離婚後も我が子の学校行事行きたいのに親権持った元妻が拒否…生きがい奪われた元夫「家族連れ見るとつらい」

面会交流で一緒に遊ぶ父親と子ども=福井県福井市内(面会交流支援センター福井提供)

 離婚後の親権について、法制審議会(法相の諮問機関)は、現行民法の父母どちらかの「単独親権」に加え、双方の「共同親権」を選べる試案を公表した。離婚の理由はさまざまで、当事者も単独派と共同派に分かれる。福井県内の離婚経験者の実情を3回に分けて紹介し、親権のあり方について考える。

 夫婦関係は冷え切っていた。あるとき、妻から「離婚してほしい」と迫られた。県内の晴彦さん(仮名、40代自営業)は、子どもたちとの面会に制限をかけず、学校行事にも自由に参加できる条件で離婚届に判を押した。親権は子どもと同居する元妻が持った。

 週初めに、元妻に小学生2人の週末の予定を聞くが、返事は当日で、理由なくキャンセルされることもある。学校行事を知らされず、自ら調べて出席を希望したが、拒否された。子どもたちは会うたびに抱きついてくる。学校行事の後には「見に来てほしかった」と泣かれた。元妻の対応に納得できないことも多いが「強く反論できない。機嫌を損ねれば、子どもと会えなくなる可能性がある」。

 子どもの成長は、晴彦さんにとって生きがいだった。離ればなれになってから、スーパーに行けなくなった。「家族連れを見るとつらいから」。テレビも見られなくなった。「子どもと一緒に見ていた思い出がよみがえるから」。精神が不安定になり一時、晴彦さんの県外出張に親が付いてきた。列車に飛び込むかもしれないと不安だったからだ。

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 離婚届には、子どもの親権を父母のどちらが持つかを記す欄がある。親権とは、未成年の子どもに対する身の回りの世話や教育といった「身上監護」や、財産管理の権利と義務。監護には住む場所の指定、しつけなどの懲戒、職業の許可なども含まれる。

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 日本の民法は、父母の婚姻中は共同で親権を持ち、離婚後はどちらか一方の「単独親権」になると定めている。2020年の国勢調査によると、20歳未満の子どもを持つ県内の母子世帯は5479世帯、父子世帯は1135世帯。一般的には同居する親が親権を持つため、県内では母親が親権を持っているケースが多いとみられる。

 離婚後も父母とも子育てに関与できるようにすべきとの考えや、親権争いから起きる子どもの「連れ去り」を避けられるとの考えから共同親権を支持する声が出ている。

 離婚し別居した親と子どもの面会を支援している市民団体「面会交流支援センター福井」(福井市)の中川陽子代表は、長年調停委員を務め、子どもとの面会を希望しない親や、養育費を払えば責任を果たしていると考えている人を見てきた。「離婚しても、父母双方が子どもに対して同じ責任を負うべきであり、双方が子どもを第一に考える制度であるべき」と共同親権を支持する。

 晴彦さんも「大切なのは子どもの気持ち。暴力や養育費の不払いといったケースは別だが、原則共同親権、共同監護という制度が導入されれば、子どもは父母どちらとも会いやすくなる」と訴える。

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