世界で99年続く研究…性別を決める遺伝子特定 進化学上の極めて重要な発見、福井県立大学の風間裕介教授ら

ヒロハノマンテマの性決定遺伝子を特定した風間教授(右)ら=福井県永平寺町の福井県立大学永平寺キャンパス

 福井県立大学生物資源学部の風間裕介教授(45)らの研究チームが、雄株と雌株が分かれている雌雄異株(しゆういしゅ)植物「ヒロハノマンテマ」の性別を決める遺伝子を特定した。世界各国で100年近く研究が続いていたテーマで、進化学上の極めて重要な発見という。雄化を促す遺伝子の活用により、品種改良に必要な花粉の生産性向上など農業への応用が期待される。

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 ヒロハノマンテマなど雌雄異株植物の多くは、ヒトと同様に「XとX」の性染色体をペアで持つと雌、「XとY」を持つと雄になる。ヒロハノマンテマは、ヒトの10倍の巨大なY染色体が1923年に発見され、性決定遺伝子の特定が長年試みられてきた。風間教授らの論文は英国の国際学術誌電子版に掲載され、国内第一人者の松永幸大・東京大学大学院教授は「世界的快挙」とコメントした。

 風間教授らは、ヒロハノマンテマの雄株のY染色体に特殊なビームを照射し、おしべとめしべを持つ両性花の変異体を人工的に作製。両性花と通常の雄株、雌株を比較し、雄株だけにある遺伝子を探して、めしべの発達を抑制(雄化)させる遺伝子を特定した。X染色体でも、めしべの発達を促進(雌化)させる働きを持つと考えられる遺伝子を発見した。

 雄化させる性決定遺伝子のアミノ酸を人工的に合成し、両性花に塗布することで、花のエネルギーをおしべに集中させ、花粉を量産できるという。

 花を咲かせる植物は、一つの花におしべとめしべがある両性花が一般的で、全体の約70%を占める。ヒロハノマンテマやイチョウなどの雌雄異株植物は両性花から進化したと考えられており、これまでは、Y染色体の何らかの強力な遺伝子が働き、性決定をしていると考えられてきた。風間教授は今回の研究成果を踏まえ、「X、Yの染色体が互いに協力して性を決定している」と新説を提唱した。

 風間教授は東京大学大学院時からヒロハノマンテマの研究を続けてきた。今回は東京大学大学院や理化学研究所、京都大学、英オックスフォード大学との共同研究。福井県立大学では、鬼頭萌さん(大学院修士2年)、小林壮生さん(同1年)の協力で実験を進めた。風間教授は「大きなプレッシャーの中、一区切り付けられた達成感と安心感がある。新説を若手と共に証明していきたい」と話している。

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