神奈川・大井町議補選、「候補者ゼロ」で選挙なし 「平成以降では前例がない」 なり手不足は全国的な課題

現職と新人が立候補を届け出た大井町長選に対して、立候補者が1人もいなかった町議補選のポスター掲示板=同町内

 神奈川県・大井町長選と同日に告示された大井町議補選は6日、立候補者がいないまま届け出が締め切られて「選挙なし」が決まった。立候補者が誰もいない選挙は県内でも極めて異例で、町選挙管理委員会は「少なくとも平成以降では前例がない」と驚く。一方で町村議会議員のなり手不足は全国的な課題となっており、現役議員からは「町民からは議会が機能していないと見られている証拠。責任を感じる」とため息が漏れた。

 同日午後5時、立候補者が現れないまま補選は当選者なしの無投票が決まった。この日まで町選管には問い合わせもなく、立候補の「噂(うわさ)」すら聞かれず、選管職員は「残念としか言いようがない」と顔をしかめた。

 しかしその一方で、有権者の反応は「さみしいけれど仕方がない」「今の欠員のままでもいいのでは」と意外と素っ気なかった。

 公職選挙法では、国政選挙や県議選などとの「便乗選挙」ができないため、町議会はこのままだと、2024年9月の任期満了まで欠員状態が続くことになる。今年11月には議員7人が新型コロナウイルスに感染するなどして、出席議員数が足りず流会となったばかりなだけに田村俊二議長は「欠員が補充されなければ審議にも影響しかねず、由々しき事態だ」と危機感を募らせる。

 かつて企業城下町だった同町は人事異動に伴う社員の移住が多く、歴史的にも政治への関心は低い。今年7月の参院選の投票率は52.86%(県内平均54.51%)で近隣の山北町(72.96%)を20ポイント下回った。町議選は04年にも定数18に17人しか立候補せず定数割れで無投票となったことがあり、2年後に欠員補充のために行われた再選挙も候補者1人で無投票に終わった。

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