【日本医師会・松本吉郎会長】語った“かかりつけ医”のこと

【2022.11.30配信】厚労省が法制化の検討を開始し、注目が集まっている「かかりつけ医」。こうした中、日本医師会(日医)会長の松本吉郎氏は11月22日、日本医学ジャーナリスト協会の月例会で講演し、1つの診療所・医師でなく、連携によってかかりつけ医機能を発揮していくという日医の基本的な考え方を説明した。松本氏は、日本と海外の違いについて、「医療の成り立ち」や「診療所の装備の違い」「どちらかというと専門性を見極める日本の医師教育」などを挙げ、「日本においては海外にあるような家庭医制度が理想だとは思っていない」とも述べた。

松本氏は講演の中で、現執行部の方針を説明。特に地域医師会から都道府県医師会、日本医師会に意見を出してもらって議論をしていく「地域から中央へ」の方針を強調。「場合によっては、その意見の中から国等へ提言をしていく」とした。そのためにも、「一致団結する強い医師会が重要」と語った。現場からの情報収集と連携、組織力強化に取り組むとした。

加えて、政府・与党との“日頃から”のコミュニケーションが「非常に大事」と話し、「普段からの付き合いの中で私どもの考えを正確にお伝えして理解を賜る、あるいは逆に政治家の先生方の考えを傾聴し、それを日本医師会としてどう考えていくかを心掛けることが一番大事だと思っている」と話した。

自身の座右の銘として、「拈華微笑(ねんげびしょう)」を紹介。「言葉を用いずに心から心へと伝える妙境のたとえという仏教用語だ。人と人との付き合いを大事にしたいと考えている」(松本氏)。埼玉県在住の書道家・金田石城(かねだ・せきじょう)氏に書いてもらったという額縁入りの書を写真で紹介もしていた。

注目が集まっている「かかりつけ医」に関しては、1つの診療所・医師でなく、連携によってかかりつけ医機能を発揮していくとの考えを説明。情報提供に関しては、「医療機能情報提供制度を国民の方々に分かりやすい内容に改め、国民がこの制度を活用して適切な医療機関を自ら選択できるよう支援を行うということが大事だと思う」として、拡充の重要性を指摘した。

一方、日本のかかりつけ医に関しては、制度化の観点だけでなく、海外でみられるような総合家庭医としての研修内容との違いを指摘する声がある。記者からこの観点へのコメントを求められると、松本氏は、「日本では医療の成り立ちが違う」「イギリスの家庭医と日本の内科的な診療所では装備も違う」「教育も日本はどちらかというと専門性を見極める」などとし、「日本で海外の家庭医制度が理想だとは思っていない」と述べた。1つの診療所・医師でなく、連携によってかかりつけ医機能を発揮していこうというのが日医の基本的な考え方だ。松本氏は「今回の全世代型社会保障構築会議の中でもかかりつけは複数であっていいのではないかという議論になっている」とした。
総合診療を担う医師の育成に関しては「1つの課題だとは思っている。これについては支援をしてきたいと思っている」とした。ただ、専門的な領域から総合診療を学ぶ医師や、逆に総合診療から専門領域を学ぶ医師など、「いろいろな医師の育成や役割があってよいのではないか」とし、「総合診療医がすべてを担うとは思っていない」と述べた。

現行の省令では、かかりつけ医は「身近な地域における日常的な医療の提供や健康管理に関する相談等を行う機能」と定義されている。このうち、「健康管理に関する相談」について、診療報酬上の提案をしていく可能性はあるか、との質問が記者から出ると、松本氏は「大変大きな課題だと思っている。いまの診療報酬は全く病気になっていない人が受診するのは難しい。そういう場合は診療報酬以外の対応ができないかということもこれから議論していくべきだと思っている」と述べた。

在宅医療の拡充に関しては、「今後も日本医師会としてしっかり進める」とした上で、連携の必要を強調。「1つの医療機関で24時間・365日訪問診療することは不可能。連携をどうするか。例えば在宅支援診療所や在宅医療を支援する病院としっかり連携を進める、あるいは医療機関同士でグルーピングをして対応する。好事例を全国に進める。そういったことは当然、これから取り組んでいかなければならない」と述べた。

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