年末調整が終わった後にすべきことは?確定申告が必要になるケースを税理士が解説

12月を目の前に税金というと、給与収入がある会社員・アルバイト・パートの皆さんは、会社で年末調整の手続きを終えられて、ホッとしている方が多いのではないでしょうか?

年末調整の用紙を3枚出したり、年末調整データを提出したから「やれやれ、もう何もしなくていいよね」ですって? なんて……嘆かわしい!

給与収入のみの方でも、年末調整の手続きが終わった後にやらないといけないことが待っています。今回も、お笑い芸人で本物の税理士である税理士りーなが、解りやすく解説します。


年末調整で何が行われている?

まず、皆さんが年末調整で提出した3枚の用紙、または年末調整のデータについて、なぜ毎年必要なのか−−それは「所得税」の計算のためです。

日本の税金制度では、所得(もうけ)がある人には大きく分けると「所得税」と「住民税」という2種類の税金を納めるというルールがあります。「所得税」は日本という国に納める国税で、「住民税」は住んでいる地域(都道府県と市区町村)に納める地方税です。このうち「所得税」は必ず計算して申告することが必要ですが、「住民税」は所得税と同じデータを使うので、所得税の計算ができれば住民税を自分で計算する必要はありません。

この、本来なら自分ですべき「所得税」の手続きを会社が代わりにやっておいてくれるのが「年末調整」です。会社がすでに知っている住所や生年月日などを記入して毎年提出する必要があるのは、この「所得税」の手続きをするために必ず必要な用紙だからです。提出することで、税金の手続きを会社が全てやっておいてくれるのです、自分の手間が省けて「なんて……喜ばしい!」ですね。

何かしないといけないか

給与収入のみの方は、この年末調整をすることで1年分の税金の手続きが完了しているということです。年末から年明けごろに「源泉徴収票」という用紙が会社から交付されますので、その内容を必ず確認してください。ご自身がいったいいくら「所得税」を納めているのかが記載されています。最近は、PDFで発行されるので「ファイル開いていません」という方も多いようですが、1年間で自分がいくら国に税金を納めているのかが記載されている、大切な情報が書かれているものです。「税金はよくわからないから」と放ったらかしにせず、内容を確認した上で自分がしっかり納税しているということを知りましょう。

もし副業収入や掛け持ちのアルバイトが一定以上ある場合は、この源泉徴収票を使って「所得税の確定申告」をする必要があります。失くさず保管しておいてください。

しかし、給与収入のみだったとしても確定申告が必要なケースがあります。

1:医療費控除
2:ふるさと納税
3:住宅ローン控除1年目
4:間に合わなかった・間違っていた

ひとつずつ詳しく見ていきましょう。

1:医療費控除など

年末調整で記入して申告できる控除と、確定申告でなければ申告できない控除があります。
代表的なものに医療費控除がありますが、詳細を一覧にしました。

年末調整で控除ができないものについては、確定申告をしなければ控除を受けることができません。申告することで初めて控除され、年末調整で確定していた所得税の金額が安くなり、税金の還付が受けられます。

医療費控除は、確定申告書に家族の誰がどこの病院で年間いくら支払ったのか?という明細書を作成して添付することで控除が受けられます。詳しくは以前の連載をご覧ください。

なお、雑損控除とは、災害または盗難もしくは横領によって、対象資産について損害を受けた場合に受けられる控除です。該当される方は国税庁ウェブサイトをご覧ください。

2:ふるさと納税

ふるさと納税とは、お気に入りの地域に「ふるさと納税」という形で寄付をすることで、寄付に対するお礼の品(返礼品)をもらえる上に、寄附額 − 2,000円の「住民税」が控除されるという制度です。

ふるさと納税を含む「寄附金控除」という控除は、年末調整で処理することはできません。しかし、会社員やパート・アルバイトの方など収入が給与のみで確定申告が不要な方は「ワンストップ制度」という制度を使って手続きをすると、確定申告をすることなく住民税でこの控除が受けられます。

なお、収入が給与だけだったとしても、確定申告書を提出する人はこの「ワンストップ制度」を使うことができませんので、注意が必要です。また、寄付先の自治体が6か所以上の場合も「ワンストップ制度」を使うことができません。確定申告をすることなくふるさと納税を行いたいなら、寄付先は5か所までに抑えておきましょう。

もし、6か所以上の自治体に寄付をした場合は「所得税の確定申告書」において、「寄附金控除」という手続きをすることで、所得税と住民税の控除が受けられます。ちなみに確定申告書上では、「寄附額 − 2,000円」の1割程度の所得税が安くなり、残りの控除金額が住民税で調整されます。

確定申告で寄附金控除をした場合と、ワンストップ制度で住民税の控除を受けた場合で、最終的に引いてもらえる金額は所得税と住民税を合わせて同じ金額になります。どちらがおトクということはありませんので、寄付する自治体の件数に関わらず、ご自身が手続きしやすい方で行ってください。確定申告を何度かしたことがあって慣れているという方は、ワンストップ制度の手続きをせずに確定申告をされても良いかもしれませんね。

3:住宅ローン控除1年目

「住宅借入金等特別控除」という控除があります。これは、住宅ローンなどを利用してマイホームを新築、取得や改築などしたときに、そのローン残高に応じて税金の控除が受けられる制度です。最初の年は「所得税の確定申告書」に必要事項を記載して、指定の提出書類と一緒に提出をしなければ控除を受けることができません。

2年目以降は年末調整の際に次の2つの資料を勤務先に提出すればOKです。

(1)年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書兼給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
(2)住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(住宅ローン残高証明書)

上記(1)は控除を受ける2年目の10月ごろに、税務署から複数年分まとめて届きます。毎年使うものですから、失くさないようにしてください。(2)は、ローンを契約している金融機関から毎年10〜11月ごろ届きます。

4:間に合わなかった・変更があった

年末調整の時に「控除を受けられるはずなのに、控除証明書が見つからなかった」ですって? なんて……嘆かわしい!

税金が安くなるのですから、ぜひ来年からは大切にとっておいてくださいね。手続きの期限に間に合わなかった方は、会社の経理部から「期限に間に合わないなら確定申告してください」と言われたかもしれません。

年末調整は、会社が社員の所得税を一度に計算してくれますので、期限内に出さないと所得税の計算に織り込んでもらえないということになるのです。控除証明のハガキ以外にも、「前の職場の源泉徴収票がまだもらえない」というケースもあります。このように、自分の所得税を計算する上で必要な資料がそろっていないと、年末調整の時に正しい所得税の金額を計算することができないので、確定申告で正しい税額を計算することが必要になるのです。

また、配偶者や扶養控除を受けられると思って年末調整の用紙に記入したのに、年末調整が終わってから「稼ぎすぎて扶養から外れていました」と家族に嘆かわしい報告をされることがあるかもしれません。年末調整で記入した内容が違っていることがわかったら、確定申告でその内容を正しく申告して、税額を改めなくてはなりません。めんどうな確定申告もしなくてはならない上に、納める税額まで増えて「なんて……嘆かわしい!」と言いたくなるかもしれませんが、放置してしまうと、あとで追加の税金を払うことになれば、もっと嘆かわしいことになるので、しっかり正しい申告を行うようにしましょう。

年末調整の資料を出す時期には、家族間でしっかりコミュニケーションを取って、正しい情報で年末調整を行いたいものですね。納税は計画定期に。

今回は、給与の収入が1か所だけの場合についてお話ししましたが、年末調整済みの給与以外に儲かった金額(雑所得)が20万円を超えれば申告が必要など、他に収入がある方は金額によって申告が必要なケースがありますのでご注意ください。

年明けに向けて準備を

確定申告が必要な方は、資料をそろえて申告期限までに手続きを行なってください。2月16日から3月15日が申告期間ですが、還付申告(税金が安くなって返ってくる確定申告)であれば、2月15日以前でも受け付けてもらえます。早めに申告書を出せばそれだけ早く還付されますので、控除の追加などで確定申告をされる方は還付を楽しみに、早めに申告されてはいかがでしょうか?

受けられる控除をフル活用して「なんて……喜ばしい!」と言いたくなる確定申告書を作ってくださいね!

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