企業の年賀状廃止が一気に加速、うわべの礼儀より環境配慮 進むデジタル化、働き方改革も背景

SDGs対応やデジタル化を理由に年賀状廃止を決めた福井県内企業のホームページ上の告知

 企業の間で年賀状による新年あいさつを取りやめる動きが福井県内でも広がっている。近年の虚礼廃止の流れに加え、SDGs(国連提唱の持続可能な開発目標)への対応や、ペーパーレス化などデジタル化の普及が、通例行事の見直しに拍車をかけている。

 福井コンピュータホールディングス(本社福井市)は11月28日、ホームページ(HP)で年賀状廃止を告知。「近年の社会的な虚礼廃止の流れやデジタル化による環境配慮の取り組みのひとつ」と理由を挙げた。

 これまでは主要取引先やパートナー企業にグループ全体で約1500通送っていた。代わりに、1月最初の営業日にHPで、経営に関する社長のメッセージを盛り込んだ年頭のあいさつを公表する方針。同社の担当者は「年賀状は送り先が限定的になってしまう面があり、全ての関係者に一様にあいさつできるようになる」と話す。

 環境配慮の企業イメージを強調する狙いも大きい。コンクリート構造物設計施工の日本ピーエス(敦賀市)は11月1日、「SDGsの推進と脱炭素社会の実現への取り組み」として、全取引先への年賀状廃止をHPで公表。担当者は「業界大手も同様の理由で昨年から廃止の公表が相次いでいる。当社は脱炭素経営に力を入れており、その一環で決めた」とした。

 同じく廃止を決めた有機化学品製造業のシプロ化成(坂井市)も「化学業界は2年前から大手で廃止の動きがあった」(担当者)とし、「日本の慣習を取りやめることに消極的な社内議論もあったが、環境配慮を打ち出していくことが大事だ」と話した。

 デジタル化の進展も要因の一つだ。福井市内の機器設計製作会社は「新型コロナウイルス禍でデジタル化が進み、メールなどで全ての取引先とこれまでと変わらない付き合いができる」とした。

 企業の年賀状印刷を請け負う県内の印刷会社は「昨年から年賀状廃止に伴う注文減が見られたが、今年一気に加速した。環境配慮だけでなく、業務効率化やコスト削減も理由にある」と指摘。廃止を決めた企業の担当者の一人は「取引先の配属や役職の確認なども含めて年賀状はかなりの事務負担だった」とし、働き方改革も背景にあるとした。

 日本郵便広報室は「環境負荷低減などを理由に一部企業で取りやめの動きがあることは承知している」とした上で、「SDGsの一環として年賀はがきは森林保全につながる認証を受けた紙を使用しており、引き続き多くの方々に利用いただきたい」としている。

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