息子が過労死…「自分責める母親増やしたくない」 遺族が体験語る 長崎でシンポ

息子を失った苦しみを打ち明ける母親=長崎市桜町、県勤労福祉会館

 2017年、長崎県佐世保市の食品卸売会社に勤務し自殺した男性=当時(25)=の60代母親が30日、長崎市内で開かれた過労死について考えるシンポジウムに登壇し「息子を救えなかった私は死ぬまで自分を責め続けていく。こんな思いをする母親をこれ以上増やしたくない」と語った。
 母親は19年、自殺の原因は長時間労働だとして会社に損害賠償を求め長崎地裁に提訴した。訴状によると、男性は営業活動や積み込みなどに従事。佐世保労働基準監督署は長時間労働で精神障害を発症したことが自殺の原因として労災認定したという。会社側は請求棄却を求めている。
 母親はシンポで、男性は長時間労働と売り上げのノルマに追われ、血便や不眠に苦しめられていたと振り返った。入社からちょうど3年の17年3月末に自殺。遺書には「もうゆっくり休みたいです。お母さん、最後まで親孝行できなくてごめんね。こんなばか息子で本当にごめんね」などの言葉と、職場環境改善への願いが書かれていたという。
 母親は「息子は精神論で過酷な残業を受け入れるように洗脳されていた」と指摘。過労死は人災と強調し「人の命より会社の利益を優先する企業が過労死を生む」と訴えた。
 メンタルヘルスに詳しい「ボーディ・ヘルスケアサポート」(福岡県)の茅嶋康太郎代表も講演。過労の原因として、長時間労働をはじめ拘束時間が長く不規則な勤務、人員に見合わない業務量、無理な異動により生じる業務の不適応などを挙げ、「経営者が主導してどうすべきか考えていかねば」と話した。
 シンポジウムは厚生労働省主催。長崎労働局が昨年度県内437事業場を監督指導したところ、23.8%の104事業場で違法な時間外労働を確認し、このうち21事業場は残業が「過労死ライン」とされる月80時間を超えた。


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