<レスリング>【2022年全国中学選抜U15選手権・特集】輝く「金4・銀2」! しかし、目指すのは「攻撃するチーム」…神奈川・NEXUS TEAM YOKOSUKA

 

 2022年東京都知事杯全国中学選抜U15選手権は、6月の沼尻直杯全国中学生選手権で男女1階級ずつを制した神奈川・NEXUS TEAM YOKOSUKAが男女で4階級を制覇し(男子3・女子1)、銀メダル2個を取る健闘。強さを見せた。

 全国中学生選手権も、2階級の優勝のほか「銀1・銅3」を取っていたので、メダルの数は同じだが、今回は色が“グレードアップ”する前進を遂げた。前年のこの大会も「金2・銅2」を取っており、全国大会として3大会連続で最多のメダル数を獲得。“メダル・コレクター・クラブ”として、その強さが定着した感がある。

▲メダル獲得選手。前列左から桑原延佳(金)、本多正虎(金=MVP)、横田大和(金)、後列左から勝目力也代表、高山海優(銀)、勝目結羽(金)、木下凛(銀)=撮影・矢吹建夫

 勝目力也代表は「チームを立ち上げて5年。当初から『5年で結果を出す』という目標を掲げていたので、ひとまず達成できたかな、と思います。今のところ、ここまでやってきた自分を褒めてあげたいですね」とうれしそう。

 「指導の極意」を聞くと、「日本一、攻めるチームだと自負しています」と、攻撃レスリングの徹底を挙げた。「先に仕掛けて、試合の流れを持ってくることが必要。それを徹底してやっています」と話し、攻撃力の必要性を口にした。

厳しさだけではなく、強弱をつけることが大切

 大切なことは、練習の強弱をつけること。勝たせたいからといって厳しさだけを押し付けてしまっては、選手は嫌になり、気持ちが下がってしまう。成長期の場合、詰め込むことがマイナスになる場合もある。週6日のうち、本当に追い込むのは2日くらいで、練習をセーブする日もある。

 「指導はジュニア世代が一番大切で、一番難しい。体の成長期であるとともに、心も指導する必要があります」と話す。だが、試行錯誤の連続の中にも結果が出ているのだから、正しい方向に向いているのだろう。

 勝った選手の中には、4試合の総タイムが111秒という圧勝で優勝した長女・結羽(42kg級2連覇)もいる。最近はクラブ内で実子を指導するケースは少なくないが、意外に難しい。他の選手と同じように見ているつもりでも、無意識のうちにも「自分の子ばかり見ている」と思われる言動があるかもしれない。わが子だから特別に厳しくするのも問題が出てくる。

▲4試合すべてを1分以内で勝ち上がった勝目代表の長女・結羽(42kg級)=撮影・矢吹建夫

 勝目代表は「家でも、父というより先生として生活しているんです」と説明し、“わが子だから”といって、いかなる特別扱いもしていないことを強調する。ただ、わが子を厳しくすることで周囲の選手の気が引き締まる面があるので、「厳しくしているかもしれませんね…」と苦笑い。「(子供には)こらえてもらいたいです」と続けた。

 「普通の家庭のように、親が子に(娯楽など)楽しくしてあげられない寂しさは、ときに感じます」と話したとき、やや切なそうな表情になったものの、子供に「オリンピックに出たい」という気持ちが芽生えたからこそ立ち上げたクラブ。その夢をかなえてやるために全力を尽くすのも親の役目。もちろん、クラブに通って来るどの選手に対しても同じ気持ちだ。

キッズの隆盛で、「レスリングの核がおろそかになっている」との警鐘

 来年の目標も、2つの全国大会で最多のメダル数を取ることだが、獲得メダルの数が多いのは、「ウチが強いからではないですよ。全国的にレベルが下がっているからだと思っています。このままでは、日本レスリング界の危機になると思っています」という意外な言葉も口にする。

 キッズ・レスリングの隆盛によって、各選手が幼少の頃から昔とは比べものにならないほど高度な技術を使うようになっているのは確か。その弊害として、小手先のテクニックに走ってしまい、「一番大事で、核となるべき部分(闘う・攻める)が、おろそかになっていると思うんです」と言う。

 だからこそ、目指すのは「攻撃するチーム」。その揺るぎない評判をつくる目標も掲げ、熱く燃えている。先月は母校の山梨学院大からは小幡邦彦監督高橋侑希コーチが来て指導してくれ、この大会の翌日には佐賀・鳥栖クラブの小柴健二代表(鳥栖工高監督)が来て練習を視察。レスリングに対する熱き思いを交換している。

 「熱い指導者が頑張らないと、日本レスリングの未来は厳しいと思います」-。情熱あふれる指導者が、“闘うレスリング選手”の育成を目標に、さらに上を目指す!

▲攻撃レスリングの重要性を訴える勝目代表=撮影・矢吹建夫

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