故人の銀行口座が凍結された!預貯金を引き出す3つの方法 元アイドルの弁護士が解説

身内が亡くなったとき、葬儀費用や入院費用などを支払うために故人名義の銀行口座から預貯金を引き出したいのに、凍結されてしまって困ったという話をよく聞きます。金融機関としては、誰が故人の相続人か確定しないうちから払戻しをしてしまうと、余計な紛争に巻き込まれます。そのため相続人全員で遺産分割協議を終えたうえで出直してもらうための対応なのです。

そうは言っても、故人自身の債務を支払うために緊急に預貯金の引き出しが必要なことはありますよね。そこで今回は、故人の口座が凍結された際に預貯金を引き出す3つの方法をお教えします。

第一に、法定相続人全員の同意書を用意して金融機関に提出する方法です。相続人間に争いがなく、いつでも連絡を取り合う関係であるならこれが一番簡便な方法です。しかし「兄弟は他人の始まり」という言葉もあるくらいで、遺産を巡ってそう簡単に相続人全員の同意書を取り交わすことはできない場合も多いというものです。

そこで第二に、預貯金債権の仮払い制度を利用する(民法909条の2)という方法があります。口座凍結による不自由を解決するために、2019年7月の法改正により、相続人全員の同意がなくても法定相続人であれば、一定額まで預貯金の仮払いを受けられるようになりました。仮払いを受けられる額は、相続開始時の預金額×3分の1×法定相続分です。ただし、法務省令により上限が150万円と定められています。

最後に、裁判所の仮分割の仮処分制度を利用する(家事事件手続法200条)という方法があります。この方法であれば、上限額はありません。しかし、この制度はすでに相続人間で遺産分割調停等を起こしている状況にあり、かつ、この制度を利用する必要性等を疎明しなければなりませんので、自力で行うのはやや困難かもしれません。

そもそも故人の預貯金は相続人全員の共有に属します。生前、自分が一番近しい立場にいたから単独で引き出していいだろうという判断をしてしまうと、他の相続人から損害賠償請求をされることもあり得ます。お困りの際は、お近くの弁護士等にご相談ください。

◆平松まゆき 弁護士。大分県別府市出身。12歳のころ「東ハトオールレーズンプリンセスコンテスト」でグランプリを獲得し芸能界入り。17歳の時に「たかが恋よされど恋ね」で歌手デビュー。「世界ふしぎ発見!」のエンディング曲に。20歳で立教大学に入学。芸能活動をやめる。卒業後は一般企業に就職。名古屋大学法科大学院入学。15年司法試験合格。17年大分市で平松法律事務所開設。ハンセン病元患者家族国家賠償訴訟の原告弁護団の1人。

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