絶景スポットなのに残念… 上五島・マリンピア展望公園 崖崩れ、倒木で町道荒廃

島の北部が細長く続いているのが見える=新上五島町、マリンピア展望公園

 長崎県新上五島町中心部の街並みを一望できる有川地区の矢倉岳(384メートル)。山頂の「マリンピア展望公園」に続く町道が荒廃している。展望台は360度の眺望が楽しめるが、町道は台風などによる崖崩れや倒木が放置されたまま。足を運ぶ人はほとんどいない。実際に公園まで車で上れるのか調べてみた。

 町観光物産協会のホームページには「絶景スポット」と紹介されているが、「道路は崩れている部分がある」と注意を促す表記。10月22日、恐る恐る取材に向かうと、すぐに土砂や岩石が現れ、荒れた路面に変貌した。道路を覆う木々、路肩は崩れていた。がくぜんとした。

 落ち葉と石でタイヤは空転。きついカーブを上る。山側から倒木が突き出ている。左側の崖っぷちに寄るが白線もなく、崖との境が分かりにくい。狭く曲がりくねった道。ゴツゴツと石や木に乗り上げる。車高が高い四輪駆動の軽乗用車だったのでよかったが、普通車には厳しそうだ。片道約4キロ、恐怖を覚えた。

荒れ果てた道路のきついカーブ

 11月7日、七目郷の車用品販売業、近藤浩文さん(62)が再取材に同行してくれた。近藤さんは「タイヤがパンクしそう。離合、Uターンも難しく、観光客は危ない目に遭うかも」と心配そうに話した。
 そもそも展望台はなぜ整備されたのか。町によると、1962年にNHKの電波塔が建設されたのがきっかけ。70年に工事用の道をコンクリート舗装して展望台を建設。82年に町道に認定された。90年には「ふるさと創生事業」で公園を造り、新たな展望台やトイレなどを整備したという。現在は民放の中継放送所もある。ただ、町道の最小幅員は2.8メートル。観光バスは入れない。
 住民によると、町道の整備を求める声は以前からあった。2010年代後半に開かれていた「土木行政のあり方懇談会」。参加した事業者によると、改善を求める声が複数上がったが、町からは明確な回答がなかったという。

矢倉岳山頂にある展望台。周囲は木が生い茂っている

 町は現状を把握しており、建設課は取材に対し、12月に草や倒木の除去作業を予定し、来年度、路面や路肩の補修工事を検討しているとした。観光商工課は「問い合わせがあれば『危ないので、気をつけて、(行くならば)軽自動車で』と答える」と回答した。
 展望台からは平戸諸島や西彼杵半島も見渡せ、絶景が広がっている。有川郷のタクシー関係者は取材に対し、「以前は観光コースに入れて喜ばれていたが、もう5年ぐらい案内したことはない」と荒れた現状を残念がった。


© 株式会社長崎新聞社