世界にチャレンジするアスリート!武藤弘樹選手「1ヶ月毎日1000本打っていました」

「ABEMA(アベマ)」が、2022年11月24日(木)から12月1日(木)まで、世界で活躍するアスリートをゲストに招いたイベントを東京・渋谷の各地で開催した。11月27日(日)・30日(水)には、トヨタ自動車に所属する選手・コーチら(GLOBAL TEAM TOYOTA ATHELETE)による、「#世界にチャレンジ」をメッセージとしたトークショー「日本を背負う想い~世界にチャレンジ~」を実施した。

トークショー1日目は、元サッカー日本代表で、「FIFA ワールドカップ カタール 2022」を全64試合無料生中継する「ABEMA」が支援するFC町田ゼルビア所属の太田宏介選手と、トヨタ自動車所属の元バスケットボール日本代表・三好南穂が登場。日本代表として感じた“日本を背負う”という責任感や、当時の体験について語り合った。2日目は太田選手と、トヨタ自動車所属アーチェリー日本代表の武藤弘樹選手が対談し、武藤選手の驚きの練習方法に会場が盛り上がった。イベント終了後は、太田選手に特別インタビューを実施。セカンドキャリアの構想など、今後の展望について聞いた。

GLOBAL TEAM TOYOTA ATHLETESとは、トヨタ自動車に所属し、世界に挑戦するアスリートたちの呼称。「スポーツを通じた平和で差別のない社会づくり」を目指すトヨタ自動車は、世界に挑戦するアスリートたちを応援しています。今回のトークショーではトヨタ自動車の協力のもと、「#世界にチャレンジ」をキーワードに、世界で活躍するアスリート同士の貴重なコラボレーションが実現した。

<11月27日(日) TOYOTA × 渋谷PARCO>

今回の一連のイベントでは、多くの人たちがサッカーを始めとするスポーツ界と接する機会を作ること、さらには渋谷の街全体の盛り上げを目的として、様々な企画を実施した。

11月27日(日)は、渋谷PARCO 屋上広場にて、元バスケットボール日本代表・三好南穂と、FC町田ゼルビア所属・太田宏介選手によるトークショーを開催した。この日は「FIFA ワールドカップ カタール 2022」における日本代表のコスタリカ戦を直後に控えてのトークイベント。選手のモノマネをして会場に集まるサポーターに対し、「皆さんめちゃくちゃ似てますね!」と話しかけるなど、和気藹々とした雰囲気で対談がスタートした。

序盤のトークテーマは、「日本を代表していると実感した瞬間は?」。太田選手は「満員のスタジアムで日本代表のエンブレムをつけて国歌斉唱をしているときですね。これから試合が始まることへの昂る思いと、緊張と、いろいろな感情が混じりあって震えました」としみじみと答えた。三好も「私も同じですね。試合前の国歌が流れている時です」と試合前の国歌斉唱への思いを語る。「日本を代表するようになって変わったことはなんですか?」という質問には、三好が「SNSのフォロワー数ですかね。試合を重ねるごとに増えていって応援されているというのが実感できてすごく嬉しかったです。今日はサッカーのファンの方が多いかと思いますが、ぜひバスケもよろしくお願いします」と茶目っ気たっぷりに答えた。

続いての質問は「日本の代表に選ばれた時、嬉しい気持ち、責任感、どちらの方が強くありましたか?」というもの。三好は「厳しい合宿を重ねてきたので、やっと入れたという嬉しさが一番でしたね。その後はすぐに、自分が入った分、落ちたメンバーもいるので、その選手たちや日本のために頑張らなければいけないなという責任感は出てきました」とまわりのことも考え気持ちも徐々に変化していったようだ。一方、太田選手は「僕は自分の喜びでいっぱいいっぱいでした。すごいですね、まわりのことも考えられていて」と感心した様子。さらに「嬉しい気持ちはありましたが、すぐに緊張に変わりました。当時の日本代表はメンツが濃くて。合宿では夕飯のテーブルで、トップ選手の中にひとつだけ椅子が空いていて、そこに座ることになったんです。試合では会ったことがありましたが、喋るのは初めてだったのでめちゃくちゃ緊張しましたね」と合宿での秘話を明かした。

続いて二人が語ったのは、「私生活で日本を背負っているんだなと思うこと」。三好は「ひとつひとつの行動や挨拶をしっかりしなくてはいけないなと思いますし、悪いことはできないですよね」とチャーミングな笑顔を見せた。また、メディアへの出演についても「試合が終わった次の日から、毎日メディアという感じでした。男子バスケは有名になってきていたのですが、女子バスケはまだまだだったので、メディアに出たら爪痕を残そうと意識していました」と女子バスケを盛り上げるために考えていたことを話してくれた。さらに「世界に負けていない日本人の強さ」というトークテーマでは、太田選手は「規律の正しさ。チームワークや戦術に対してみんなが監督から言われたことをしっかりやっているということですね。この前のドイツ戦を見ていても、個人個人の力はもしかしたら劣っているかも知れなくても、しっかりと隙を逃さない。全員で守って全員で攻撃するという規律の部分は、世界で戦える武器だなと思います」と話した。

また、「日本代表だと短い時間で意思疎通をしなければならないが、そのためにやっていたことは?」という質問に、三好は「コミュニケーションをたくさんとることですね。日本代表だと年齢の差も出てしまうのですが、若い方から先輩にちょっかいを出して仲良くしてもらうように努力していました。例えばコンビニに行って、買って〜など言ったりしていました」と独自のコミュニケーション方法を披露。チームの雰囲気を良くするために意識してやっていたと話した。また、太田選手も同様に「キャラをわかってもらわないといけないので、ちょっとふざけたりとか、食事の後に一発芸をやったりとかは、僕にとっては輪に入るための大事なツールでした。あとは、代表チームの中で流行っていたアプリゲームがあったのですが、みんなのレベルに追いつくためにめちゃくちゃ課金しました」と思わぬ裏話も。三好もそれには「いくら使ったんですか?」と興味津々。太田選手は「90万くらいですね。でも僕にとってはグループに入っていくための先行投資です。おかげで共通の話題もできて、代表招集以外でもコミュニケーションの場としてすごく役に立ちました」と輪を重んじるチームスポーツならではの持論を展開した。

最後のトークテーマは「日本を代表するアスリートに伝えたいこと」。太田選手は「この会場の一体感を見ればわかると思いますが、今日は皆さんひとつになって日本代表を応援しましょう!そしてまた、試合後にいい景色を見れるように頑張りましょう!」と熱いメッセージを送った。これには会場のボルテージも最高潮に。
トークショーが終わると、日本VSコスタリカ戦がついにキックオフ。三好・太田選手による熱いトーク直後の会場は熱気に包まれ、大きな盛り上がりを見せた。

<11月30日(水) TOYOTA × 渋谷ストリーム>

11月29日(火)~12月1日(木)には、渋谷ストリームで「ABEMA FOOTBALL FESTIVAL in Shibuya」を開催。フットサルのコートを模したフォトスポットや、ARグラス「Nreal」の体験ブースなどを展開した。
11月30日(水)には2回目のトークショーを開催し、太田宏介選手と、アーチェリー日本代表の武藤弘樹選手が登場し、会場を盛り上げた。トーク前半では「日本を代表することでプレッシャーは感じますか?」というテーマについて、太田選手は「招集を受けた時から、試合終了のホイッスルが鳴り終わるまで、ずっとプレッシャーを感じています。サッカーだけでなく、私生活も全てです」とコメントした。気になるプライベートでのプレッシャーについては「まわりからの見られ方やサッカーへの姿勢はもちろん、身だしなみはすごく気にするようになりました。練習に行く時の格好など、日本代表の選手がカッコ悪かったら嫌じゃないですか。子供たちに夢を与えられるように、しっかりといいものを着て、いいものを身につけるというのは心がけていました。先輩からも言われていましたね」と話し、未来の選手に夢を持たせることを意識しているのだと感じさせた。また、武藤選手も身だしなみについては「僕も意識しています。その選手のイメージにつながるので。変わった服装をしている人、いいものを身につけている人、それぞれいますけど、いいイメージになるように心がけています。言動の部分も気をつけていますね」と、日本を代表する選手ならではの意見を聞かせてくれた。

続いて「日本人が世界で戦うために必要なものとは?」というテーマでは、武藤選手は「僕らは欧米の人たちと比べたら小柄だし、筋肉の量も少なくてパワーでは勝てないんです。弓を引っ張っている時も、力が強い方が有利なのですが、そういうところで勝てないからこそ、技術や集中力など、アジア人だからこそ補えるところをどれだけ磨けるのかが重要だと思います」と回答。気になるアーチェリーの技術の磨き方については「1本真ん中に打てたら、また次の1本を真ん中に打つ。それの繰り返しなんです。なので同じ動作をどれだけ続けられるかの正確性や精密さが大切です。自分の体でどれだけ覚えて、どれだけ詰められるかがその選手のレベルの高さに直結している部分ですね」と語る。「最後の場面は本当に1本勝負なので、1本真ん中に打てればそれでいいんです。その瞬間の集中力があればいいのですが、長い目で見ると予選や個人戦など1週間は競技が続きます。何百本も真ん中に打たなければいけないというのが僕らの競技なんです」とアーチェリーの面白さを話す武藤選手に、太田選手からは「普段どんなトレーニングをしていますか?食事とかも気をつけていますか?」などと質問が。武藤選手は食事について「人によりますが、僕はあまり制限しない方です。僕のコーチは『アーチェリー自体が緻密な練習を重ねてストレスのかかる競技だから、食事でまでストレスをかけたら逆に競技にとってマイナスになる。食事はあまり我慢しなくていいよ』と言ってくれています」とその自己管理方法について語った。

続いてお二人に聞いたのは、「痛感した世界の差」について。太田選手は「ハングリー精神ですね。僕のいたチームはアフリカ系の選手や南米の選手が多い地域で、そもそも育ってきた環境が全然違うんです。自分が活躍して稼いで、養わないと家族が生きていけない状況で、ヨーロッパに来て死に物狂いで戦っている。そもそものメンタルの差はすごく感じました。そしてそういう仲間にも勝っていかないといけないので、どこでそのモチベーションを埋めていくかというところですごく苦労しましたね」と自身の体験を交えて圧倒された経験について話しました。一方で武藤選手は「世界一の選手はシューティングマシーン」とその高い技術力を評価。これから追いついていきたいと意気込みを語った。そこで太田選手が「アーチェリーの選手はいくつまで現役なの?」と素朴な疑問を投げかける。これについては武藤選手から「本当に長い人だと、今の日本では60歳くらいの方もいます。世界だと長くても40歳くらい。それでも、長くまでやれるスポーツですよね。運動負荷がそんなに高くないので、楽しむだけなら60歳でも70歳でもできます」と驚きの回答が。Jリーガーの平均が26〜27歳のサッカーと比べるとぐんと長い競技人生に太田選手も驚いた表情を見せた。武藤選手は「そういう競争がないと、下の選手が育っていかない。アーチェリーはメンバーが変わらないんです。でも変わらないといけない。もっと新しい選手が出てきたらいいなと思っています」と未来の子どもたちに向けた思いも吐露。自身の活躍についても「僕らがメダルを取ったことで、次の選手がメダルをとるイメージを掴みやすくなる。日本は勝てるんだ、と思ってもらうことで、眠っていた思いを呼びさませたんじゃないかと思います」と思いの丈を語った。
「今から本気でやったら、上を目指せますか?」と太田選手もアーチェリーに興味津々。武藤選手は「全然いけると思います!コツさえ掴んで、集中力さえあればいけます」と、競技人生の長いアーチェリーだからこその可能性を明かした。

また、「今の日本代表の選手たちにアドバイスをかけるなら?」とのテーマも。太田選手は「今の逆境を楽しんでもらいたい。大舞台でスペイン代表と本気の試合をできるなんて、なかなかないこと。その状況を楽しんでほしいですね。そういう舞台で活躍して結果を残せる選手たちの集団だと思っているので。日本国民はみんなで応援したいですね!」と熱い思いをぶつけた。

トークの後半戦では「世界と戦うために心がけていること」として、武藤選手が驚きの練習を明かした。それは「1000本打つ」という練習方法。武藤選手はこの練習について「中高生の頃から人より1本でも多く打とうと意識してきました。今の世界のトップの選手は1日300本くらい打っています。それでも多いくらいですが、僕は大学生の頃からアベレージでその倍くらい。一番きつかった練習では1ヶ月毎日1000本打っていました。文字通り、血が指ににじむほど」とその過酷さについても言及。これには太田選手も「これですよ、メダリストの強烈な努力は!」とあまりのすさまじさに、笑顔を見せた。

最後に、今後のキャリアについて「指導者には?」と聞かれた太田選手は、「現役を辞めたら違うことがやりたいですよね。ビジネスをやりたい。今は色々と準備もしています。もちろん、サッカーに100%を注ぎますが、その後の長い人生の準備もしっかり怠らないようにしたいなと思っています」と意外な展望を明かした。

終始温かいムードに包まれ、大きな拍手の中トークイベントは終了。太田選手と武藤選手の人柄の良さが伝わってくるイベントとなった。

■太田宏介選手 特別インタビュー

イベントに2日間登壇した太田宏介選手にインタビューを実施。2日間の感想や、イベント内で触れられたセカンドキャリアについてなど、今のスポーツ界に対する熱い思いを聞いた。

―2日間、トークショーに登壇いただいたご感想をお願いします。
サッカー以外のスポーツで活躍されている方との対談は自分にとって刺激になりますし、すごく楽しい2日間でした。まだまだ聞きたいことがたくさんあって、特に三好さんとは男女の差もあるので練習方法などをもっと聞きたかったんですけど、僕がMCみたいになってしまってもダメだなと(笑)。バランスを考えながら質問させてもらいました。そういうのも含めて楽しかったですね。アーチェリーと女子バスケットに携わっている知り合いはこれまでいなかったので、こうして知り合えたことが嬉しいですし、試合にも応援しに行きたいです。

―三好さん・武藤選手のお話で共感したポイントや、逆にここは考え方が違うなと感じた話はありましたか?
アスリート同士、メンタルの部分は結構考えてることが一緒なんだなというのは、トーク全体を通して感じました。違ったところは…やっぱりチーム競技(サッカーとバスケットボール)と個人競技(アーチェリー)とでは少し差はあるなとは思いました。でも武藤選手も、個人競技だからといって何かに囚われている感じはなく、ご自身の中でストレスをかけずにフリーに競技に臨んでいるというマインドだったので、そこまで大きな差は感じなかったですね。探っていけばきっと何か差はあると思うので、もっと探りたかったです(笑)。

―1日目は「FIFA ワールドカップ カタール 2022」日本VSコスタリカ戦のパブリックビューイング、2日目はフォトスポットが設置されるなど、一般の方々と距離が近いイベントでもありましたが、いかがでしたか?
今はサッカーをやっている自分にとってはホームな雰囲気ですし、特に1日目はパブリックビューイングの開始直前だったので、お客さんもみんな高揚した良い雰囲気の中で話せて、ありがたかったです。人前で話す場ではしっかり考えて話さないといけないので、言葉に重みが出ますよね。自分の過去を振り返るきっかけにもなりましたし、僕自身トークショーのような人前で話す場は好きなので、楽しめました。サッカーの世界だけで生きてきたので、こういった人前で話す場で他のスポーツの選手と交わる機会は、プライベートで食事するのとはまた違ってすごく良い機会ですね。

―イベントではセカンドキャリアについてもお話しいただきましたが、色んな業界の方から受けた刺激がご自身の活動にも影響する…ということもありますか?
そうなんですよ。こういう機会で知り合った方に、聞きたいことが生まれて連絡することはありますね。例えば「今アーチェリー界が置かれてる状況ってどうですか?」みたいな。僕としては今後にも活きるし、勉強になります。

―サッカーだけでなく、スポーツ界全体を見てらっしゃるんですね。
はい。スポーツビジネスはすごく興味があって、今までも自分の交友関係を広げてきて、色んな競技との接点はある状態なんですけど、こういうイベントや仕事きっかけで友達が増えていくのは嬉しいですね。

―「スポーツ界がもっとこうなったら良いのにな」と感じていることはありますか?
個人的には「サッカーを盛り上げよう」というよりも、マイナースポーツをもっとメジャーにさせるようなことをやっていきたいと思ってるんですよ。それこそ、アーチェリーというスポーツやそのルールがもっと世の人に知られたら良いなとか、もっとTVでの露出が増えたら良いなとか考えていて、そういう活動をやりたいんですよね。一時期注目度が高まったカーリングやラグビーもその後が続かなかったりとか、マイナースポーツにおける改善点ってたくさんあると思うんです。そこに関わって、スポーツ全体を盛り上げていきたいと思っています。サッカーや野球は既に大きくなってるから、もう認知度を上げる必要はないじゃないですか。サッカーにおいては、Jリーグは代表戦と比べると注目されていない、TV中継も少ない、スタジアムでお客さんが少ないといった課題はありますが、それでもマイナースポーツをやっている人にとってはすごく羨ましい状況だと思うんですよ。観戦する側の人たちにとっても、もっと色んな競技を知って楽しめるきっかけにもなると思いますし、マイナースポーツがもっと稼げて、盛り上がるような仕組みを作っていけたらなと思っています。

―FC町田ゼルビアに戻ってこられた今年は、太田選手にとって一つの節目の年にもなったかと思います。2022年、ここまでを振り返っていかがでしたか?
大変な1年でしたね。2021年11月から、オーストラリアのパースに住んでいたんですけど、遠征で都市の方に行ったらコロナの影響でパースに戻れなくなってしまって、今年の4月くらいまでずっとアウェーだったんです。そういう1年のスタートで、家族とも会えずずっとサッカー、でも試合はコロナで中止になって「何やってんだろう」みたいな。自分の中では、2022年の7月でサッカーは辞めるつもりだったんです。日本に帰って辞めてからの準備を始めよう…というところで、地元の自分が育ったクラブからオファーをもらってサッカーを続けることになって。半年間で引っ越しもしたりとか…海外の引っ越しってめちゃくちゃ大変なんですよ。日本に荷物が届くまでにも時間がかかるし、帰ってきてからの家も探さないといけないし、時間がない中ですべてを決めなきゃいけない。子供もいるので幼稚園のことや周辺環境のこととか、色々考えてたら本当に時間が足りない。足りない中でも練習は始まって…。新しいチームに行くのって、同じ日本人同士でもやっぱりエネルギーを使うんですよ、移籍って。そういう意味でもすごく大変でしたけど、なかなか経験できないことだと思うので、キャリアの中でも大きな、苦しかったけど楽しい1年でしたね。

―サッカーを続ける選択をしたのは、地元への思いが強かったからですよね。
自分がキャリアをどこで終えるかを考えたときに、「最後は地元で終える」というのが自分の中での一番きれいな形だったんですよね。でもそれも需要がないと、チーム側から「来てくれ」と言われないと行けないわけで。自分がどれだけ理想を描いていても、「難しいだろうな」とは思っていたので、35歳で区切りをつける、というのはもう何年も前から決めていました。

―そんな中でFC町田ゼルビアから声が掛かったのは、イベント中にも話に挙がった「強烈な努力」があったからだろうなと感じます。
自分の中では、そんなに努力したという感覚はないんです。振り返ってみると、負けたくない気持ちと「上に行きたい」という気持ちがあったから、自然とできてたんだろうなと思います。28~30歳くらいが選手としてのピークだったとは思うんですけど、サッカーってピークを越えて身体が動かなくなってきても、頭でカバーできるスポーツなんですよ。経験を積んだことで無駄な動きをしなくなるとか、ある意味賢くなってくるんですね。要領が良くなるというか。そうなってきてから、サッカーがさらに楽しくなりました。来年でプロ入りしてから18年になるんですけど、その年代ごとにサッカーへの取り組み方や思いが色々変わってきていて、僕はまだまだサッカー小僧、サッカー少年だなと思っています。

―サッカーをすごく楽しんでいらっしゃるのを、SNSなどを見ていても感じます。
不思議な感覚ですね。小学校の頃に習い事でやっていたことが仕事になって、お金をもらえるようになって。でも家族ができてからは“仕事感”が出てきて…不思議な感覚のまま大人になりました。ピュアですね(笑)。

―今でも少年の心のまま、サッカーを楽しんでいるんですね。
はい。でもその裏には、サッカーしか知らないことによる危なさもすごく感じています。だから若い頃から、プライベートの食事はなるべくチームメイトではなく違う業界の人と行くようにしていて、そこから今も横の繋がりがたくさんできてるんですけど、サッカー以外の話を聞くことで色んなことに興味を持ち始めています。人生全体で見ると、きっとサッカー選手を辞めた後の方が長いので。もっともっと稼ぎたいし、色んなところで刺激を受けて、たった一回しかない人生を豊かにできるように準備してる、という感じですね。

―色んなことに興味を持って活動なさっている太田選手ですが、来年の抱負を挙げるとしたら?
まずは、サッカーを楽しむ!サッカーを全力で楽しんで…いや、サッカーじゃないな。人生を楽しむ!長らくサッカー生活を続けてきて、若い頃とのギャップを感じることもあると思いますけど、良いことも悪いこともすべて楽しむ。そして、それを次に繋げるための準備も楽しむ。大変なことも多いと思うんですけど、そんな1年にしたいですね。「楽しむ」が人生のモットーなので!

―最後に、今回のトークショーでは「世界にチャレンジ」をテーマに様々なお話をしていただきましたが、太田選手が今後チャレンジしたいことは何ですか?
「世界にチャレンジ」というところで言うと、僕はヨーロッパに行って活躍できなかったので、子供を世界で勝てる子にしたいです。それはもうサッカーじゃなくても、どのジャンルでも良いです。とにかく若い頃から日本以外のところに触れさせて、グローバルに生きる子供にしたいですね。それが夢です。

© 株式会社ジェイプレス社