朝長氏が市長選不出馬表明 『佐世保にも刷新の風』 知事選以降に“継承”の動き

 佐世保市政を4期16年にわたり、けん引してきた朝長則男市長が勇退を表明した。手堅い政治手腕で目立った失政はなく、「続投は十分あり得る」とみられていた。一方、今年に入って、知事選で新人候補だった若い大石賢吾氏の対立陣営に回り敗北。続く参院選も含め県内政界で世代交代が進む中、佐世保でも「刷新の風が吹いた」という見方もある。
 経営危機に陥ったハウステンボスの救済やクルーズ船の受け入れなど、特に地域経済の活性化で実績を重ねた朝長氏。5選不出馬の理由に高齢を挙げたが、側近によると、健康状態に「全く問題はない」。市職員も「仕事に対する厳しさ、緊張感は変わらない」。心身とも充実している中での勇退に驚きの声もあった。
 歴代市長の最長任期は4期。朝長氏に対して「5期は長い」という指摘もある一方、市内全域に根付いた強固な後援会組織を持ち、市政運営の安定感から続投を望む声は少なくなかった。
 その空気が微妙に変化したのは2月の知事選。現職だった70代の中村法道氏と当時39歳で選挙に初めて挑んだ大石氏の事実上の一騎打ちとなり、朝長氏が全面支援した中村氏は敗れた上、佐世保市内でも約4200票下回った。「市長の落胆は大きく、時代の変化を感じていた」(支援者)という。
 一方、選挙戦で大石氏を精力的に支えたのが元衆院議員で地元県議の宮島大典氏(59)。その勢いのまま10月に市長選出馬を表明した。
 不出馬を表明した会見で朝長氏は、知事選の結果が自らの決断に影響したかを問われ、「全くない」と断言。後継者の指名はせず、「選挙自体を応援するつもりはない」とも語った。
 ただ知事選以降、水面下では、朝長氏勇退を想定した“継承”の動きが始まっていた。相手は以前から市長ポストに意欲を抱いていた自民党市議の橋之口裕太氏。両氏のそれぞれの有力な支援組織が連携する方向で調整。同党出身の朝長氏が不出馬を表明した直後、橋之口氏は所属会派の自民党市民会議の会合で、市長選に挑む意向を伝えた。
 人口減少や新型コロナウイルス禍による地域経済の疲弊、石木ダム建設、米海軍佐世保弾薬補給所(前畑弾薬庫)の移転・返還など難題を抱える同市。ある市議は「さまざまな争点があり、激しい選挙になる」と予想し、こう続ける。「朝長市長が前に出なければならない局面もあるのではないか」


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