「真っ黒パン」が地球を救う、かも? 生地に“放置竹林の炭” 長崎「はじまりパン」で販売

竹炭を使ったバゲットなどを手にする西島さん=長崎市宿町、エレナ日見店内「はじまりパン」

 真っ黒なパンが、地球を救う?-。長崎市宿町のパン屋「はじまりパン」のオーナー、西島直孝さん(50)が、竹炭を生地に練り込んだパン「maccro(マックロ)シリーズ」を販売している。市内のNPO法人と協力し、将来的には放置竹林を活用した地元産の竹炭を使うことで、山林維持や温暖化抑制につながる「サステナブル(持続可能)なパン」として売り出す構想だ。
 エレナ日見店の一角にある同店。店頭に並んだ黒いバゲット、カレーパン、あんパン、食パン、クロワッサンはひときわ目を引く。売れ行きは上々だが、西島さんは「世代によってこうも反応が分かれるのはめずらしい」と笑う。高齢世代が見た目から敬遠するのに対し、若者世代には「映える」と好評という。

インパクト抜群の黒い食パン

 同市四杖町の「あぐりの丘」などで4店舗を展開していたが、新型コロナ禍を機に業態を見直し、今年10月末、地元で再出発。「新店の看板となるインパクトのある商品を」と発想したのが竹炭パンだった。
 食用の竹炭パウダーはミネラル分を多く含み健康食として人気がある上、無味無臭のためパン生地との相性もいい。一方で竹を焼いて炭化したり、竹炭をパウダー状に粉砕したりするのには特殊な技術や設備を要する課題もある。

竹炭を製造するNPO法人「環境保全教育研究所」の窯=長崎市田手原町(同法人提供)

 そこで、市内で竹林整備や竹林を使った自然体験活動などに取り組み、竹炭の製造窯を持っているNPO法人「環境保全教育研究所(へんちくりん)」に相談。共同で食用の竹炭パウダー作りに着手した。同法人には、これまでも同様の打診があったが、商品化には至らず、窯が活躍するのは現在年に1、2回。法人理事の豊田菜々子さん(33)は「商品化が実現すれば竹炭に付加価値が生まれる。互いの強みを生かして一緒に商品を作るのが楽しみ」と話す。
 同法人によると竹は生育が早く、繁殖力も強いため、所有者の高齢化などで管理されなくなった雑木林などで広がりやすい。放置が続くと生態系に悪影響を及ぼしたり、土砂災害を引き起こしたりするため、全国的に問題となっている。竹炭は、間伐した竹の有効活用だけでなく、炭化によって二酸化炭素(CO2)の排出を抑える効果もある。
 「はじまりパン」では現在、奈良県から仕入れた竹炭パウダーを使用。消費者の反応を見ながら、「へんちくりん」と協力し、地元産の竹炭パウダーの製造を目指す。西島さんは「食べることで地域や社会に貢献できる。新しいパンとして広がれば」と意気込む。


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