メクル第683号 新聞で学ぼう!NIE実践校訪問 自分と社会のつながり実感 長崎大付属小・6年1組

「同じ日に発行された2つの新聞だけど、それぞれの地域らしさが出ていましたね」。2紙を広げながら確認する橋元先生

 読者のみんなは毎日、新聞を読んでいますか。政治(せいじ)や経済(けいざい)、事件(じけん)・事故(じこ)といったニュースから、スポーツや芸能(げいのう)などの話題まで、いろんな記事がのっています。そんな「情報(じょうほう)の宝庫(ほうこ)」を学校の教材として役立てる「NIE(エヌ・アイ・イー)」という活動があります。英語の「ニュースペーパー・イン・エデュケーション」の略(りゃく)で、「教育に新聞を」という意味です。県内では小中学、高校、特別支援(しえん)学校の10校が、日本新聞協会の「実践(じっせん)指定校」の認定(にんてい)を受けて、NIEの取り組みに力を入れています。
 新聞を使ってどんなことをするの? どんな良いことがあるの? 実践指定校を訪(たず)ねて、実際(じっさい)のNIEを紹介(しょうかい)します。みんなも“学びのヒント”が見つかるかも。

 今回紹介するのは長崎市文教(ぶんきょう)町の長崎大付属(ながさきだいふぞく)小(古野祐一(このゆういち)校長、児童567人)。実践指定校になって4年目です。11月25日、6年1組(児童30人)では「地方紙の特徴(とくちょう)をとらえる」ことをねらった国語の授業(じゅぎょう)が行われました。
 まず担任(たんにん)の橋元良太(はしもとりょうた)先生が黒板に張(は)り出したのは、拡大(かくだい)コピーした新聞記事。一つはハウステンボス(佐世保(させぼ)市)のシンボルタワー「ドムトールン」、もう一つは広島城(ひろしまじょう)(広島市)の写真がのっていて、それぞれの背後(はいご)に写った赤銅色(しゃくどういろ)の月が目を引きます。広島城の写真は、月の変化が分かりやすいように10枚(まい)の写真を合成したものです。
 「どちらも11月8日夜の皆既月食(かいきげっしょく)についての記事。でも、違(ちが)いがありそうです」。先生の問いかけに、子どもたちは記事を読み比(くら)べていきます。先生が広島城の記事を指して「ハウステンボスが写っている?」と質問(しつもん)すると、「違う。鯉城(りじょう)(広島城の別名)」などと声が上がりました。
 ここで先生は、二つの記事が長崎新聞と、広島県で発行されている中国新聞のものと種明かししました。中国新聞については11月9~11日の6年生の修学(しゅうがく)旅行で広島県を訪(おとず)れた際(さい)に購入(こうにゅう)していたと説明しました。
 二つの写真は長崎県、広島県の有名な場所で撮影(さつえい)していて、それぞれ地域(ちいき)らしさが出ていることを確(たし)かめました。
 子どもたちはさらに修学旅行中の3日間の新聞を読み進めて、地域らしさのある記事として長崎新聞では「秋の企画展(きかくてん)入場1万人 長崎市恐竜(きょうりゅう)博物館」などを取り上げて発表しました。
 先生が「もし恐竜博物館の記事が中国新聞にのったらどうかな」と質問すると、子どもたちは「(読者は場所が)分からないと思う」「自分には関係ないと思うのでは」と意見を発表。先生は「地域のことはその地域の新聞にのることに良さやメリットがある」と付け加えました。
 川上晴生(かわかみはるき)さん(11)は「全国ニュースもあるが、地域の記事が多い」と両新聞の共通点を発見。「全国ニュースの割合(わりあい)が多いのは全国紙。地域の記事の割合が多いのは地方紙」と先生が解説(かいせつ)すると、「地方紙は地方のことを報道(ほうどう)し、全国紙との違いを出している」と子どもたちの気づきにつながりました。

「イベント情報が載っていたよ」。2紙を読んだ気付きを友達と共有

 小柳葵獅(こやなぎあおし)さん(12)は「サッカー日本代表の森保一監督(もりやすはじめかんとく)の記事が両方にあったが取り上げ方が違っていた」と発表。先生は「監督は長崎出身で、サンフレッチェ広島の監督としても活躍した。どちらの土地にも関係が深い人。地方紙は全国ニュースを地域に関連させた記事にすることで、地域の人に関心を持ってもらいやすくしている」と説明しました。
 先生は最後に「身近な情報(じょうほう)は地方紙から得られる」とまとめ、子どもたちは「全国紙と地方紙は内容(ないよう)に違いがあることが分かった」「全国紙と地方紙を読み比べたい」と感想。地方紙の特徴や役割(やくわり)を理解した様子でした。
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 橋元先生は「自分の生活と社会とのつながりが実感できる」と、子どもが新聞を読むことの良さを語ります。「旅先の新聞は『自分はそこにいた』と実感を持って読めるはず。修学旅行の復習(ふくしゅう)にもなる」との期待を込(こ)め、今回の授業を企画(きかく)しました。子どもたちは修学旅行の見学場所や食べたものに関する記事に触(ふ)れ「ここ見た」「なつかしい」などと話していました。体験と記事を自然に結び付け、学びを深める姿(すがた)が印象的でした。

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