から「このOTC化は期限付きなのか」との確認の質問が出ると、事務局は「期限を付けることは想定していない」と回答した。

日本薬剤師会常務理事の髙松登氏は同時検査キットのOTC化は「有用」との考えを示した上で、「ただし、検体採取の仕方やタイミング、その後の陽性だった場合の対処法などについては、利用する方に責任をもって説明をし、しっかり理解をいただくことが必要。単に説明して終わりではなく、しっかりとした販売方法にしていただきたい。そのためには薬剤師が販売時にいろいろな確認をとりながらの関わりが持てればと思う。リスク区分については第1類医薬品でお願いできればと思う」と述べた。

OTC化ののちの在庫の確保については、事務局は医療用の確保を優先するため、「OTCとしては当面は限りがある」との認識を示した上で、時間とともにメーカーの生産量が増加していく可能性があるとした。

ガイドラインには、【製造販売業者からの販売者に対する説明資料例】を記載。この中で、「してはいけないこと」は次のように記載している。

検査結果から自分で病気の診断をすることはできません(添付文書の「この検査の使用について」に従ってください)。
(解説)本品は SARS コロナウイルス抗原及びインフルエンザウイルス抗原を検出する検査薬であり、本キットのみでは SARS-CoV-2 又はインフルエンザウイルスに感染しているのか否かの判断はできません。また、ウイルス量が最大になる時期が異なる等、ウイルスによって性質が異なることが知られているため、本キットの結果を活用するにあたって、以下の点に留意するようご説明してください。
・発熱等の感冒症状がみられた場合にセルフチェックとして本キットを使用し、判定結果を踏まえて、お住まいの地域の自治体からの案内にしたがって適切に医療機関の受診等を行ってください。
・発症からの経過時間によって判定結果が変わりうるため、発熱等の症状が出て本キットを使用するまでの時間を記録し、医療機関の受診時に本キットの結果とあわせて医師に伝えてください。
※いずれの判定結果が陰性の場合でも、偽陰性(過って陰性と判定されること)の可能性があります。
※特にインフルエンザは、発病初期はウイルス量が少なくウイルス抗原を検出できない場合があることが知られています。

加えて、<Q&A よくあるご質問>の例示を以下のように記載。この例示の他、想定される使用者からの質問とそれに対する回答について、必要に応じてグラフや図等も用いてわかりやすく記載することとしている。

Q1:添付文書の「この検査について」に「それぞれのウイルスの性質が異なる」とあるが、具体的にどのような違いがあるのか。
A1:一般的に、新型コロナウイルスのオミクロン株の場合は発症前後でウイルス量が最大になると言われている一方で、インフルエンザウイルスの場合は発症早期ではウイルス量が比較的低いことが知られています。

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