大阪・吉村知事「コメ10キロ配布」に非難殺到! 原資は国の税金、配布直後に大阪府知事・市長選で「事実上の買収行為」の指摘も

大阪府HPより

新型コロナで全国最多の死亡者を出してきたにもかかわらず2025年大阪・関西万博に血道を上げ、第8波の最中にあるというのに12月3日からは大阪万博PR活動などのためにイギリス訪問するという吉村洋文知事。この期に及んでコロナ対策を軽視する姿勢には呆れ果てるほかないが、さらに批判を集めているのが、唐突に打ち出した「子ども一人あたり米10キロ配布」だ。

25日に吉村知事は、物価高騰対策として大阪府内の18歳以下約140万人と妊婦を対象に「一人当たり米10キロ相当を配る」と方針を発表。米は5000円相当で、予算は総額80億円にものぼる。ちなみにその原資は、全額が国の地方創生臨時交付金。つまり税金だ。

東京都も1万円相当の米を配布するとしているが、こちらは住民税非課税世帯を対象とした困窮世帯支援だ。当然、記者からは「なぜ子どもがいる世帯? なぜ米」という質問が寄せられたが、これに対して吉村知事は「子どもがいる世帯は食費が多くかかる、いっぱい子どもは食べますし。これは貧困対策ではなく、物価高騰の影響を受けているので、所得制限なく支援する」と述べたのだ。

言っておくが、大阪は全国平均よりも貧困世帯の割合が高く、さらに2016年に山形大学の戸室健作准教授が公表した研究では、大阪府の子どもの貧困率は沖縄に次ぐワースト2位。全国平均が13.8%であるのに対して大阪は21.8%と高い水準にある。物価高のいま、力を入れるべきは物価高騰の煽りをもっとも受けているひとり親世帯や高齢者といった困窮者支援であるはずだ。

ところが、吉村知事は貧困対策ではなく「子育て支援としてやる」と明言。その上、現金の支給ではないことについて、吉村知事はこう述べたのだ。

「パチンコ代とか遊興費にならないようにですね。現金が使い勝手良いのはわかりますけれども、子どもたちの食費を支援したい」

カジノ誘致でギャンブルを推進しようとしている張本人が「パチンコ代とか遊興費にならないように」とは、よく言えたものだと呆気にとられるほかないだろう。

●吉村知事の米10キロは選挙目当てのバラマキ? 配布時期は来年の大阪府知事・市長選直前

無論、この滅茶苦茶な「米10キロ配布」には、ネット上でもツッコミが殺到した。

〈国がお肉券やらお魚券とか言い出して失笑→怒りから、10万円給付になりましたが、今頃大阪では「米10キロ」とか言い出しているってマジですか?!〉
〈貧困対策ではなく所得制限なしの考えだそうですが、それなら米10キロの現物支給ではなく、児童手当に上乗せして現金支給した方が効果的ではないでしょうか。いつも支給している口座に上乗せするだけなら、手間もかからないと思うのですが…〉
〈「米10キロ」って高級ブランド米じゃなければ通販とか業務用スーパーで3000円以内で普通に買える。自治体が入札で大量に購入すれば当然、市場価格より安いはずだし、「子供一人3000円支援」だとしょぼいが「米10キロ」だと印象は違うということなのか〉

3000円相当の米10キロで「やってる感」を演出するとは、いかにも吉村知事らしいセコさだが、しかし、さらに重要なのは、米10キロの配布時期だ。

物価高騰対策と言いながら、米10キロの配布は物入りな年末年始などではなく、申請受付開始は来年3月上旬。配布は来年3月中を予定しているという。

ここでピンときた人も多いだろう。というのも、吉村知事および松井一郎・大阪市長は来年4月6日で任期満了を迎えるため、大阪府議会選や大阪市議会選が実施される4月9日の統一地方選前半戦で大阪府知事選・市長選がおこなわれる見込みだ。

3月に米を配り、4月には首長選という、ありえないタイミング──。ようするに、どう考えても「米10キロ配布」は、維新による選挙目当てのバラマキとしか思えないのだ。

実際、吉村知事は「大阪都構想」住民投票がおこなわれた2020年にも、ふるさと納税を活用して全国から集めた寄付で基金を創設し、5月にコロナ患者に対応する医療従事者やホテル従業員らに「応援金」としてQUOカードやQUOカードPayを支給。そこには「大阪府知事 吉村洋文」という署名入りの感謝のメッセージが添えられていた。このとき現金ではなくQUOカードにしたのは、迅速な給付だけではなく「メッセージカードを同封することによる感謝メッセージ力の効果が大きい」と判断したためだった(詳しくは既報参照→https://lite-ra.com/2021/12/post-6089.html)。

住民投票がおこなわれた年にも、人々の寄付で支援金を支給するというのに、まるで自身のPRのようなメッセージカードを付けるために現金ではなくQUOカードを配布した吉村知事。そして、再選出馬をすると見られる府知事選に合わせるかのように「米10キロ配布」をぶち上げる──。繰り返すが、この米10キロの原資は国の地方創生臨時交付金だ。普段は「身を切る改革」などと言っておきながら、よりにもよって国民の税金を使って大阪維新のための選挙のバラマキをするとは、開いた口が塞がらないだろう。

●業者による中抜きに懸念の声! 塾代助成、18歳以下へのQUOカードPayでも…

まったくゲスの極みとしか言いようがないが、しかし問題はこれだけではない。ネット上では「業者による中抜きがおこなわれるのではないか」と懸念する声があがっているからだ。

というのも、大阪市では経済的にゆとりのない世帯の中学生を対象に月1万円まで塾代を助成しており、最近も対象を小学5・6年生に拡大すると発表。吉村知事は松井市長と維新の成果だと誇っていたが、2020年度の塾代助成の事業費が約15億円だったのに対し、運営業務を担う民間事業者に対する事務費はなんと約5億円。今年度も事業費約24億円に対し、事務費は約6億円となっている。つまり、予算の3〜4分の1が委託先の事業者に流れてしまっているのだ。

また、吉村知事は今年7月以降、18歳以下を対象に1人1万円のQUOカードPayを配布しているのだが、府議会で利用実績について質問された際、府は「事業者と協議したが、企業秘密にあたるので提供できないと回答があった」と回答。さらに、ギフト券の利用期間は3年だが、〈使われなかった金額は府には返還されず、事業者の利益となる〉(毎日新聞10月16日付)というのだ。

血税を使っておきながら、この杜撰さ……。そもそも吉村知事といえば、岸田政権が昨年18歳以下に現金とクーポンで10万円相当を給付する施策を打ち出し、現金での一括給付より事務経費が900億円も高くなることが判明した際、「完全な愚策だ。やめてもらいたい」「現金10万円の一括給付にして900億円は経済的に厳しい人に給付するほうがいい」「みなさんの税金を使うのに納得感が得られない。考えなくてはいけないのはどれだけ財源を使っているのかという感覚だ」などと批判していた。だが、維新府政・市政では、巨額が事務費に費やされ、イメージアップが図りやすい「子育て支援」を声高に叫ぶ一方、経済的に厳しい人々への支援が捨て置かれてしまっているのだ。しかも、その子育て支援も選挙対策のバラマキなのはミエミエだ。

コロナで全国最多の死者を出している事実だけでも吉村知事および維新政治の失敗は明らかだが、くれぐれも大阪府民は米10キロ程度で騙されることのないよう、来たる選挙では賢明なジャッジを下していただきたい。
(編集部)

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