Vol.08 配信現場にCR-N300導入。省スペースと利便性を実感。キヤノンリモートカメラ導入インタビュー[PTZ SCENES]

企業の製品発表会や株主総会といった配信業務などを行っているAMP合同会社が、2021年にキヤノンのPTZカメラ「CR-N300」を6台、リモートカメラコントローラー「RC-IP100」を2台導入した。配信や収録撮影での使い勝手などについてAMP合同会社 神颯斗氏にお話を伺った。

BtoBをメインにした配信業務とスタジオプロデュース

――AMP合同会社の業務について教えてください

神氏:

企業の製品発表会や株主総会、ウェビナーなどのいわゆるBtoBメインの配信業務と、企業の社内に設置する配信スタジオのプロデュースを行っています。配信は弊社スタジオを使っていただいての配信もできますし、イベント会場などでの配信業務も行っています。
いわゆる制作会社なのですが、ユニークポイントとしては国際的というところです。メンバー構成としては私含め6名がメインスタッフになっており、2名が専属のエディター、3名が社内の仕組みづくり、そして経営サイドの私です。そのうち、海外人材が3名、社内でのコミュニケーションは英語と日本語半々といった感じです。おかげさまで外資系の企業様とお仕事をさせていただくことや、英語対応が必要な現場などで重宝頂いております。
配信の際の価格に関しては、人数や機材などによっていくつかのプランをこちらから提案させていただいています。もちろんそこからのカスタマイズは可能ですが、検討していただく段階で大まかな規模感と価格をイメージしていただくことで、明瞭性が高まると考えています。

AMP合同会社 CEO/Engineer 神颯斗氏

神氏:

私のキャリアがもともと写真の商業カメラマンからスタートし、一番最初のカメラがキヤノンのEOS Kiss X6iでした。そこから7D Mark IIを発売日(発表2014年9月16日、発売同年10月30日)に買い、そのあたりから映像にも手を出し始めました。当時からキヤノンの色の出方が好きで、公私ともに楽しんでおりました。

リモートカメラを導入した経緯と決め手

――CR-N300とRC-IP100を導入された経緯を教えてください

神氏:

以前からスタジオ施工の業務をしているので、海外も含めて配信スタジオにはどのようなものがあるのかを研究していました。その中でも海外の教会などでリモートカメラを活用して配信しているのを多く見ていたので、リモートカメラがあるとどのようなスタイルで配信ができるのかは分かっていました。
日本でコロナが流行しだすと、イベント会場によってはイベントに参加できる人数だけでなく、イベント運営側の各部署ごとに会場に入れる人数を制限される場合が出てきました。当時はキヤノンXC10やEOS C100 Mark II、EOS C200などを使って配信を行っていましたが、人数を減らすといっても有人が前提のカメラ複数台を1人で担当するのは難しいため、複数台をリモート制御できるリモートカメラの導入を検討し始めました。

AMPの配信スタジオ

神氏:

そのタイミングでキヤノンからリモートカメラが発売され、それらのカラーサイエンスはキヤノンのXAシリーズのビデオカメラと同じで、弊社で使用しているキヤノンのカメラとの親和性も高いだろうということで、2021年8月に自社スタジオ用と外部に持ち運ぶ用にCR-N300を3台、RC-IP100を1台というセットを2式導入しました。
導入の一番の決め手はキヤノンからPTZカメラが出たということです。他社だと入荷まで半年以上かかったりというのはよく聞いていたのと、色の出方、すでに持っていたカメラたちとの相性の良さから総合的に判断しました。リモートカメラだけだとどうしても不安な現場があったりするのでカメラマンさんをつけて運用することもあると考えると持ち合わせの機材との相性は重要でした。

AMPの配信スタジオにはCR-N300が3台、リモートコントカメラローラーRC-IP100が導入されている
AMPスタジオのシステム図※画像をクリックして拡大

――実際の配信現場でのCR-N300とRC-IP100の使い勝手はいかがですか?

神氏:

まずは省スペースですね。有人カメラの場合、例えば劇場のような会場だとカメラのために座席を2列占有してしまい、それによって入れる人数にも影響してしまいますが、CR-N300であればカメラが三脚に載せられれば良いので、スペースが小さくて済みます。
また、人がカメラの側にいると目立ってしまうような位置、例えばステージ最前列中央から見上げるようなアングルは有人だと難しいですが、CR-N300であれば目立つことなく設置できるので、アングルなどの演出の幅がとても広がりました。小さめのカメラが無人状態で動いている様は「可愛い」という印象になることが多く、クライアントからの評判も上々です。

神氏:

そして、3台のCR-N300を1人でリモート制御できるという利便性ですね。それぞれのカメラの動きはプリセット登録できるので、リハーサル時に各カメラで寄り、引きなど役割ごとに動きを決めて、本番ではそれらの動きを呼び出すだけでスムーズなカメラワークができます。もちろん突発的な演者さんの動きがあっても、その場でそれぞれのカメラをリモート制御できます。
また、どのカメラの画を使うかを決めているスイッチャーとカメラをリモート制御しているカメラオペレーターが、会場で隣同士の位置に座って作業ができるので、意思疎通は申し分ないですし、万が一カメラオペレーターが席を外す場合もスイッチャーがRC-IP100を簡易的に操作できてしまいます。各カメラにカメラマンがついて、それぞれとインカムでやりとりするよりも臨機応変な対応ができるかと思います。

――CR-N300の出力にNDIを使うことが多いと伺いました

神氏:

NDIを用いるとLANケーブル1本で映像信号はもちろん、タリー信号、制御信号、音声信号などを送れるので非常に便利です。機材的にもSDI、HDMIを使う場合と比較すると少なく、設営の手間を考えるととても楽になります。
PCのデータを映したい場合も問題ないですし、カメラを追加して欲しいというリクエストを急遽現場で頂くことがあるのですが、その場合もLANケーブルで繋ぐだけなので問題なく対応できます。とにかく手軽なので、配信の現場でできることの幅は非常に広がっています。
ただし、ある程度のネットワークの知識は必要ですね。機材を繋ぐ順序やその理屈が分かっていないとトラブル対応ができません。その辺りはSDIやHDMIとは違うところだと思います。

※画像をクリックして拡大

――CR-N300、RC-IP100導入してよかったポイントを教えてください

神氏:

PCでの制御画面も、RC-IP100のインターフェースもどちらも非常に分かりやすいところですね。イベント会場でカメラのオペーレションを外部の方にお願いする場合もありますが、機材のセットアップ時やリハーサル時に少し説明すれば全く問題なく操作できるようになります。これは現場での安心感に繋がるとても重要な点だと思います。
また、弊社スタッフに自社スタジオで手伝ってもらうような場合も、そもそも操作が簡単なのでマニュアルも作りやすく、短時間で習得させられるので、教育にかかるコストが非常に低く済みます。

神氏:

もう1つは、CR-N300が対応しているIPプロトコルの豊富さです。NDI以外にもRTMPにも対応しているので、直接YouTubeなどで配信ができます。さらにRTSPにも対応しているので、様々な用途で使えます。
もちろん、SDI、HDMIにも対応しているので、従来の方法での出力も問題ありません。弊社でもNDIを使う現場にも必ずバックアップとしてSDI、HDMI用の機材を万が一のために機材車に用意だけはしています。

リモートカメラの可能性

神氏:

スポーツイベントなど、画角の柔軟性を求められる現場では、リモートカメラは有人カメラと比較するとやはりまだレスポンスや機敏性が欠ける印象はありますが、だからといって選択肢から外すのではなく、リモートカメラでプリセットをあらかじめ組んでおき、有人カメラの補完を行ったり、有人カメラを置けないところに設置をするなど、制作の幅を拡げる飛び道具として使うのもありだと思います。
カメラマンが急遽現場に来れなくなってしまった…なんてことはディレクターだったら一度や二度経験したことがあると思いますが…そんな時、最悪引きの画を作っておくカメラ1台とリモートカメラを組み合わせれば、制作の品質を落とすことなくトラブル対応ができるかもしれません(実際にリモートカメラオペレーターが体調不良で来れなくなった際に私の方でプリセットを駆使しながら対応したこともあります)。
また、最近ではハイブリッドイベントが多くなりましたが、会場がコロナ前と比べて多種多様になってきました。ご依頼いただく企業さんのオフィスの一角であったり、小さめの会場であったり…そういった中で直面するのは、会場の関係上、有人カメラでは場所を取りすぎるパターン、カメラマンと三脚を載せるステージを置くスペースがない、あったとしてもまだまだ気になる感染症の件もあってお客さん同士の距離を確保するために少しでも場所に余裕をもたせたい…などのご要望もあり、それこそ三脚がおけたり、オートポールが設置できる場所であれば操作可能なリモートカメラを使うとスペースの問題も解決できます。

配信コンテンツでのCR-N300導入イメージ

――様々な配信コンテンツの中で、CR-N300が活躍しそうなコンテンツはどういったものが挙げられるでしょうか?

音楽ライブ

神氏:

最近よく見るのは音楽ライブのドラマーさんのポジションですかね?私がもともとドラムをやっていたのもあり、結構目に入る気がします。やはり音楽ライブだとステージ上に有人のカメラマンはいないほうがいいでしょうし、かといって超広角のGoProなどで固定しておくとディテールが見えない…そんなときにPTZカメラだとドラマーからするとハイハットさばきや手元を写してもらえると嬉しいものです。

麻雀やボードゲーム系配信

神氏:

ボードゲーム系は有人カメラだとどうしてもプレイヤーの気が散るのもそうですし、見ている側もちょっと気になってしまいますが、PTZカメラだから完全に気にならないかと言われるとなんとも言えませんが、より近くにカメラを設置できるので画力が強くなる印象です。

ショッピングチャンネル(商品紹介)

神氏:

ショッピングチャンネルなどにはとても向いている気がします。天井にカメラをつけて上からのアングルだからこそ見せられるディテールもありますし、何よりスイッチングが楽しくなりますよね。画がわりが大きくなるので番組自体の引きが強くなります。

ビジネス系イベント

神氏:

どの配信も失敗は許されませんが、特に気を張るのがビジネス系の発表会や利害関係者が多い配信です。放送事故が起こらないように入念なリハーサルを行っても、人為的なミスが起こりうることを考えるとシステム化できるところは機械に頼り、リスク管理にチームリソースを割けるとお客さんも安心してくださると思います。

――他のキヤノンのリモートカメラについての興味や、今後期待したい機能などあれば教えて下さい

神氏:

CR-N500はセンサーが1型なので高画質が必要な場合に使ってみたいですし、CR-X300はIP65の防塵防水性能があってNDフィルターもついているので、外ロケなどで使ってみたいですね。今後もリモートカメラの利点を活かした配信、収録をしていきたいと思います。
すでに十二分にコストパフォーマンスは高いのですが、フルHD版で廉価版が出せるようであればお客さんへの提案時にとても助かります!(笑)

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