【独占スクープ!】統一教会問題の「黒幕」【ルポ統一教会2】|福田ますみ 新潮ドキュメント賞を受賞したノンフィクション作家の福田ますみ氏が、「報じられない旧統一教会問題」を徹底取材。第2回目は「統一教会問題の『黒幕』」。自らの正体と真の狙いを35年間ひた隠しにしてきた巨悪の実態。

“脱会請負人”宮村峻氏

第1回(月刊『Hanada』22年12月号)では、反統一教会陣営にとって絶対触れられたくない、信者に対する拉致監禁の実態について報じた。しかも、この拉致監禁はそれだけで終わるのではなく、拉致監禁して強制棄教させた元信者に教団を訴えることを促し、人為的に教団に対する“被害者”を作り出し、しかもそれが莫大な金を生み出すシステムになっている事実を説明した。

なんといっても、このシステムを編み出した立役者のひとりは、“脱会請負人”宮村峻氏である。前回、彼の所業を明らかにしたからにはご本人の弁明をぜひ聞きたいと思い、都合4度、都内の彼の自宅に赴きインターフォンを鳴らしたが、いずれも応答がなかった。

実は最初に訪れた時、インターフォンに反応がないので、家の周りを歩いて時間を潰し、また家の前に戻ってみると、路上に宮村氏の親族らしき男性がいた。「宮村さんですか?」と声をかけると、そうだと言う。取材したい旨話すと、(宮村氏は)「夜にならないと戻らない」という。私は一応名刺を渡しておいた。

4度目に訪ねた時は室内に明かりが灯っているのが見えたが、やはりなんの返答もなかった。かなり警戒しているのかもしれない。

そこで、12年間に及ぶ拉致監禁の被害者である後藤徹氏の民事裁判に提出されたある陳述書を引用することにする。これは、信者に対する拉致監禁の事実を最初に報じたルポライター米本和広氏が書いたものである。2008年2月14日、後藤氏が解放されて4日目に米本氏は宮村邸を訪ね、路上で短時間の立ち話ではあるが彼に話を聞くことに成功している。そのやりとりの一部をここに紹介する。

「あの、キチガイババアか」

米本氏は、まずこう書いている。

「宮村峻の自宅や車を写真撮影していると、近所から通報があったのか、宮村本人が出てきました。時間にすれば、30分程度でしょうが、立ち話をしました。私が名前を名乗ると、宮村は緊張した面持ちになり、最初の5分間は首筋がピクピクしていました(後略)」

米本「後藤さんのことを取材しているが、後藤さんを知っているか」
宮村「ああ、数年前に説得したことがある」
米本「後藤さんは12年間も監禁されたと話しているが」
宮村「監禁? そんなことは知らない。俺は家族から頼まれて説得に行っただけだ」
米本「玄関に南京錠が施されていたということだが」
宮村「そんなことは知らない」
米本「どのくらい説得に出向いていたのか」
宮村「数年前に1年間か1年半だ」
米本「これまでずいぶんいろんなところで説得をやっているようだけど、どのくらいの頻度で説得に出向くのか」
宮村「だいたい、月に2、3回行く程度だ」
米本「ということは、後藤さんが監禁されていた荻窪フラワーホームには、54回出向いていたことになるが、本当に南京錠のことは知らなかったのか」(実際は73回)
宮村「……俺は家族から頼まれて説得に行っていただけだ」
米本「しかし、これまで私が取材した例でいえば、すべてが外に出ることができないように玄関、窓がしっかり鍵をかけられた状態で、牧師などあなたのような脱会説得者がやってきては説得を受けている」
宮村「そりゃあ、悪いことをするから、家族が保護するんだ」
米本「保護といえば聞こえはいいが、実際は監禁だ」
宮村「俺は監禁なんかしない。家族が保護するだけだ」
米本「緊急入院となった後藤さんを見舞ったけど、一人で立ち上がることができないほどやせ細っていた。可哀そうな感じがした」
宮村「後藤が断食なんかするからだよ」

この返答について、米本氏はこう述べている。

「自分が説得した相手がやせ細った状態で緊急入院したと聞かされれば、心配して様子を聞くのがふつうです。それを彼は顔色ひとつ変えることなく、平然と断食のことを口にしただけでした。また宮村は数年前に1年か1年半説得に行っていただけで後は知らないと語っていたにもかかわらず、後藤さんの2年前の断食のことを知っていたことには驚きました。宮村は、家族から後藤さんの様子を逐一報告を受けていたということです」 (中略)

米本「あなたはなぜ脱会説得をしているのか」
宮村「家族から頼まれるからだ」
米本「頼まれるからやるのか」
宮村「そうだ。俺は人権の尊重とか正義とかそんな大上段に振りかぶった目的でやっているわけではない。家族から頼まれるからだ」

この発言は、他の牧師など脱会説得者たちが「基本的人権の尊重の立場から統一教会から信者を救出することを目的に脱会説得している」と主張していることを意識してのものだと米本氏はいう。

米本「頼まれたら、すべて引き受けるのか」
宮村「そんなことはない。俺の考えで引き受けるかどうかを決める」 (中略)
米本「あなたが引き受ける条件について興味がある。けっこう高い料金を請求するという話を聞いているし、またある信者家族の母親に『子供を脱会させたいのだったら』と関係を迫ったという話も聞いているからだ。言っておくが、これは統一教会からの情報ではなく、反統一教会の陣営から聞いた話だ」
宮村「ハハハ。人は勝手にいろんな噂を流している」
米本「関係を迫ったという話は、『全国原理運動被害者父母の会』のAさんが話している」
宮村「あの、キチガイババアか。勝手に噂を流しているだけだ」
米本「当初あなたが活動の拠点としていた荻窪栄光教会から追放されたのも女性問題だったと言われているが」
宮村「……」
米本「ところでBさんだが、あなたの愛人だと聞いているが(Bは、宮村氏が脱会させた元信者)」 宮村「ハハハ。人は噂を流すさ」
米本「Bさんのお父さんがあなたに『脱会させてくれるように頼んだが、娘を情婦にしてくれと頼んだ覚えはない』と怒鳴ったのは、被害弁連の一部の弁護士の間では有名な話らしいが」
宮村「……」
米本「ここでの立ち話ではなく、きちんと取材に応じてほしい」
宮村「あなたの取材を受けたくない」

“脱会請負人”と有田芳生氏

ジャーナリストとして、長らく旧統一教会追及の急先鋒である有田芳生氏は、この宮村氏と昵懇らしい。前回、後藤氏と同様、拉致監禁された医師・小出浩久氏の体験を紹介したが、監禁から軟禁状態に移行した小出氏の前に現れた有田氏は、宮村氏のことを「子供のように純粋で自分を飾らず、他人にへつらったりおべっかを使ったりしない人なんだよ」と評していた。

この“好人物”を有田氏は、古巣、立憲民主党の旧統一教会被害対策本部が開いた8月18日の第7回会合に出席させ、多くの信者の脱会に多大な尽力をした人物であると紹介、宮村氏は集まった議員たちの前で話をしたようだ。

終了後、同本部事務局長の石橋通宏参議院議員は、「宮村さんからは長年にわたる脱会支援の活動紹介と、なぜ信者の方々は自ら脱退とならないのか、完全にマインドコントロールの状態に陥っているなか、いかに脱会が難しいのかなど、貴重なお話をいただいた」とコメントしている。

なおマインドコントロールとは、ある宗教をカルトと決めつけて批判する側が都合よく持ち出す単なる俗説であり、心理学や精神医学などの学問的な裏づけや定義などはまったくなされていない疑似科学である。

もはや、何をかいわんやだ。

紀藤正樹弁護士の不可解な言動

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福田ますみ

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