赤い星&地球みたい? 土星の衛星タイタンの最新画像をウェッブ宇宙望遠鏡が撮影

【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ(NIRCam)で撮影されたタイタン(注釈なしバージョン)(Credit: NASA, ESA, CSA, A. Pagan (STScI), JWST Titan GTO Team)】

赤い天体と地球のような色合いの天体が2つ並んだこちらの画像、実はどちらも「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」の「近赤外線カメラ(NIRCam)」を使って2022年11月4日に撮影された、土星の衛星タイタンです。

ウェッブ宇宙望遠鏡は人の目で捉えられない赤外線で主に観測を行うため、2つの画像は赤外線の波長に応じて着色されています。左はタイタンの下層大気に敏感な波長を捉えたもので(2.12μm:赤に割り当て)、北半球に浮かぶ2つの雲が写っています。

いっぽう、右は複数の波長で取得された画像を合成したものです(1.4μm:青、1.5μm:緑、2.0μm:赤、2.1μm:明るさに割り当て)。大気中の厚いヘイズ(もや)を透かして、タイタン最大の湖であるクラーケン海(Kraken Mare)や、高アルベド地形(明るい領域)のアディリ(Adiri)、暗い色の砂丘が広がるベレット(Belet)といった特徴的な地形が写っています。

【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ(NIRCam)で撮影されたタイタン(注釈付きバージョン)(Credit: NASA, ESA, CSA, A. Pagan (STScI), JWST Titan GTO Team)】

ウェッブ宇宙望遠鏡の打ち上げと観測開始は世界中の研究者から待ち望まれていました。濃い大気や炭化水素の湖があるタイタンを研究する科学者も例外ではなく、大気の組成や気象パターン、表面のアルベド地形を研究できる時が来るのを期待していたといいます。

今後もウェッブ宇宙望遠鏡のNIRCamや「中間赤外線装置(MIRI)」を使ったタイタンの観測が予定されており、大気を構成する気体のデータや、タイタンが高密度な大気を有する太陽系で唯一の衛星になった理由を解き明かす重要な手がかりが得られると期待されています。

冒頭の画像は欧州宇宙機関(ESA)やウェッブ宇宙望遠鏡を運用する米国宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)から2022年12月1日付で公開されています。

Source

  • Image Credit: NASA, ESA, CSA, A. Pagan (STScI), JWST Titan GTO Team
  • STScI \- Webb, Keck Telescopes Team Up to Track Clouds on Saturn’s Moon Titan
  • ESA/Webb \- Webb Tracks Clouds on Saturn’s Moon Titan (Annotated)

文/松村武宏

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