「金田城」中心に観光客誘致 アニメやゲームで高まる人気 利便性向上や県外PR 長崎・対馬

石のとりで「石塁」が残る金田城跡。国境の島の歴史や景観などを楽しめる=対馬市美津島町

 長崎県対馬市は、同市美津島町の国指定特別史跡「金田城跡」を中心とした観光客誘致に力を入れている。昨年度から、金田城の魅力アップを図る「歴史資産活用事業」を開始。本年度は金田城を中心に市内各観光地を回る周遊タクシーの実証実験などに取り組み、利便性向上や、県外へのPR活動に力を注ぐ。
 朝鮮式山城の金田城は、667年に大和朝廷が島中部の城山(276メートル)に築いた。ここ数年は、人気アニメや世界的ヒットゲームの舞台になるなどし、国境離島の歴史や美しい景観、自然を感じる観光スポットとして国内外から人気が高まっている。
 ただ、受け入れの課題もあった。登山道までの道は狭く、現地までの公共交通機関は少ない。かつてはトイレもなかった。市は昨年度から同活用事業を開始。利便性を高めようと、移動式トイレカーを登山口付近に設置するなどした。
 本年度は当初予算に3500万円を計上、うち半分以上を投じて8月下旬から観光周遊タクシー事業を始めた。金田城を含め、万関橋などの市内観光地をタクシーで巡り、利用満足度を問うアンケートに回答すれば、通常のタクシー料金の4分の1程度に割り引く。
 期間は来年2月まで。市から事業の委託を受けた対馬観光物産協会によると、9月は9件、10月は27件、11月は55件(19日時点)と秋の行楽シーズンに入り、利用状況は右肩上がり。客層は、運転免許を持っていない一人旅や熟年夫婦などが多い。協会の西護事務局長は「想像以上に利用があった。対馬に行こうにも現地での交通手段に困っている人は多く、周遊タクシーの需要は高い」と話す。
 市や協会は、首都圏での金田城PRにも取り組む。12月に横浜市である「お城EXPO2022」でパンフレットなどを配布。西事務局長は「城好きにPRする効果は大きい。(来年2月に向け)最後の集客に持ち込みたい」とする。
 周遊タクシー事業の好調を受け、市は来年度以降の継続を検討する。市観光商工課の担当者は「コロナの旅行支援がなくなってからが勝負。安さを売りにしたくはない」。観光ガイドの育成などを見据え「金田城を含めた、対馬の真の価値を伝え、継続的に来てもらえるようにしたい」と力を込める。


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