栃木県内初、企業衛星宇宙へ 大日光・エンジニアリング JAXAロケットに搭載

大日光・エンジニアリングのキューブサットに搭載される電源システムの試作品=14日午前、日光市根室

 電子機器受託製造サービスの大日光・エンジニアリング(栃木県日光市根室)が開発中の超小型人工衛星が、2024年度に宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げを予定するイプシロンロケットに搭載されることが4日までに決まった。企業が開発した衛星が宇宙に行くのは県内で初めて。バッテリーの劣化具合や異常を衛星内で自動で検知、解析する技術を宇宙空間で実証する。山口琢也(やまぐちたくや)社長(46)は「『宇宙産業のメッカ・栃木県』を目指し、本県の裾野拡大の先陣として弾みを付けたい」と成功を誓う。

 県内の衛星が宇宙に行くのは、帝京大理工学部(宇都宮市)の学生らが開発した2機に続き、3機目。同社は、昨年打ち上げられた帝京大の衛星の電源システムを担った。宇宙産業分野に進出する転機となり、帝京大と連携協定を結んだり、JAXAと共同研究を進めたりして「キューブサット」と呼ばれる10センチ立方サイズの衛星の規格に特化した電源開発に注力してきた。

 今回同社が検証する技術では、衛星に搭載されたコンピューター自身が電流、電圧、充電状態などのデータを取得し、バッテリーの「健康診断」や「寿命予測」に必要な解析を行う。衛星の他の機能を止めずに、リチウムイオン電池の劣化具合や異常を検知できる仕組みに新規性がある。

 同社のキューブサットは、10センチ立方を3個積み重ねた形状で、通信機やカメラなどを搭載し太陽光パネルで電力を確保する。5年間にわたり電源システムの状態のデータを取り続ける。電源以外は、帝京大や県内の企業などと連携して開発、調達し、24年7月に機体をJAXAに引き渡す。

 衛星が搭載されるロケットは「革新的衛星技術実証4号機」と呼ばれる。宇宙利用ビジネスや宇宙産業の活性化に資する画期的な技術をJAXAが公募し、選定された大学や企業などが開発した衛星や部品などを載せる。キューブサットでは9月下旬、同社と東京工業大、香川高専がそれぞれ選ばれた。

 県内には航空宇宙産業に関わる企業が多くある。山口社長は「帝京大や企業と手を携え、宇宙への夢を実現させたい」と意気込む。

 一方、JAXAは10月、同実証3号機となるロケットの打ち上げに失敗しており、スケジュールに影響が出てくる可能性もある。

キューブサットに搭載する電源ユニットを手にする開発責任者の岡本さん(右)と末永さん

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