投資信託「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の純資産総額が1. 5兆円を突破−−人気の背景は?

2018年7月3日(火)に設定された投資信託「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の純資産総額(残高)が、初めて1兆5,000億円を突破したと報じられました。

2022年2月10日(木)に残高1兆円を突破し、9月8日(木)に残高が1兆5,131億円を突破しています。マーケットがウクライナ侵攻やインフレなどの影響をうけるなかでも資金流入が極めて堅調であったといえ、残高もしっかり増えている状況です。

今回はeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の詳細と人気の背景、またS&P500へ投資することの特徴についてお伝えします。


1.5兆円ファンド「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」とは?

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)という投資信託をご存知でしょうか?

三菱UFJ国際投信が運用している投資信託で、もしかしたらすでに投資している方もいらっしゃるかもしれません。そのくらい人気のある投資信託です。

以前の記事で「VTIでも投資資金の関係で基準価格が高いという方や、分配金再投資が難しいという方は、VTIやVOOに連動する投資信託を利用するという方法もありますので気になる方は調べてみてください」とお伝えしましたが、VOOの投資信託に近いイメージだと思っていただけるとわかりやすいと思います。

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)はS&P500指数に連動することをめざす投資信託で、100円という少額から、日本円で投資できます。運用コストも業界最低水準で、これを非課税制度であるつみたてNISAで積み立てれば利益が非課税という恩恵も受けられます。

業界最低水準の運用コストを目指す「eMAXIS Slim」シリーズの投資信託となっており、長期的な資産形成において、投資信託の方が初心者の方にはやりやすいのかなと思います。購入時申込手数料は無料で、信託報酬は0.0968%以内(年率・税込)という、業界最低水準の運用コストです。

受益者還元型信託報酬という仕組みも採用されており、下記の通り純資産総額(投資信託の運用資金)が増えれば増えるほど、運用にかかるコストが安くなる仕組みとなっています。

また投資信託の優位性はETFよりも少額から投資できることです。

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は、非課税制度である一般NISA・つみたてNISAをはじめ、特定口座・一般口座においても毎月または毎日好きな頻度で積立投資が可能であることも強みです。積立投資サービスをほとんどの金融機関で利用できるので、仕組み化してしまえば簡単に積み立て投資ができます。

つみたてNISAは、購入した投資信託の売却益や配当金が非課税で受け取れます。非課税枠は年間40万円まで、月々約33,000円の積立ができます。非課税投資期間は最長20年間となっており、つまりeMAXIS Slim 米国株式をつみたてNISA口座で購入すると運用益が非課税になるので、非課税メリットを活かして節税しながら米国の主要大型株に銘柄分散して資産構築をしていけるということです。

さらに、指数に連動することをめざすインデックスファンドは、基本的に分配金が支払われないため、分配金を再投資する必要がなく、分配金にかかる税金の分だけ複利効果を高められます。加えて投資信託であれば、円で投資できるのも始めやすいと思います。S&P500指数のインデックスファンドの最初の1本に相応しい投資信託といえるでしょう。

S&P500への投資の特徴4つ

つみたてNISA対象銘柄の中でeMAXIS Slim米国株式(S&P500)は特に人気があるといえますし、S&P500のインデックスファンドに投資したい初心者の人にとって、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)は取り組みやすいといえるでしょう。

それではS&P500への投資には、どんな特徴があるのでしょうか? 簡単に4つお伝えします。

(1)アメリカが現在世界の経済の中心であること

相場の格言で「ニューヨークがくしゃみをしたら東京が風邪をひく」というものがありますが、アメリカの経済や金融市場が世界の中心であり、GDPが世界第1位のアメリカの景気や株価が世界の金融市場に影響を与えているといえます。そのため日本だけで投資するより、アメリカにも分散投資した方がよいといえるでしょう。

(2)米市場の成長性と日米のパフォーマンスの差

S&P500はITバブル崩壊やリーマンショック、コロナショックなどの金融ショックで大きな下落局面はあっても、長期的には右肩上がりに成長し続けています。S&P500と日本株の代表的株価指数TOPIXの推移を比較すると、米国株が優位だといえます。ドルベースで見た約20年のチャートでもローソク足がS&P500でオレンジのラインチャートがTOPIX先物ですが、どの時点からみて判断するかで差異はあるものの長期的に見て米国株が明らかに上昇しています。

TradingViewより

未来はわからないとはいえ、過去のパフォーマンスの差はチェックしておくべきでしょう。為替面でも日本株投資のヘッジになるといえそうです。

(3)米国としての成長性も見込まれること

米国は人口や高齢化、消費の面で日本と見通しが異なります。米国では人口増が続いており、2019年に国連が公表した世界人口予測によりますと、2050年におけるアメリカの人口を3億7,942万人、2100年は4億3,385万人と人口は今後も長期的にも増加する見通しです。一方で、日本は2050年に人口が1億580万人と現在から減少する見通しとなっています。

202212月1日(木)に雇用統計の発表がありましたが、人口が増え続けているからこそ非農業部門雇用者数も基本的に伸び続けているわけですね。労働力の増加もアメリカ経済の成長に寄与するでしょうし、人口が増えるということは消費も成長しますね。

高齢化の面でも内閣府「平成30年版高齢社会白書(全体版)」の高齢化の国際的動向によると、アメリカは先進国のなかで高齢化という面でも低くなっており、一方で日本は世界で最も高い高齢化率となっています。日本円や日本株だけで資産を保有する危うさも念頭に入れておくとよいと考えます。

(4)米国企業の成長性

GAFAMをはじめ、世界の有力企業の多くが米国から生まれています。米国では投資の法整備が進んでいて、エンジェル投資家など投資も活発であり、しかも世界から資本を集められる力も強いため、新たな技術が生まれやすいという優位性もあります。軍事や金融、ヘルスケアなどで世界をリードする企業が多く、ITもまだまだこれから世界中で成長余地があるでしょう。

技術進歩が見込めることは、米国株の大きな優位性だと考えます。アメリカ市場は上場基準も厳しく、株主還元意識も高いので利回りも期待できます。さらにS&P500はそのアメリカ市場で選ばれた500銘柄の指数となると、株価指数は上昇しやすいと考えられるのではないでしょうか。

11月28日週「相場の値動き」おさらい

ダウ平均は月間で1856ドル上昇と、2ヵ月連続での上昇となりました。主要3指数が揃って上昇しています。日経平均も月足で2ヵ月連続陽線です。

今週はパウエル議長のワシントンのシンクタンク、ブルッキングス研究所での講演が注目されましたが、パウエル議長はインフレは依然として高すぎるとしたものの、利上げペースの減速が理にかなうとしており、利上げペースの減速時期は早ければ12月の会合になると述べた模様です。

直近でFRB高官はタカ派的な発言が多かったこともあり、今回のパウエル議長の発言に対する警戒感がありましたが、それが和らいで買い安心感、買い戻しに繋がったようです。

12月2日(金)の日経平均株価の終値は前日比448円18銭安の2万7,777円90銭と反落。先週末11月25日(金)の日経平均株価は2万8,283円03銭でしたので、週間では505円13銭の下落となりました。

雇用統計の結果を受けて来週の値動きがどうなるのか、クリスマスラリー、掉尾(とうび)の一振につながっていくのか注目です。
※編注:初出時に誤字がありました。

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