警察官がデータ悪用、現金など持ち去った疑い 栃木県警が書類送検、懲戒免職

栃木県警本部

 検視のデータを悪用し変死体の捜査で訪れた家から現金や時計を持ち去ったなどとして、栃木県警は2日、占有離脱物横領、県個人情報保護条例違反、公電磁的記録不正作出・同供用などの疑いで那須塩原署刑事1課の男性巡査長(29)を書類送検し、懲戒免職とした。

 送検容疑は、2021年11月7日、那須町内で同年8月に変死体で見つかった独居の60代男性に関する検視のデータを同署のパソコンで閲覧し、翌8日に男性宅から現金約8千円と腕時計3個を持ち去った疑い。

 また19年7月8日、当時勤務していた宇都宮中央署で、担当の傷害事件の書類と証拠品を検察に送ったとする虚偽情報を、事件管理システムに入力し、翌日ごろ書類28点をシュレッダーで破棄するなどした疑い。

 県警によると、巡査長は60代男性の検視で家を訪れた際、現金100万円が入った金庫が残されていたと知った。空き家となった男性宅の間取りを調べ、窓ガラスを割って侵入。金庫は鍵がかかっており、100万円は持ち去れなかった。

 侵入の目撃情報から巡査長が関与した疑いが浮上した。県警が過去の業務も調べ、宇都宮中央署時代の虚偽情報入力や書類、証拠品の破棄が判明した。

 巡査長は「100万円を生活費に充てようとした」「書類の送致を失念したことを隠したかった」などと容疑を認めている。

 県警は巡査長の氏名を明らかにしていない。「警察庁の指針を参考とした。不適正事案があり、厳正に処分したことを県民に知らせる目的は達成している」と説明。逮捕しなかった理由も「逃走証拠隠滅の恐れがないと判断した」とした。

 監督責任として那須塩原、宇都宮中央両署での上司ら5人も本部長注意などの処分とした。本澤成忠(ほんざわなるただ)首席監察官は「警察官がこのような事案を起こし、亡き男性と県民に深くおわびする。再発防止と県民の信頼回復に努める」とコメントした。

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