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出産時のトラブルで重い脳性まひになった子どもと家族に総額3千万円が支給される「産科医療補償制度」を巡り、対象外となった栃木県の関係者らが救済を求める声を上げている。今年1月から対象基準が緩和されたが、昨年末までに生まれた子には新基準が適用されないためだ。日光市出身の永島祥子(ながしましょうこ)さん(40)=兵庫県在住=は全国の保護者ら約140人でつくる「産科医療補償制度を考える親の会」の中心として活動し、「一日も早く平等に補償してほしい」と訴えている。
旧制度では、出生体重が1400グラム以上で妊娠32週目以上という一般審査の基準と、出産時に低酸素状態であることなどの個別審査の基準があった。しかし、個別審査の基準には医学的な合理性がないことが判明。今年1月からは妊娠28週以上で出生した子は原則、補償対象に拡大された。
永島さんは2013年4月、妊娠30週で長男嶺(れい)君(9)を出産。脳性まひと診断を受け、肢体不自由の障害がある。嶺君は寝返りを打てず、永島さんがつきっきりで介助する。出生時、低酸素状態だったが、個別審査の基準に照らし対象外と判断された。「どうして」「一生、補償を受けられない」と絶望したという。
永島さんは昨年7月に発足した「親の会」の中心メンバーとして、嶺君と共に各地の街頭署名や国会議員との会合などに参加してきた。
会の活動の影響もあり、国は補償に向け検討に動き出した。しかし、過ぎた時間を思うと悔しさが募る。「子どもは日に日に大きくなる。補償があればもっと多くのケアができる」と強調する。
新基準と旧基準のはざまで苦しむ保護者もいる。
栃木市片柳町4丁目、宇治野諒子(うじのりょうこ)さん(38)は、長男蒼太(そうた)君(4)の個別審査の結果を待つ。
脳性まひの蒼太君は今も首がすわらず、全面的な介助が必要で諒子さんがケアをしている。18年生まれのため、今年1月からの新基準が適用されない。手続きに2年以上かけて今年8月、申請にこぎ着けたが「医学的根拠がないと明らかになったのに、納得できない」と憤る。
福祉車両やバリアフリー住宅の購入など経済的負担は重くのしかかる。「成長の喜びよりも、先が見えない不安の方が大きい」。個別審査の結果を待ちながら国の動きを注視している。