現場の声聞き福祉用具作り 長崎大ボランティアサークル あすまで「障害者週間」

井川さん(左)の自宅を訪れ、洗髪時に使う補助テーブル(右下)を使った感想を聞き取る加藤さんら=長崎市内

 長崎大のボランティアサークルが、障害がある人の生活をサポートする福祉用具作りに取り組んでいる。「腕を上げられない」「ドアを開けにくい」-。そんな日常の困り事を聞き取り、培った技術や知識を開発に生かしている。9日まで「障害者週間」。
 2日午前、長崎市内。難病の影響で身体障害がある井川聡子さん(62)宅を、同大工学部3年の加藤亮太さん(22)と菊地鴻太さん(21)が訪れた。「使ってみてどうですか?」。昨年7月、腕を上げるのが難しい井川さんのために、肘を置いて頭を洗いやすくするテーブルを製作。この1年余り使ってみた感想を聞き取りにきたのだ。
 「本当に助かる」と井川さん。片腕をもう一方の手で支え、片手ずつ洗っていた時と比べ、格段に洗いやすくなったという。「ちょっとの差だけど、不便がなくなると気持ちが前向きになる」と声が弾む。キッチンにある昇降式の棚も、力を入れず上げ下げできるよう改造を依頼している。
 サークル名は「福祉用具つくらん場」。加藤さんが大学1年の冬に設立した。障害者支援の福祉用具やロボット開発に詳しい同大名誉教授、石松隆和さんの授業を受けたことがきっかけ。石松さんが「一緒にやらないか」と提案し、加藤さんが菊地さんら同学年の仲間5人に声をかけた。
 もともと医療や福祉分野への関心が高かった加藤さん。自身の食物アレルギー治療を十数年続けたことが、その原点という。小学校入学前から高校まで、検査や治療のため頻繁に通院。日常生活には常に「制限」や「不便」が付きまとった。大学入学前に「障害がある人はもっと大変な世界。自分よりもつらい人のために何か力になりたい」と志した。
 石松さんを通じてさまざまな依頼を受け、車いす用のスロープや、引き戸を自動で開閉する機械、寝たきりの人が脚を鍛える訓練装置などの製作に挑戦してきた。新型コロナ禍で活動が制限され未完成のものもあるが、菊地さんは「障害がある人の視点で見ると、生活の中に思わぬ不便があると気付く。将来就職した時にも、製品開発の中でバリアフリーの考え方を生かしたい」と話す。
 バリアーに直面する人を「支える側」に立つ学生たち。加藤さんは「もっと場数を踏み、現場の声を聞いていきたい」と意気込む。将来は福祉関係の仕事に就きたいと考えており、「幅広い知識を身に付け、福祉と工学を組み合わせたような仕事ができれば理想」と語った。


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