<社説>PFAS全県調査へ 国の責任での実施が筋だ

 人体に有害とされる有機フッ素化合物(PFAS)が高い値で検出されている問題で、県は2023年度に水質と土壌の調査を全県的に実施する。土壌調査は初めてであり、県の決断を評価したい。 PFASは国が提供する米軍基地周辺と自衛隊施設から検出されている。本来なら国の責任で調査すべきだ。水質と土壌だけでなく、血中濃度の広範な調査も早急に実施してもらいたい。

 PFASは自然環境ではほとんど分解されない。このため「永遠の化学物質」と言われ、人や動物の体内に蓄積する。発がん性のほか、出生時の体重に影響が生じる恐れなど、健康への影響が議論されている。

 水の汚染については、北谷浄水場の水源の比謝川水系から16年に高濃度で検出され、問題が発覚した。主に米軍基地や自衛隊で使われていた泡消火剤に含まれ、訓練や流出などで土壌、地下水を汚染してきた可能性が指摘される。

 米軍嘉手納基地に近い河川や基地内の嘉手納井戸群を取水源の一つとしている北谷浄水場の水道水からPFASが検出され、県企業局は高機能粒状活性炭を設置して除去するなどの対策をとっている。20年には、米軍キャンプ・ハンセン近くに水源を持つ金武町の水道水から国の暫定指針値を超えるPFASが検出された。

 汚染源の可能性がある基地内への立ち入り調査を実施すべきだが、日米地位協定が壁となり調査は実現していない。これでは日米両国が汚染の実態解明を妨げていると言われても仕方ない。

 土壌汚染については、米軍普天間飛行場に隣接する普天間第二小学校内の土壌から、米国の基準を上回るPFASが検出された。PFASの環境基準について、日本は水質の暫定指針値を設けているが土壌の基準値はない。県は今回の全県調査結果を基にして、土壌に関する基準・測定方法を設けるよう国に働き掛ける。国に誠実な対応を求めたい。その上で地下水を汚染し

続ける土壌の対策が不可欠だ。

 人体への影響について見極めるのに必要なのは血中濃度とされる。市民団体が今年6~7月に、米軍基地がある沖縄、宜野湾、金武、嘉手納、北谷の5市町と基地からの影響がないと想定される大宜味村で、希望する住民387人の血中濃度を検査した。

 PFASの一種であるPFOSは北谷町で1ミリリットル当たり12.2ナノグラムの最大値が検出され、全国平均の3.1倍だった。PFOAは金武町の6.7ナノグラムが最も高く全国平均の3倍、PFHxSも金武町の14.3ナノグラムが最大で全国平均の14.3倍だった。

 米ハーバード大医科大学院などの論文で、PFOSの血中濃度が高い人ほど死亡リスクが上がるという因果関係が示されている。国の責任で県内全域を対象にした検査を早急に実施するよう求める。

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