【日本薬剤師会】「濫用のおそれのある医薬品」、ネット販売規制の要望を示唆

【2022.12.01配信】日本薬剤師会は「濫用のおそれのある医薬品」に関して、ネット販売での何らかの規制を求めることを示唆する発言をした。意図的な濫用において、ネットでの購入は対面と比較して心理的にも物理的にも障壁が低いことを挙げ、「これら懸念点について具体的な対応を検討してほしい」と要望した。12月1日に開かれた「令和4年度第3回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会」の場で述べたもの。

日薬「濫用のおそれのある医薬品であることが分かる表示」要望

同日の部会では、「濫用のおそれのある医薬品」の範囲の見直しを審議しており、規制対象成分に関して「鎮咳去痰薬に限る」「内用液剤に限る」などの限定を削除することで了承された。

日本薬剤師会常務理事の橋場元氏は、変更の方向に同意した上で、今回のテーマに関連して3点を要望した。

1点目は分かりやすい表示など周知徹底。「今回の改正により対象の製品が多くなる。国民および関係者に対してしっかりと周知をしていただきたい。使用者にも販売者にも乱用等のおそれのある医薬品であることが分かりやすい表示などを行い、そのような形になるよう製造販売業者に対しても指導いただきたい」とした。

2点目にネット販売などへの具体的な対応の検討を求めた。「正しい目的で使用するために医薬品を必要とする人のアクセスについては支障があってはならないが、しかしながら意図的な濫用については次のような対策を検討いただきたい。現場では購入希望者に対して販売時にほかの店舗での購入状況を確認しているが、意図的な濫用目的の人は販売者からの確認に対し虚偽の回答をすることや同じ店舗には期間を空けて訪問したり、複数の店舗で買い増しをするなど巧みに入手しているという実態がある。その上でインターネットでの販売では対面と比較して心理的にも虚偽の回答をしやすく、買い回りについても実際に複数の店舗を訪問するのとは異なり非常に簡単にウェブサイトを行き来することも可能である。従って意図的な濫用をする人への対策については対面での販売であっても苦労している状況。このことを考え、これらの懸念点については具体的な対応を検討していただきたい」と述べた。さらに、大容量包装の見直しも求めた。「販売時の数量は原則として一人一包装単位と制限されているが、今回新たな対象となる製品の中には大容量の包装製品もある。容量包装単位のあり方についても検討いただきたい」とした。

3点目として、教育・啓発の拡充を求めた。「意図しない濫用を防ぎ、意図的な濫用をなくすためには教育や啓発が重要だ。関係者も巻き込んで一層の展開をしていただきたい」とした。

橋場氏はこれらの要望を述べた上で、今後、薬剤師は販売時の相談や確認の際に「購入しようとする人の心情に寄り添いながらゲートキーパーとなるよう適正販売を行っていく」と方針を示した。

こうした要望に対し、厚労省は「まずは区分の見直しから実施し、頂いた意見を踏まえて必要な対応について引き続き検討していく」と回答した。

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