日本事務局から海外の現場へ 寄付が確実に役立っていることを実感

吉田 幸治

職種

アドミニストレーター

活動地

南スーダン

活動期間

2021年12月~2022年6月

大学卒業後、外資系IT企業等で事業開発やマーケティングに従事した後、2011年、国境なき医師団日本のファンドレイジング部ディレクターに着任。2021年12月より約半年間日本事務局を休職し、財務と人事を担うアドミニストレーターとして南スーダンで活動した。

危機に直面する人びとのそばへ

10年にわたり日本でMSFの資金調達業務に携わってきた © MSF

これまで約10年にわたって、国境なき医師団(MSF)の日本事務局で活動資金を募る仕事に携わってきました。その中で高まってきたのが、「命の危機に瀕している人びとのそばで働きたい」という思いです。 いままで私にとっての人道援助とは、MSFの医療活動のために日本で資金を集めることでした。しかし、いつか命を助ける現場で仕事をしたい、そして、より多くの人を助けるにはどんなことができるのかを新しい視点で改めて考えたいと強く思うようになったのです。

MSFの事務局職員として働いているといえども、海外派遣スタッフになるには、書類選考や面接を通過し、トレーニングを受ける必要があります。仕事の傍ら準備を進め、2019年に選考を通過した時は、とても嬉しかったです。しかしその後、新型コロナウイルスの影響で海外派遣を延期せざるを得ない状況に。さらに体調を崩してしまい、出発が一歩遠のいてしまいました。 それでも、「もし健康が戻ることがあれば、いますべきことを全てやろう。そうしないと必ず後悔する」と心を強く持つようにしました。幸いにも体調が回復したため、すぐに準備に取り掛かり、ついに派遣先が決まりました。

銀行がない町 ヘリコプターから現金を受け取る

地域の人びとの命を守るMSFの病院 © Florence Miettaux

派遣されたのは、南スーダン北部・ジョングレイ州のオールド・ファンガクという小さな町です。湿地帯で1年を通して雨が多く、雨期には沼地に変わります。昨年の2021年には大きな洪水が発生し、多くの人が避難を余儀なくされました。 MSFは2014年からオールド・ファンガクで病院を運営し、マラリアや外傷の治療、出産介助などの活動を通して地域の人びとの健康を守っています。町には水道も電気もないため、病院をはじめとするMSFの施設は水と電力を全て自前で用意。通院が難しい人のために、月に2回ボートで訪問診療も行っています。

慣れない仕事で苦労する吉田を、首都のジュバ事務所のスタッフがサポートしてくれた  © MSF

200人近い現地スタッフへの給与支払いは、アドミニストレーターの特に重要な仕事の一つです。オールド・ファンガクには銀行がないため、毎週、銀行の職員が首都からヘリコプターで持ってきてくれる現金を、ヘリの発着場に受け取りに行くのです。時にはヘリによる暴風を浴びながら現金を受け取ったり、またある時には雨で近場の発着場が水没したために隣町までボートで向かったり……。給与は現地スタッフの暮らしに関わるため、現金準備は毎回、必死の作業でした。

オールド・ファンガクに銀行はなく、現金はヘリコプターで届く  © MSF

実感したMSFの存在意義

共に仕事をした財務アシスタントのチュオル(左)と人事アシスタントのディウ(右)  © MSF

ようやく気持ちが落ち着いたのは赴任から3カ月が経った頃、現地採用で財務アシスタントのチュオルと人事アシスタントのディウが入ってくれてからです。2人の性格は全く違いますが、どちらも本当に一生懸命。おかげで私も頑張れました。 2人とも、仕事を進めるには細かく具体的な説明が必要だったので、寄り添って密に仕事をしました。気を付けたのは、彼らのペースや理解度に合わせること。生活や人となり、受けてきた教育の背景などを考え、相手の立場に立って仕事を進めるようにしました。一緒に画面を見ながら作業を進め、うまくできたら褒める。日本ではこのようなマネジメントのスタイルではありませんでしたが、現場では自然にこうなりました。

また、私が「人びとの命を助けたい」と気負っている一方で、2人をはじめとする現地スタッフは自然な思いで仕事に向き合っていました。「自分たちの地元だから貢献するのは当たり前だよ。それを助けてくれるMSFだからこそ働きたいんだ」と。その自然さに、私の肩に入っていた力が抜けていきました。

オールド・ファンガクでは海外派遣スタッフの宿舎はテント。宿舎の割り振りなど総務的な役割も担った  © MSF

MSFはオールド・ファンガクで年間約6000人に医療を提供しています。へき地で他の団体も少ないためMSFの病院にはいつも大勢の患者さんが訪れていて、この地でMSFが活動することの意義を日々実感しました。

日本のたくさんの方からのご支援が、現地で医療を必要とする人たちに確実に届いている。その事実をこの目で確認することができました。

支援者の方々と一緒に病院の運営をしているという感覚は、復帰した日本事務局での仕事の新たな原動力になっています。

半年間、テントで生活しました。仕事後に戻ってテントが雨で浸水していた時には、かなりぐったりした気持ちに。最初はストレスがありましたが、洪水で被災した現地の人たちの生活を考えたら文句を言っている場合じゃないと切り替えました。

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