様々な意味で話題の「HONBIKE」の製造元「HONGJI BIKE」とは、どのような会社か?元モバイクの共同創業者が設立した会社を調べる

目次

[(#)

2022年の自転車業界で良くも悪くも騒がれた自転車と言えばHONBIKEだろう。

HONBIKEは世界初の前後輪ワンアームチェーンレスを売りにした電動アシスト自転車。特徴的なデザインはグッドデザイン賞2020でベスト100に選ばれていることで知られている。また、PRも大々的に力を入れており、第32回 マイナビ 東京ガールズコレクション 2021で初披露し、テレビCMではデヴィ夫人を起用。クラウドファンディングサービスのMakuake(マクアケ)で、史上最高額の6億円超えを達成し、2022年4月2日、3日に行われたサイクルモード2022ではサイクルイベント初となる「HONBIKEと水着モデルによるランウェイショー」が行われた。

しかし、実際に乗車すると不安定な走りに、アシスト感をほとんど感じないモーター、すぐに壊れる品質等が問題になった。また、電動アシスト自転車やEバイクに非常に詳しい業界関係者からの評判も非常に悪く、専門外からの評価の高さとは裏腹に、多くの有識者からは最低評価を受けている。シクロライダーでも、贔屓目に見てシクロライダー史上最悪の電動アシスト自転車という評価を下した。

2022年8月31日には六本木にあったフラグシップストアを閉店。2022年11月29日現在、調べた限りでは新車販売を行っている所は殆ど無いようだ。他にも、デイリー新潮、NetIB-News等のメディアから、HONBIKEの輸入元であるクリックホールディングスが「BGS」という仮想通貨トラブル問題を抱えていると報じている。

関連リンク

話題に事欠かないHONBIKEだが、今回は、製造元であるHONGJI BIKEとはどのような会社なのか開設する。

HONGJI BIKEとはどのような会社か?

出典:Mobike – Wikipedia

日本経済新聞が運営する「36KrJapan」によると、HONGJI BIKE(洪記両輪)は、中国最大手の自転車シェアリングサービス「モバイク」の共同創業者の1人が創業した会社。中国国内向けではシェアリング用の自転車や電動キックボードがメインで、中国国外ではシェアリング用電動キックボードや電動アシスト自転車、Eバイクを製造する。

HONGJI BIKEの創業者兼CEOは、モバイク時代にシェアサイクルの初代「Classic」開発の陣頭指揮を執ったとのこと。このシェアサイクルはシャフトドライブ、片持ち式の車体、金属製ホイールを採用しており、HONBIKEとの類似性が見て取れる。

関連リンク

HONGJI BIKEは、どのような自転車を製造しているのか

HONGJI BIKEは、HONJIブランドと、ザックスからブランドを買収したSAXY、HONBIKEの3つがある。最初にHONGJIブランドからピックアップする。

HONG E-MTB01 出典:Hongji Intelligent Bike Co.,Ltd. (hongjibike.com)

HONGJIブランドのEバイクは、無名モーターを搭載している物が多いが、HONG E-MTB01は、珍しくシマノ・ステップスモーターを搭載したフルサスE-MTBだ。しかし、気になったのが車体重量。重量は33キロとどのような設計を採用すれば、ここまで異様に重くなるのかと思わせるほど重い。このクラスのフルサスE-MTBは、車体重量は重くても25キロが限界だ。

定格出力1000W、最大トルク160Nmを発揮するバーファンM620(通称ウルトラマックスモーター)を搭載した「QuietKat」ブランド等の北米向けE-MTBなら、重量の重さも理解できるが、欧州向けのフルサスE-MTBの構成で33キロというのは理解に苦しむ。

SAXYブランドに関しては、HONBIKE のような奇抜なデザインの街乗り系は無く、一般的な自転車部品を採用したモデルとなっている。モーターのブランド名は不明なのが多い。

SAXY ST-04(画像出典:ST-04 (saxybike.com)

HAIBIKE ALLMTN SE(出典:Haibike ALLMTN SE | Pure Trail ePerformance

E-MTBに関しては、ST-04は、海外では著名なEバイクブランド「HAIBIKE」の「AllMTNシリーズ」の模倣車。ただしモーターは、SAXY ST-04はTRUCKRUNという無名ブランドのモーターを搭載しているが、HAIBIKE ALLMTNはボッシュ パフォーマンスラインCXやヤマハ PW-X3といった有名ブランドのモーターを装備しており、細かいデザインや部品も違うため、ST-04はデザインだけを真似していると思われる。

Honbikeは日本だけでなくアメリカ、ヨーロッパでも展開しているらしく、日本で展開されている「HF01」に加え、ベルトドライブを採用した「U4」というモデルを用意している。

関連リンク

HONBIKEは今後どうなる?将来性はあるか?

クラウドファンディングサイト「マクアケ」のHONBIKEプロジェクトページでは、ユーザーが修理を行うため輸入元に問い合わせると、経営悪化により事業継続が困難になったため新会社に移譲するとの返信があったようだ。

関連リンク

仮に新会社に移譲した場合、HONBIKEに将来性はあるのだろうか。

問題になるのが、既にHONBIKEの評価は有識者の中では最悪だということ。某世界的大手サプライヤーの広報担当や、稼働前に既に世界の自転車企業から注目されている日本の某工場社長、E-NAYA.comといったEバイクのエバンジェリストなど、電動アシスト自転車やEバイク関係ではトップクラスの関係者から論外判定を受けている。Eバイクどころか自転車として成立していない商品を、そう簡単に改善できるのかという疑問がある。

出典:PowerPoint 演示文稿 (singoo.cc)

出典:PowerPoint 演示文稿 (singoo.cc)

また、HONGJI BIKEのコンプライアンスにも疑問がある。HONGJI BIKEはSAXYブランドの公式サイトで会社概要を公開しており、日本国内にも元ホンダの技術者が在籍していると謳っているが、紹介されているEバイクが一流ブランド品から比較すると、デザイン力等を見て期待できない、有名ブランドのデッドコピー(模倣車)を商品として入れている、SAXYのキャッチコピー「We Are SAXY」がHAIBIKEのキャッチコピー「WE ARE ePERFORMANCE」の真似など、ウェブサイトを見るだけで問題点が浮かび上がる。

仮に筆者がEバイクの製造を行うと仮定して工場を選ぶ際、HONGJIを調べたとすると「HAIBIKEのコピーがありコンプライアンスに問題がある」「車体重量33キロのフルサスE-MTBをカタログに載せるという常軌を逸した行動」「デザインだけを重視して他を犠牲にしたHONBIKEをアピールするのが理解できない」と判断して、選択肢から外すだろう。

HONBIKEの将来性に関しては筆者は全く期待していない。仮に全てが改善された新型車が登場しても、今までのトラブル対応に問題があるため、販売店や顧客の信頼が戻るのは非常に厳しいだろう。

文:松本健多朗

© シクロライダー編集部