節税のため年内に確認しておきたい9項目を税理士が解説、年末調整後も確定申告で受けられる控除は?

ふるさと納税や年末調整などを行なったせいか、年末近くになると慌ててお金の勉強をし始める方が増えます。私のオンラインセミナーにも「お金の知識を年内につけたい」と駆け込んで来られる方が増えました。

ただでさえ忙しい年末になって慌てるなんて、なんて……嘆かわしい!

とは言ったものの、年明けよりも年内に動いておいた方がよいことが多いのは事実です。今回は、節税のため年内にやっておくべきことについて、お笑い芸人で本物の税理士である税理士りーなが、楽しく解説します。


税金の基本は「所得」「控除」「税率」

まず税金の基本は、「所得」という【もうけ】から、「控除」という【引く分】を差し引きして税率を掛け算しますので、税金を安くしようと思うと「所得」が少なく「控除」が多ければよいということになります。

また、収入に対して課される税金には「所得税」と「住民税」の2つがあり、「所得税」を減らすことができれば「住民税」も同じ情報を使って計算するので、税金がダブルで減ることになります。正しい知識でぜひ、節税に挑戦してください。

それではまず、控除について見ていきましょう。

医療費控除

1月から12月に支払った医療費(生計が同じ家族分を含む)が10万円を超える場合は、医療費控除で税金が安くなります。手続きの方法は、1年分の医療費の領収証を集計し、人ごと・医療機関ごとの集計表(医療費控除の明細書)を作成してください。翌年3月15日までに確定申告することで控除を受けることができます。医療費の領収証は提出の必要はありませんが、5年間はいつ税務署から問い合わせがあっても対応できるように保管しておいてください。

なお給与年収が300万円未満なら10万円を超えていなくても医療費控除のチャンスがあるかもしれません。詳しくは、過去の連載記事をご覧ください。

セルフメディケーション税制

医療費控除を受けない方は、健診や予防接種など病気の予防に使った金額を使って「セルフメディケーション税制」という控除を受けることができます。対象となるのは、ざっくり言うと下記6項目です。

(1)健康診査
(2)予防接種
(3)定期健康診断
(4)特定健康診査(メタボ健診等)
(5)がん検診
(6)特定の医薬品の購入

ここではわかりやすさを優先し、簡潔にしておりますので、詳しくは国税庁ウェブサイト「No.1129 特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)【セルフメディケーション税制】」をご覧ください。上記の健診・検診は、健保協会や市区町村または勤務先が実施するものが対象ですのでご注意ください。こちらも生計が同じ家族分を合計でき、5年間は領収証を保管しておきましょう。

配偶者控除・配偶者特別控除

配偶者の給与が150万円以内なら38万円(住民税で33万円)の控除が受けられます。ただし、納税者本人の年収が1,095万円を超えている方は控除金額が減り、1,195万円を超えると控除はなくなります。

ここでいう「配偶者」とは、法律上での婚姻関係を指しますので、一緒に暮らしているというだけでは対象になりません。もし「年明けにでも入籍しようか」なんて言っているカップルで、一方の給与が年150万円以内なら、年内に入籍して配偶者の控除を受けた方がお得ですよ。

年内に入籍した上に控除も受けられて「なんて……喜ばしい!」ですよね。年末調整の後もらった「源泉徴収票」を持って確定申告して控除を受けましょう。

寡婦控除・ひとり親控除

出会いもあれば別れもあります。配偶者と離婚または死別した方の控除があることをご存知でしょうか? 扶養している家族や子どもがいる方で、合計所得金額が500万円以下(給与で約670万円以下)の方は控除対象になります。

給与年収103万円以下の子を養っていれば「ひとり親控除」として35万円(住民税なら30万円)、子以外の扶養親族を養っている妻の場合は「寡婦控除」として27万円(住民税26万円)の控除があります。子以外の扶養家族の場合は「夫と別れた妻」と限定されているので、女性のみが受けられる控除となっています。子を養っている場合は「ひとり親控除」として男女を問わず控除が受けられます。

年末調整で手続きをし忘れている方は、年明け3月15日までに確定申告で手続きできます。

扶養控除

収入が激減した家族を養っていませんか? 給与年収が103万円以下なら扶養控除の対象家族になります。

同居の子どもが脱サラしてお笑い芸人を目指しているなど、年末調整の時に把握しきれなかった家族の年収をチェックして、扶養親族のボーダーライン「103万円の壁」の範囲内かどうかを確認しましょう。

離れて暮らす親でも、仕送りをしているなど「扶養している実態」があれば扶養親族にすることができます。ただし、扶養に入れることで自治体から交付される給付金がストップするなど、税金以外の交付金に影響することがありますので注意が必要です。黙って扶養に入れて給付がもらえず「なんて……嘆かわしい!」なんてことにならないよう、該当する扶養親族にはひとこと声をかけて確認してくださいね。

こちらも年末調整でできなかった場合、確定申告で控除を受けることができます。

小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済等掛金控除は、個人事業主の方の退職金を積み立てて、その積立金額を税金の計算の際に引いてくれるという控除制度です。会社員の方は「iDeCo」がこの控除に該当します。

60歳以降で受け取るためのお金を運用して、その掛け金分を控除してくれるのですが、事前の手続きが必要です。証券口座の開設をして、さらに審査が必要になるため、始めるのに2ヵ月ほど要する場合も多いそうです。年内に掛け金をスタートできる可能性は低いですが、同じ始めるなら早い方がよいので「いずれ始めたい」と思われている方は、年内に重い腰をあげてはいかがでしょうか?

ふるさと納税

ご存知の方も多いふるさと納税は、好きな地域に寄付をして、お礼の品「返礼品」をゲットし、その後で住民税を中心に税金の控除を受けることができます。税金が安くなる金額は、「寄附額 − 2,000円」です。1万円寄付すれば8,000円が安くなるということです。つまり、実質2,000円で返礼品をゲットできる、そんなお得な制度です。

収入に応じて1年間の上限額が決まっていますので、必ずふるさと納税サイトなどでチェックした上で寄付を行ってください。上限額を超えて寄付しても、誰も教えてくれません。ただ寄付しただけの「気前の良い人」にならないように、しっかり確認してくださいね。

このふるさと納税は、1月から12月を1年として計算しますので、今年まだやっていない方はお早めに。給与のみの方は「ワンストップ制度」といって、寄付をした各自治体に手続きすると確定申告の必要はありません。ただし、このワンストップ制度の手続き期限が1月5日など年明けすぐに設定されている自治体がほとんどですので、寄付を行ったら遅れずに手続きしてください。詳しくは、過去の連載記事をご覧ください。

所得を減らす

所得についても見ていきましょう。

給与収入のみの方の所得は、年末調整で所得税の計算をしてもらった後で受け取る「源泉徴収票」に書いてある通りです。自分で増やすことも減らすこともできません。一方で、起業や副業をされている方は所得の計算をするとき、入ってきた「収入」から出ていった「支出」を引き算して計算しますので、支出が多くなれば所得が減ります。

事業をされる方の中には、一年分の収支を年明けに集計して確定申告される方が多いですが、年内の早めに計算をしておいて「これくらい儲かっているのか」というのが分かれば「もう少し経費を使っても良いかな」という判断が早期にできます。今後の事業に役立つ支出があるのなら、先行投資をしっかりして事業拡大につなげられてはいかがでしょうか?

「確定申告が大変」という言葉をよく聞きますが、大変な理由は年明けに全部一気にやろうとするのが理由となっている方が多い印象です。早めに記帳や集計などをスタートして申告の準備をすることで、申告前に楽できるだけでなく、計画的な投資によって節税も可能になりますので、ぜひ今のうちからレシートを集めて帳簿をつけ始めておいてくださいね。

NISAの開設

NISAとは株や投資信託など金融資産に投資をして、儲かった分の税金が0円になるという制度です。iDeCoは間に合わなくとも、NISAならまだ短期間で口座開設することも可能です。

NISA口座で投資できる金額は1年間で決まっていて、つみたてNISA40万円または一般NISA120万円と設定されています。この年間の上限額は12月末で区切られますので、年内に始められた方が、非課税で投資できる金額が増え、お得度合いが増します。

投資を始めるなら、まずはNISAからというのが一般的です。毎月100円ずつという少額からスタートすることも可能ですので、まだ始めていない方は是非始めてみられてはいかがでしょうか?


節税の方法をまとめてみましたが、いろいろな角度から税金を安くする方法があるということがご理解いただけたのではないでしょうか?

税金は、知識があれば効率よく減らすことができます。いいかげんな知識でやみくもにやってみて、結局税額が変わらず「嘆かわしい」ことにならないよう、正しい知識で確実に「喜ばしい」節税を行なってくださいね。

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