100年に一度の変革期 加速する電動化 どうなる広島の自動車産業

マツダ 丸本明 社長
「カーボンニュートラルや電動化への対応を着実に進めてまいります」

マツダは、電動化に向け大きく舵を切りました。2030年までの電動化の対応に1兆5000億円を投じると明らかにしたのです。

マツダのおひざ元・広島も大きく変わろうとしています。

ひろしま産業振興機構 長光寛晋 常務理事
「乗り遅れたり、対応できなかったら生き残れないという非常にたいへんな状態なんですね」

電動化の影響は、エンジンまわりだけではありません。ライバル社のEVを使った検証実験が始まっています。

部品メーカー
「(ライバルメーカーは)自分たちのやっていないこともやっているので参考になる部分がある」

きょうのテーマは、『加速する電動化 どうなる広島の自動車産業』

渕上沙紀アナウンサー
「自動車業界は、100年に一度の変革期を迎えるといわれていますが、これは、CASE と呼ばれています。一言でいうと、「車のデジタル化」です。

Connected ネットにつながる
Autonomous 自動運転
Shared & Services シェアリング(所有しない)
Electric 電動化

4つの頭文字を合わせた用語です。

こうした「電動化」などを研究しようと、広島で初めて産学官が連携したEVプロジェクトが立ち上がりました。

「フロントガラスの下の部分がどんどん赤くなっていますね」

9月に立ち上がったEV研究プロジェクト。この日は、日産の最新EV車「アリア」を使って、暖房をかけたときの熱の流れと、消費電力の関係を調べました。

技術アドバイザー 杉原毅さん
「ガソリン車と違って、暖房や冷房のエネルギーが全部、バッテリーの電力なので、電力は走行距離にストレートに影響する」

プロジェクトは、広島独自の新しい技術の開発とEV開発の人材育成を目指していて、県内の自動車部品メーカーなど20社が参画しています。

渕上沙紀アナウンサー
「電動で動いています。やっぱり快適ですね。自動車の電動化なんですが、こうしたシートの製造にも影響を及ぼしています」

1947年創業の東洋シートもEV研究プロジェクトに参画しています。

主にマツダ車のシートを製造し、快適性、特に乗り心地を追求しています。

車の電動化とシート、どう影響しているのでしょうか。

東洋シート 木村瑞穂さん
「われわれ、シートメーカーとして直接、人を温められるのがシートヒーターなので、そのヒーターを武器にして、こういうふうな温め方をすれば、EV車でも快適を狙えますというような形で提案ができたらいいなというふうに考えている」

電気を消費すると、走行距離に影響します。暖房でいうと、ガソリン車はエンジンの熱をそのまま転用できますが、EVは電気エアコンを導入することになります。

多機能シートならではの課題もあります。

東洋シート 保木本淳 主任
「全て電気で動くようになっています。それぞれユーザーさんの体格が違いますので、その体格によって、さまざまな調整、位置を調整したりという機能がついているシートです」

さらに…。

保木本淳 主任
「電動化については、車体にバッテリーをたくさん積むので車体の重量自体がアップしていく。それに伴って燃費を上げるためにシートの軽量化がとても大事になってくる」

目標は30%の軽量化。これは、高いハードルだそうです。車の電動化は経費がかかるため、コスト削減も求められています。

渕上沙紀アナウンサー
「初めて産学官が連携したEV研究プロジェクト。主催しているのは、ひろしま産業振興機構です」

ひろしま産業振興機構は、県の外郭団体です。

ひろしま産業振興機構 長光寛晋 常務理事
「まだ、広島地域で本格的なバッテリーEVを開発したことがないという中で、われわれは、どのように対応していけばいいのか、悩まれている企業も多いと聞いています」

広島県は、製造業の中で自動車など輸送関係が大きなウェイトを占めています。

労働人口のおよそ4分の1、製造業出荷額は3分の1になります。

長光寛晋 常務理事
「自動車産業の割合が大きい広島県によって、この『100年に一度の変革』CASEに対応できないということは、広島県の経済や人々の雇用などにおいても大きな影響を及ぼすのではないかと考えています」

一方、100年に一度の変革は、大きな可能性も秘めています。東洋シートも新しい商品開発に期待を寄せています。

東洋シート 保木本淳 主任
「例えばですね、CASEのA(自動運転)になったときにハンドルを持たないところで快適性、車内を快適に過ごすといったところで、例えば、マッサージの機能を追加したり、各シートでネックレストにスピーカーを付けたりして、それぞれの席によった新しい使い方をするのを考えていかないといけない」

「付加価値をつけるということは会社にとってはチャンスだと思っています。付加価値をつけるために新しい技術も習得していかなければいけないので、やはり今の社員の技術力の向上だとかいったところができると思っていますので、ピンチをチャンスに変えていきたい」

今後、車に対する価値観も「所有する喜び」から「利用する便利さ」に変わっていくといいます。

車内空間の新しい活用方法も検討されています。

ひろしま産業振興機構 長光寛晋 常務理事
「例えば、子どもの集中部屋であるとか、仮眠をする空間であるとか、あと、リモートワークをする空間であるとか…。たぶん、おもしろいアイデアがどんどんできていくんじゃないかなと期待しているところです」

「欧州のメーカーさんなどは、『自動運転で移動する間に、仮眠している間に目的地に着きますとか、そういったコンセプトはもう実際に提案されていたりします」

EV研究プロジェクトは、100年に一度の変革を新しい技術開発のチャンスととらえて、3年計画で広島独自の取り組みを発掘していきたいとしています。

長光寛晋 常務理事
「これから各メーカーのEV開発が本格化するであろう、例えば2025年くらいまでには技術力をつけて、対応力をつけて、広島の企業がそのタイミングで力を発揮できるような状態に持っていきたいと思っています」

渕上沙紀アナウンサー
「このEV研究プロジェクトは、部品メーカーのほか、県や広島市・マツダ・大学など、産学官が連携した全国でも珍しい取り組みです。新しい技術開発に期待したいものです」

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