「性暴力根絶条例」の制定 長崎市、明言避ける 市議会一般質問

 2007年、女性記者が当時の長崎市幹部(故人)から性暴力を受けたとして市に賠償を命じた長崎地裁判決を巡り、市は28日の定例市議会一般質問で、判決後に実施した市職員対象の研修の受講率が現時点で約96%になったと明かした。性暴力の未然防止や被害相談体制の整備などを図る「性暴力根絶条例」の制定については明言を避けた。
 池田章子議員(市民ク)の質問に、西本徳明総務部長は、ハラスメントや二次被害防止などについて学ぶウェブ視聴研修を8月から実施していると説明。市によるとNPO法人「DV防止ながさき」の中田慶子理事長が研修を構成し、受講者からは「自分ごととして捉えなければ」などの感想が上がっているという。
 一方、性暴力根絶条例を制定するよう求められ、宮﨑忠彦市民生活部長は「一つの手段」としつつ、男女共同参画推進条例や犯罪被害者等支援条例に沿った取り組みを着実に実施すると述べるにとどめた。同条例は福岡県などが先駆的に施行している。
 元原告の女性はオンラインで議会を傍聴。長崎の支援者を通じて寄せたコメントで「今ある条例によって、暴力やそれを隠蔽(ぺい)しようとする市の体質を生まれ変わらせることができるとは考えにくい。条例制定に努める態度にならないのが残念」と不満を示した。
 5月の判決は、性暴力に職務関連性があり、市は2次被害を防ぐ注意義務に違反したと認定。市に約1975万円の賠償を命じた。7月に田上富久市長が東京都内で女性に謝罪し、事件を教訓として職員の意識向上に取り組むと述べた。


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