【W杯】躍動する三笘薫、田中碧 川崎U─12で世界目指し成長 恩師・森谷周平さん「彼らの活躍が指導の指針に」

三笘薫(2020年、資料写真)

 サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会で日本代表は5日(日本時間6日)、初のベスト8入りを懸けてクロアチアとの決勝トーナメント1回戦に臨む。昨夏の東京五輪世代が中核となるチームで存在感を発揮しているのが、三笘薫(25)や田中碧(24)ら川崎フロンターレのU─12(小学生チーム)出身選手。「世界で活躍する人材」を目指して成長してきたタレントたちが歴史を塗り替える大一番に挑む。

 川崎育ちの活躍がめざましい。1次リーグ首位突破を決めたスペイン戦では三笘、田中の連係から決勝点が生まれ、最終ラインの板倉滉(25)は安定した守備で優勝経験国の猛攻を最少失点に抑えた。

 「一人のファンとしてうれしかった。本当にすごいことをしたなと思う」。そう目を細めるのは、川崎のU─12時代にコーチとして指導に携わった森谷周平さん(38)だ。

 Jリーグでは後発クラブの川崎が小学生年代の育成に乗り出したのは2006年。当時小学4年だった板倉や飛び級で加わった1学年下の三笘が1期生だった。近隣の横浜F・マリノスや東京ヴェルディに後れを取るまいと、監督を務めた高崎康嗣氏(52)が掲げたのが「世界基準」だ。

 日々の練習では「ボールを止める、蹴る」といった基礎技術をはじめ、一つ一つのプレーの「なぜ」を突き詰めて考える習慣を養った。当時大学を卒業して間もなかった森谷氏にも、「世界に出れば体格差もあるし、スピード感も違う。(指導歴は)関係ないから本気でやってどんどん体感させてほしい」と手加減を許さなかった。

 「小学生だからしょうがない、というのはなし。ひとりの大人として接する」と礼儀作法や生活面の指導も徹底。「あいさつは相手の目を見て握手する」「遅い時間に帰宅したら必ず監督に連絡する」と細かなルールを定める一方で、「喜怒哀楽のない選手は海外で通用しない」とピッチ内では強い自己主張と自然な感情の発露を促した。

 日頃の高い意識は実を結び、小学生年代の世界一を決める国際大会「ダノンネーションズカップ」には08年から4年連続で日本代表として出場。三笘はこれまで最も影響を受けた指導者に高崎氏の名を挙げ、「フロンターレに入った時点で世界を目指すことを意識付けされたし、基準がすごく厳しかった。振り返るとあの頃の経験が大きい」と感謝する。

 東京五輪でメダルを逃した教え子たちは悔しさをばねに成長。現在は川崎市内の公立高でサッカー部の顧問を務める森谷さんは、「彼らが活躍してくれることが指導の指針になっている。自分も負けないようにいい選手を輩出できるようにしないと」と刺激を受けている。

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