訪問医「室内に人が倒れている」 川口のアパート 56歳男性、遺体で発見 腹部から出血、殺人事件で捜査

事件現場となったアパート=3日午前10時40分ごろ、埼玉県川口市芝塚原1丁目

 2日午後2時45分ごろ、埼玉県川口市芝塚原1丁目の集合住宅一室で、この部屋に住む無職の男性(56)が倒れているのを診療に訪れた男性訪問医(40)が発見し、川口署に電話で届け出た。警察と消防が駆け付けると、男性は居室内で腹部から血を流して倒れていて、その場で死亡が確認された。遺体の腹部などに刺切創のような傷があったことや現場の状況などから県警は殺人事件と断定。3日、川口署に70人態勢の特別捜査班を設置した。

 県警によると、現場は2階建てアパートの1階でキッチン付きのワンルーム。発見した際、部屋は完全施錠だったため、警察などが窓ガラスを割って室内に入ると、男性は和室の畳の上で、服を着た状態で倒れていたという。司法解剖の結果、死因は臓器損傷による出血性ショック。腹部などには刃物様のものでつけられた傷があった。死後、それほど時間は経過してないとみられる。

 男性は1人暮らしとみられ、定期的に訪問医の診断を受けていたという。予約日だった2日に訪れた男性医師が「訪問したが応答がない。建物のベランダ側の掃き出し窓越しに室内を確認したら人が倒れている」と通報した。

 県警は周辺の聞き込みや防犯カメラ捜査、関係者聴取などを行い、逃げた犯人の行方を追うとともに、男性が殺害された経緯を調べる。

■「物静かで優しそうな人」

 現場はJR蕨駅から北西に約1.1キロの住宅街にある6世帯が入居できる2階建てアパートの一室。

 裏手に住む大家の男性(59)によると、亡くなった男性は独居で約2年前に1階に引っ越してきた。直接の面識はないが、体が不自由で介護ヘルパー同伴でつえを突きながら歩いている姿を何度か見たことがあるという。これまでにアパートの住民間でトラブルなどはなかったと言い「物静かで優しそうな人だった。突然のことでびっくりしている」と驚きを隠せない表情を見せた。

 近所に住む男性(70)は事件発生当日の午後2時過ぎごろ、介護ヘルパーとみられる女性2人が亡くなった男性宅を訪れたのを見ており、応答がなかったのか10分ほど玄関先に立ち止まり、玄関ドアに取り付けてある郵便受けをのぞいたりしていたという。「その後にパトカーや救急車が来て何事かと思った」と振り返り「不気味で怖い、早く解決してほしい」と話した。

 同地区の民生委員の男性も亡くなった男性との面識はないという。亡くなった男性が住むアパートには独居の高齢者が複数人住んでおり、定期的に世帯訪問などをしているが「もめ事があったり、そのような相談を受けたことはなかった。どうしてこんな所で…」と顔をしかめた。

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