学校給食の時間、国は「会話は可能」と言うけれど…福井県が原則「黙食」を続ける理由

前を向いて給食を食べる児童。県内では事実上の黙食が当面続きそうだ=12月2日、福井県福井市東安居小学校

 学校給食の際に適切な対策を取れば「会話は可能」とする文部科学省の通知に対し、福井県教委は12月7日までに、県内の新型コロナウイルス感染拡大を踏まえ、引き続き給食中の会話を控えることを原則とする通知を市町教委に送った。県内でも一部に「黙食」を緩和する動きがあるものの、教員からは「会話解禁は時期尚早」と慎重な意見が多く、当面は静かな給食が続きそうだ。

 食器を置いたり、汁物をすすったりする音だけが聞こえる。福井市東安居小学校では、給食時も授業と同様に机を前に向け、会話を控えている。県内で新型コロナが流行した2020年以降、多くの小学校で見られる光景だ。同校では担任も最後列で前を向いて食べる入念な対策を取っている。

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 文科省の11月29日付の通知では、座席配置を工夫するなどの措置を講じれば会話は可能と強調した。一方、県教委の通知では国の考え方を伝えた上で、県内の流行「第8波」の状況を踏まえ「引き続き給食の時間は会話を控える」と慎重な文言を盛り込んだ。各市町教委も表現に若干の差はあるものの、県教委の指針に基づく通知を各学校に送っている。

 「和気あいあいと食べる本来の給食は心を明るくし、人間関係づくりにも大切な時間。とはいえ、いまの感染状況では、すぐにコロナ前に戻しましょうとはならない」。県小学校長会の北和幸会長はこう指摘し、校長を務める東安居小学校でも当面は現状のスタイルを維持するという。

 スペースに余裕がある小規模校でも同様の声が挙がる。敦賀市のある小学校の教頭は「インフルエンザとの同時流行を懸念している。少なくとも冬場は“黙食”を続ける見込み」とした。

 一方、文科省の通知をきっかけに緩和を模索する学校も出始めている。勝山市のある小学校では先日、子どもたちの意思を尊重しようと、高学年の児童と教員が給食の在り方を話し合う場を設けた。「アクリル板を挟めば会話してもいいのでは」といった意見が出され、試行を検討するという。

 福井市中心部の小学校長は「学校の規模も感染状況もそれぞれ大きく異なる。給食をはじめ、各校ごとに柔軟な対応があってしかるべきだ」と話した。

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