男性トイレに汚物入れ…設置に努める医療関係者の思い 福井、小倉智昭さんも普及のきっかけに

男性トイレに設置されたサニタリーボックス=福井県福井市の県済生会病院

 男性トイレにサニタリーボックス(汚物入れ)を設置する動きが福井県内の病院や公共施設で広がっている。病気や加齢による尿漏れでパッドやおむつを使う男性が、外出時に捨てる場所に困っている実態があったためだ。病院関係者は「病気以外のストレスは減らしていかなければいけない」と訴える。

 ■病気以外の苦労軽減

 前立腺がんやぼうこうがんの手術後は尿漏れしやすく、パッドやおむつを着ける必要がある。県保健予防課によると、県内では毎年、約500人が前立腺がん、約100人がぼうこうがんと診断されている。

 福井市の県済生会病院は今年7月から本館外来の男性トイレの個室19カ所にサニタリーボックスを設置した。病院によると、設置前はパッドを持ち帰るための袋と、替えのパッドを大きなかばんに入れて持ってくる患者がいた。設置によって、患者は安心して処理できるようになった。登谷大修院長は「患者は、手術や薬のつらさを山ほど味わっている。病気のこと以外で苦しむことを減らしていかないといけない。患者が一番来る病院が設置していかないと」と力を込めた。

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 福井県は11月から、県庁の男性用の一般トイレ44カ所のうち23カ所、多目的トイレ4カ所すべてにサニタリーボックスを設置した。利用者に分かるよう、扉に「サニタリーボックス設置トイレ」の張り紙をしている。福井市も7月から、一般利用者の多い市役所本館と別館1、2階の個室に設置した。

 ■小倉智昭さんがきっかけ

 男性トイレへのサニタリーボックス設置は全国でも広がっている。きっかけをつくった一人が、フリーアナウンサーでタレントの小倉智昭さん(75)。2018年にぼうこうがんの治療のためぼうこうを全摘出し、尿漏れパッドをあてて生活している。

 小倉さんは今年7月、福井市内での講演で「ゴルフでショットの度に(尿が)出てしまうから、トイレがあるとパッドを替えている」と排尿をコントロールできない苦労を明かした。男性トイレにサニタリーボックスがないと「ビニール袋に入れて持ち帰らないといけない。3回くらいためてしまうと重いんですよ、結構。皆さん人目についたら気分が悪いだろうなとか気を使っていると思う」と設置を切実に訴えていた。

 一般社団法人「日本トイレ協会」が2月に行ったインターネット調査(557人回答)では、尿漏れパッドなど排せつを補助する用品を使用する男性38人のうち68.4%が「サニタリーボックスがなくて困った経験がある」と回答した。

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 県は10月、一般の利用者が多く、多目的トイレがある福井県立恐竜博物館や福井県立音楽堂などに整備を促したほか、市町や県内の商業施設に設置を進めるよう要請した。県保健予防課は「使用状況に応じて、設置数を増やすなど対応を検討していきたい」としている。

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