【解説】家計負担増に懸念も…小売業界は年末年始の商戦に期待感 稼ぎ時の飲食店は「数字読めない」

今回は、「年末年始の商戦」について解説します。
小売業界はインバウンドの再開や全国旅行支援の効果などで好調が続いていて、年末年始の商戦にも期待を寄せています。さらに、この年末年始は「戻す」動きも出てきています。一方、飲食店では「忘年会シーズン」の予約に変化が表れていました。

年末年始の商戦に小売業界は期待感

経済産業省の発表によりますと、2022年10月の全国の小売販売額は2021年より4.3%増えました。前年の同じ月を上回るのは8カ月連続です。小売業界ではこの年末年始への期待感も高いようです。

(イオンモール岡山 ゼネラルマネージャー/小野大輔さん)
「新型コロナ以前の状況に着実に戻ってきているのではないかというふうに肌で感じております」

岡山市のイオンモール岡山では秋以降、客足が好調で、11月27日までの「ブラックフライデー」のセールも2021年を上回る反響があったということです。

(イオンモール岡山 ゼネラルマネージャー/小野大輔さん)
「やはり2年半こういった(制限のある)状況が続いてきましたんで、『リアル』なことを楽しみたいといった、そういったニーズが(数字に)出ているのではないかなと思います」

客足が戻ってきている中、「売り方」もコロナ禍前に戻す動きがあります。その一つが「初売り」です。

(イオンモール岡山 ゼネラルマネージャー/小野大輔さん)
「平常通り1月1日の元日から店頭で福袋を販売する。もちろん予約の承りはするけど、平常通りに戻していこうと考えております」

イオンモール岡山では初売りでの混雑を避けるために2021年と2022年は、多くの店が、年が明ける前に福袋を販売しました。

(イオンモール岡山 ゼネラルマネージャー/小野大輔さん)
「感染症の対策というのは引き続き持続的にやっていくつもりですけど、一方でお客様が、お友達と一緒に来たいとか、ご家族で楽しまれたりというような、『リアル』の部分が大変重要と思いますので、そういった取り組みはポジティブに展開していきたい」

専門家「消費行動が変わってきた」

小売業界の好調の要因について地域経済に詳しい専門家は――。

(日本政策投資銀行 岡山事務所/森脇大輔 所長)
「(10月に)入国制限が緩和されたということで、個人旅行を含めて海外の方がいらっしゃってインバウンド消費につながっているということ、それから国内でも全国旅行支援が開始されて、今まで我慢してきた方が、『外出してもいいんだ』とか気持ちが少し変わってきた、消費行動が変わってきたというのがあるのかな」

一方、物価の上昇やエネルギー価格の高騰などで今後、「節約志向」が高まることが懸念されています。

(日本政策投資銀行 岡山事務所/森脇大輔 所長)
「(新型コロナの)第8波の影響も懸念されますので、このあたりで外出自粛とか節約行動とか懸念される一方で、いわゆる『リベンジ消費』というか、我慢からちょっとお財布がゆるむといったそういった消費とが錯綜するといった形で、年末を迎えるのではないかなと見込んでいるところです」

日本政策投資銀行によりますと、小売業界の中でも特に好調なのが「百貨店」です。円安に伴う値上げ前の駆け込み需要などから、海外の高級ブランド品を中心に売り上げが伸びているということです。

一方、懸念もあります。その一つが「家計の負担の増加」です。総務省が発表した2022年10月の消費者物価指数は、2021年に比べて3.6ポイント上昇しました。11月には中国電力と四国電力が2023年春からの「規制料金」の値上げを国に申請しました。

また、新型コロナの感染者も再び増えてきています。この状況に警戒感を強めているのが「飲食業界」です。1年の中で一番の繁忙期、「忘年会シーズン」となりますが、現状は不透明なようです。

年末に向け期待と不安が入り混じる「飲食業界」

岡山市北区の居酒屋、「麒麟麦酒空間 ラガー」。大人数にも対応できる個室が多くあり、宴会で利用する客が多い人気店です。

(麒麟麦酒空間 ラガー/兵頭剛さん)
「まだまだ新型コロナ前までのような勢いはまだ無くて、団体のお客様の予約も入ったかと思えばキャンセルになることもあるし、人数変更とかで半分になることもあります」

店の予約表を見せてもらうと多くの「キャンセル」の文字が。

(麒麟麦酒空間 ラガー/兵頭剛さん)
「当日に席が空くことが多くて、だから前もって予約されようと電話してくれた方も『(席が)取れない』ってお断りするんですけど、結局、前日とか当日に近いところで人数が減るので。そのタイミングだと(予約を断った)皆さんも他で予約を取っていたりするので、当日お客さんがなかなかピークの時間に来られない」

新型コロナの感染者が増えている影響か、最近は予約の入り方にも変化があるそうです。

(麒麟麦酒空間 ラガー/兵頭剛さん)
「団体の人数も少なくなっていますし、予約の入り方としては、前もってというよりは、前日とか前々日に入るというか、大人数でも『あした20名行けますか』みたいな、そういう感じなので、ちょっと予約としては読みにくいところがある」

また、忘年会を前倒す動きも出てきているようです。

(麒麟麦酒空間 ラガー/兵頭剛さん)
「前もって11月の半ばくらいから(忘年会を)されているお客様もいらっしゃいます。まだまだ、はっちゃけぶりと言いますか、飲み方は、ややおとなしい感じの雰囲気になっているかなという気はします」

一番の稼ぎ時でもある年末に向けて数字が読めない状況に、期待と不安が入り混じります。

(麒麟麦酒空間 ラガー/兵頭剛さん)
「期待も不安もすごいあるけど、しっかり僕たちは、今までたまったストレスやうっぷんを晴らしてもらうために笑顔で帰っていただく、それが僕たちの使命なので。目の前のお客さんにしっかり楽しんでいただくということに全力を尽くして、今年1年頑張ろうと思います」

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