ハートレーは欠席/チームWRTがRLLをサポート/CGR経営陣の動きetc.【GTPデイトナテスト初日Topics】

 ディフェンディングチャンピオンのアキュラ、王座奪還を狙うキャデラック、帰ってきた耐久の雄ポルシェ、そして新参のBMW。計4つの自動車メーカーがLMDhプラットフォームの基でまったく新しいプロトタイプカーを製造して覇を競い合う、2023年IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権GTPクラスのスタートが約1カ月後に迫るのに先立ち、12月7~8日の2日間にわたって開幕戦の舞台となるデイトナ・インターナショナル・スピードウェイでIMSA公認テストが実施されている。新しい時代の幕開けを前に計9台のLMDhマシンが集ったGTPデイトナテスト初日のパドックから、各種トピックスをお届けする。

■テスト初日は2台のアキュラARX-06がワン・ツーを占める

***ウェイン・テイラー・レーシング(WTR)は、デイトナ・インターナショナル・スピードウェイでの最初の2セッションで非公式ながらタイムチャートのトップに立った。リッキー・テイラー、フィリペ・アルバカーキ、ルイ・デレトラズ組10号車アキュラARX-06は、4時間にわたって行われた午後セッションで1分36秒103を記録した。

***10号車に続いたのは、同じアキュラARX-06を走らせるメイヤー・シャンク・レーシング(MSR)の60号車で、トム・ブロンクビストと新加入コリン・ブラウン、助っ人のエリオ・カストロネベス&シモン・パジェノーという4名がドライブするマシンは、トップの車両から0.074秒遅れた。

***WTRの第4ドライバーであるブレンドン・ハートレーは、今週末のFIAガーラでTOYOTA GAZOO Racingのセバスチャン・ブエミ、平川亮とともにWEC世界耐久選手権チャンピオンの表彰を受けるため、今回のテストに出席していない。

***アクション・エクスプレス・レーシング(AXR)が運営する31号車キャデラックV-LMDhは、ふたつめのセッションで75周ともっとも走行距離を稼ぎ、非公式ながら3番手タイムをマークしている。チップ・ガナッシ・レーシング(CGR)の02号車キャデラックとポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ(PPM)の7号車ポルシェ963がこれに続いた。

***一方、真新しいレース用シャシーである24号車BMW MハイブリッドV8とCGRの01号車キャデラックはともに、日中のふたつのセッションを終えた時点では、まだ走行を行っていない。

***BMW MチームRLLのテクニカル兼レース運営ディレクターであるブランドン・フライは、今日中にマシンをコースに出すことがチームの目標だとSportscar365に語った。また、CGRの運営責任者であるマイク・オガーラは、2日間のテストを新しいキャデラックのレースシャシーのシェイクダウンとして利用していると述べている。

***IMSAは、ル・マン24時間レースと同様に、選考委員会の選考に漏れたデイトナ24時間レース参戦希望チームのためのリザーブリストを想定している。シリーズの広報担当者によると、出場が認められたチームと車両を掲載したエントリーリストは来週中に発表される予定だという。

***ロア・ビフォア・ロレックス24時間(開幕戦前の公式テスト)の補足規定では最大61台が参加できるとされているが、デイトナ24時間へのエントリーリクエストは火曜日の締め切り時点で70台以上となっていたことが理解されている。

■RLLとチームWRTにとってWIN-WINの状況

***LMDhプロジェクトリーダーのマウリツィオ・レスキウタがSportscar365に語ったところによると、BMWはロレックス24時間に8人目のドライバーを起用するかどうかをまだ決定しておらず、現在「議論中」であるという。

***2024年からBMW MハイブリッドV8を用いたWECハイパーカープログラムを運営するチームWRTのメンバーは、インディアナ州ジオンズビルにあるレイホールの新しいワークショップで、チームRLLがIMSAで走らせる2台目のクルマの組み立てを支援している。このふたつめのシャシーは12月15日、サーキット・オブ・ザ・アメリカズ(COTA)でのテスト時にロールアウトする予定だ。

***チームWRTのメンバーが派遣されていることについて、レスキウタは次のように述べた。「これは、彼らが自分たちでマシンを製作する前にスキル習得のスピードアップを図ることができ、また、すべての人が休まずに働いているこのピーク時にレイホールチームを助けることができるため、WIN-WINの状況だ」

BMW MチームRLLのBMW MハイブリッドV8
AFコルセの21号車フェラーリ296 GT3

■複数名がセブリングでのダブルヘッダーを敢行予定

***ポルシェのLMDhディレクターであるウルス・クラトレによると、ポルシェ963のこれまでの走行距離は2万7000kmに達し、約1万2000マイル(約1万9300km)をテストで走行しているキャデラックを上回った。アキュラとBMWは数字を発表していないが、どちらもポルシェ、キャデラックの後塵を拝しているものと思われる。

***ローレンス・ファントールは、IMSAミシュラン・エンデュランスカップのためにパフ・モータースポーツと契約し、同じ週末に行われるIMSA第2戦セブリング12時間レースとWEC開幕戦セブリング1000マイルレースの両方に参戦する許可をポルシェから得ている。まだ正式発表はされていないが、彼はポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ(PPM)のWECフルシーズンのラインアップに組み込まれることが分かっている。

***デイン・キャメロンとマイケル・クリステンセンの両名は、スーパーセブリングで“二刀流”を披露する予定だ。ポルシェのIMSAとWECの全ドライバーラインアップは、12月17日に開催される『ナイト・オブ・チャンピオンズ』アワードディナーでアナウンスされる。

***CGRの経営陣には大きな動きがあった。スティーブ・エリクセンとマイケル・ハーベイが退社し、マイク・オガーラがチーム全体のオペレーション担当ディレクターに昇進。02号車キャデラックの元カーチーフであるジェイミー・コーツはCGRのIMSAプログラム・チームマネジャーに就任した。

***01号車キャデラックのレース・ストラテジストを務めていたピーター・バロンは、同門のAXRに移籍し、新たに“ドライバー・パフォーマンス・ オプティマイゼーション”という役職に就いている。バロンは、ジャック・エイトケンをエンデュランスカップレースのためにチームに迎え入れたことで知られている。

***そのエイトケンは火曜日に31号車キャデラックで最初のラップを重ねた。クルマとサーキットの経験はともに「かなり印象的」だったと述べた彼は、「時間が経つにつれ、とても楽しくなっていった。パワーもあるし、ダウンフォースも効いているのを感じることができる」と続けた。

■新型ポルシェ911 GT3 Rのテストを12月半ばに実施

***チームRLLでは、ピアーズ・フィリップスが組織を離脱した。フィリップスはチームの代表を務めていたが、後任はまだ決まっていない。

***ポルシェモータースポーツ・ノースアメリカ社長兼CEOのフォルカー・ホルツマイヤーによると、ポルシェはIMSA GTDのカスタマーチームを対象に、新型ポルシェ911 GT3 Rを使ったプライベートテストを12月17日から18日の2日間、デイトナで行う予定であることをSportscar365に明かした。参加台数は5台を見込んでいるという。

***デイトナ24時間には、今週のテストに参加しているGTDプロのパフ・モータースポーツと未発表のもう1台を含め、少なくとも6台の新型ポルシェ911 GT3 Rが参加する予定だ。

***ACOのコンペティション・ディレクターであるティエリー・ブーベは、IMSAとのグローバル・プロトタイプ・コンバージェンスプロセスの一環として、FIA代表とともに今週から現地入りしている。ACOとIMSAは、金曜日にLMDhテクニカルレギュレーションの最新版を共同で発表した。

***FIA世界モータースポーツ評議会は、12月7日にボローニャで行われる会合で、2023年WECスポーティング・レギュレーションの一連の更新、現行のLMP2レギュレーションの延長、ACOによるGT3ベースのプロ・アマクラスの詳細について承認する予定だ。

ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのポルシェ963
パフ・モータースポーツの9号車ポルシェ911 GT3 R
チップ・ガナッシ・レーシングの02号車キャデラックV-LMDh

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