乳がんをめぐる思い込み 切ったら終わりでもないし、復活できないものでもない 両側乳がんになりました174

次の誰かのためにと綴っています。

がんに乳がんになったというところで、人にはいろんな思い込みがある。「不治の病」という思い込み。「もうだめなんじゃないか」という自分自身の思い込み、そして相手からの「とったら終わりなんでしょう」っていう思い込み。どれも、しんどい。

がんとアンコンシャス・バイアス

絵本コンシェルジュの佐賀のり子さん(学校法人北邦学園の理事長)とお話しした江別蔦屋書店でのトークイベントにはたくさんの方にご来場いただきました。10月に発売した”おっぱい2つとってみた がんと生きる、働く、伝える”についてお話ししました。企画運営してくださった、江別蔦屋書店のみなさまに御礼とともにその3回目です。(2回目はこちら→)https://sodane.hokkaido.jp/column/202211301930002837.html

佐賀「アンコンシャス・バイアスを持ってるってことを書かれてましたけども、この乳がんに対する思い込み。かかってしまったら助からないんじゃないかとかねそういうこと自体も阿久津さんはそういう変えていきたいという風に考えていらっしゃるんですよね?」

阿久津「一方でがんに乳がんになったっていうところでとったら終わりなんでしょう思い込み、知識不足っていうのもね、あるんですよ。」

佐賀「そう思ってました。」

阿久津「それも違いますし、私の場合はがんイコール絶対抗がん剤を使わなきゃいけないんだと、思い込んでましたけどもそれも違う。」

ホルモン治療を中心のほうが良い方も、抗がん剤の方が効くタイプの方もいらっしゃる。そういった意味で思い込みというか、自分自身の今お持ちのがんに対する思い込みっていうのは一度捨てていただいて専門書や患者さんのためのガイドラインをペラッと1枚めくってほしい、と思う。

佐賀「この本のいいところはですね、専門的なこともたくさん書いているんですよ。でも私たち何か勉強しようと思った時に専門書ってなかなか読めないじゃないですか。難しくて、でもそれがこれすごくわかりやすく書いてあって広い範囲のことをいろんなこと書かれてるんですよね。そしてQRコードが付いていてもっと詳しく知りたいときはそこから情報を入れるということもできますし、ご自身の体験ももちろん書かれてますので、とっても読みやすいし、良い情報が書かれているかっていうのを私は感じたんですけども。」

阿久津「おすすめポイントとしましては放送局に勤めているということがあるので、これまでYouTubeですとかいろんなところで配信もさせていただいていたので動画の素材があるんですよね。ですので本の中身の中にQRコードが付いていてそこを読んでいただければそのまま、そこのYouTubeに飛んでいけたりとかもします。あとは患者さんを援助してくださる団体ですとか、正しい知識をきちんと載せてくださっているサイトってやっぱりあるんですよね。そのサイトに結びついていただきたいなというふうに思っています。こちらにもQRコードをつけてあるので押していただければもっと詳しく入っていただけます。この本、本当に最初に書いた時は400ページ近いぐらいがありまして編集の方とご相談をさせていただいて、非常に苦労していただきまして、このページ数には落ち着いておりますけれども大変なことだったわけですよ。情報整理するの。そんな本が売れるのかって。それを読みやすい形に整えたということもあるのでそれを補ってくれるのがQRコード。そういったことでちょっと新しめと言いますかちょっと工夫をしたのでもっと詳しく知りたいなと思ったらそこを読んでまた詳しく選んでいただくのいいのかなと思います。」

サポートする団体は増えている。その方同士が繋がらないんです。繋がれないんです。まだ知られてないんですよね。

がんを患っている親御さんを持つ子供さんを支える団体もあるし、リンパ浮腫や爪がちょっと黒ずんだりしたときのアピアランスケアのサポートをする団体もある。ネイルサロンがどこにあるのか、美容室なかなか皆さん結びつかなくって見つからないっていうこともある。

やっぱり自分で情報は取りに行かないといけなくて、さらにその情報が本当に正確なのかっていうのを見に行かなきゃいけなくって患者さんで勉強することが多すぎて大変だなと本当に思う。前もって少しでも何かの知識をもったところからのスタートがいいと思う。

佐賀「阿久津さんが今されてる活動で、皆さんに知っていただく、みんなが先に知っておくということはすごく役に立ちますよね。がん教育も始まったということを伺いました。」

阿久津「今年から高校、その前に中学・小学校でがん教育が始まったんですけれども、学校の先生が教科書で教えてくださるだけの授業が多くて、本当はがんの当事者の皆さんが行って喋ってもらってくださいというのを推奨はされてるんですけれども少ない。何が学校の先生が違和感があるかというと学校の先生もお家でがんの話ができないのに生徒に向かってがんの話なんかできないというのがやっぱり多い声なんです。たぶんそれを変えていただくというか、先生方自身がアンコンシャスバイアスなわけですよ。」

触れずらいもの、というのを変えていただいて私はがん教育って生きるための教育だという風に今お話をさせていただいている。小学校とか中学校とか大学とかでもお話しさせていただくこともあるが、本当に自分がどうやってどう生きていくのかの話。お子さんがもし小児がんの方がいてもかける言葉もやっぱりそれを
学ぶことによって変わりますし、自分のおばあちゃん、自分のお母さん、お父さんがなった時にも、学んだ人がかける言葉も変わるっていうことがあると思うのだ。

そのためにも非常にがん教育って大事だっていうふうに思っている。できるだけ患者さんはいるよ、ということを子供さんに分かっていただいてこんなに患者さんがいらっしゃるのだからごくごく当たり前の起きることなんだ、2人が一人ががんになる時代ということは、誰が起きてもおかしくないよってことを、いかにかつ子供の頃に分かっていただいてその思い込みや偏見をなくしていただくかということが非常に大事かなというふうに思う。

働く世代のがんが増えている

阿久津「子宮頸がんもそうですし、乳がんもそう。働く世代となるとだいたい20歳ぐらいから65歳ぐらいまでなんですけども、定年延長してくるとますます働く世代の癌の方って増えていくんですよね。働くって別に普通に働くだけじゃなくって家事の方もそう。例えがんになったとしても生きる年数がどんどん治療法が確立されて長くなって伸びてきているということは早く戻ってきていただいて早く社会に復帰していただいた方がやっぱり社会としては回るわけですよ。働く人足りないですから。なのにがん患者さんだからとより好みされちゃ困るっていうか、私たちまだまだできるんですという話なんです。そこの差別はやはりなくしていただい。できないこともあると思いますけれども、できることはやれるというような希望を聞いてもらって形で社会を支え、支えられるという形になると嬉しいかなというふうに思っています。」

阿久津「困りごと困りごとずっとお話しさせていただきましたけども、困りごとの大きな一つが私の乳房再建できなくなったってお話しさせていただきましたけども、両胸を失ってしまったので今も膨らみがない状態なんですよ。そうなると前から人が来るのも実は怖いんです。満員電車とかに乗るとやっぱり前から向かってくるのちょっと怖いなって思いがあって。やっぱり胸を補うパッドだったりとかやっぱり下着だったりとかっていうの特別なものが必要です。例えば私は両胸なので両方同じのを入れますけど、片方の胸を失われた方だと元の胸の大きさと同じだったり、重さを同じにしないと体のバランスが崩れてやっぱり大変だっていう方はいらっしゃって・・・特にうちの母もそうだったんですけども、ちょっとバランスが違うと腰にくるととなると同じようにやはり形のものだったり、重さだったりっていうものに支えていただいた方がより良く生きられる。気にしなくなるんですよね。重さの違いとバランスの違いを感じないから、また何かができるかもって思うんじゃないかなという風に思います。」

下着ブランドとして誰もが知る、ワコールにはリマンマというブランドがある。乳がん患者さんに向けて個室で相談しながら、悩みを相談して自分にあった下着を提案してくれる。さらにワコールは1974年から検診のサポート事業、ピンクリボン活動しているNPOの支援などに取り組まれているので理解も深く、安心感もある。やはり、自身の胸に関心を持つということが大事だ。

やっぱり下着をつけるときや採寸する時、身体を洗ったときにもしかしたらちょっとここにしこりがあるかもしれないと気づいた瞬間がある、という人は本当に多い。やっぱり乳房への関心、ブレストアウェアネスという言葉が本当に大事だ。

佐賀「私は阿久津さんの本の中で最後、自分を救えるのは最後は自分だっていう言葉が出てきて、すごい、それなんか染みたんですよね。そういうことを自分のことも救ってそうやって人のことも何かお手伝いできるというのはすごく素晴らしいなっていうふうに、本読みながらずっと感じていました。」

阿久津「ありがとうございます。告知された時の上席が本を読んだあとに私に送ってくれたメールの一文は、知らなくてごめんって書いてありました。染みますね。私も知らないうちにちょっと頑張ってたのかもしれないですよね。自分では頑張ってるつもりもなかったし、普通通りにしてるつもりだったんですけどやっぱりその部分がちょっとやっぱり染みてるみたいな・・・。テレビのドキュメンタリストなので絵が表現するものが全てだと思っていて、絵で表現できるものをナレーションで補うのがものすごく嫌で。ドキュメンタリーではほとんど事実しかナレーションつけてないんですね。」

佐賀「ご自身でナレーションもされてましたものですよね。」

阿久津「それもなぜかというともう嘘つきたくなくて、やっぱりそうやって演出をしてやってしまうことでどんどん嘘になってきてしまうっていうのが嫌で嫌でしょうがなくてできなかったんです。でも本の良いところというか、文章できちんとお伝えをしないとわからないっていうところとその文章によってまた違う新たなこう想像が生まれてくるっていうのがまた本の素晴らしさだなと思って。映像を作るだけじゃなくてこうやって本を書かせていただくということで私もちょっと新たな勉強をさせていただいて非常にいい経験をさせていただいたなと思います。

お読みいただいた方に必要とされる方に届いて、その方の次の一歩を支えることになったら嬉しいなというふうに思っています。

講演などもしていますが、興味のある方だけが集まるよりも大事なんです。その方がより深まっていただいてたり、よりご家族を救うことになったりするって非常に嬉しいことなんですけれども、今回、この場所のように何気なくふらっときていただいてピンクだったね そういえば10月だもんねって思ってくださるっていうことが 多分次の1歩につながるんじゃないのかな、と思うので本当にこうした機会を江別蔦屋書店の皆さんが作ってくださったっていうことに非常に嬉しく思ってます。スタッフの皆さんがその思いを込めて人の命を救うきっかけになるかもしれないって言って頑張って企画をしてくださったってことが非常に嬉しいだと思うのです。ありがとうございます。」

佐賀「本当にこのお話みんなに聞いてもらいたいと私も番組見た時も思いましたし、本を読んだ時もそう思いました。私のところの幼稚園の先生も若い先生たちが200人ぐらいいるんです。その先生たちにも見てもらいたいし、保護者の方にもね、お母さんたちにも見てもらいたいなっていうことをすごく思いました。」

阿久津「私が本当に一番伝えたかったのは人間は一人じゃないっていうことをお伝えしたいなと思っていて・・・今日のこの空間もそうですし、患者の仲間ですとか、ご来場いただいた皆さんもそうなんですけれども、お一人一人とのつながりがまた私の背中を押してくださってるというふうに思っています。人は一人じゃないなと思いますし、誰か助けてくれる方がいらっしゃると思いますし、私自身もたくさん手を差し伸べていただいて、ここまで来たのでこれからもたくさんの手を
差し伸べながら、皆さんと一歩ずつ前に歩いていけたら嬉しいなと思います。がんは撲滅に向かっている病だと私は思っておりますので、決して悲観せず、勇気を持って、1日1日前を進むと次の治療が生まれると思ってますので患者さんには一緒に歩いていきましょうとお伝えしたいですし、それを支えるご家族の方も一緒により強く手をつないで支えていきたいし、いただきたいなというふうに思います。」

阿久津友紀(乳がん患者)

© HTB北海道テレビ放送株式会社