潮目の変化が鮮明に、11月では2年ぶりの40件台 ~ 2022年11月「負債1,000万円未満の倒産」調査 ~

  2022年11月の負債1,000万円未満の企業倒産は44件(前年同月比18.9%増)で、11月としては4年ぶりに前年同月を上回った。コロナ禍の2020年は6月94件、7月83件と急増したが、コロナ関連支援が浸透すると倒産は抑制された。ただ、支援効果が薄れるとともに、再び増勢の兆しが見え始めてきた。
  「新型コロナ」関連倒産は17件(同142.8%増)で、負債1,000万円未満の倒産の約4割(構成比38.6%)を占めた。

 産業別は、最多が「サービス業他」の21件(前年同月比10.5%増)で、全体のほぼ半数(構成比47.7%)を占めた。サービ業他は、通所・短期入所介護事業(ゼロ→4件)、食堂,レストランと酒場,ビヤホール(1件→2件)などで、前年同月を上回った。
 次いで、「建設業」(同133.3%増)と「小売業」(同12.5%減)が各7件と続く。
 原因別は、「販売不振」が前年同月と同件数の28件で、全体の63.6%を占めた。次いで、「他社倒産の余波」8件(同700.0%増)、「事業上の失敗」4件(同300.0%増)の順。
 資本金別は、「個人企業他」を含む資本金1,000万円未満が40件(同11.1%増)で、全体の9割(構成比90.9%)を占めるなど、ほとんどが小・零細企業だった。
 形態別は、「破産」が42件(同16.6%増)で、構成比は95.4%と大半を占めた。小・零細企業は資産背景が脆弱で、経営再建が困難で事業継続を断念するケースがほとんどを占めている。
 コロナ関連支援策は、企業の資金繰りを一時的に緩和した。しかし、2022年に入り支援策が縮小すると、支援効果も薄れてきた。さらに、2023年は「実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)」の返済もピークを迎える。また、円安や資源高などによる物価上昇、人件費上昇などでコストアップは避けられない。過剰債務を抱えた企業は、新たな資金調達は容易ではないだけに、倒産だけでなく廃業などの動きにも注視が必要だ。

  • ※本調査は、2022年11月に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、企業倒産集計(負債1,000万円以上)に含まれない、負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。

倒産44件、11月では4年ぶりに前年同月を上回る

 2022年11月の負債1,000万円未満の倒産は、44件(前年同月比18.9%増)で、7月、8月の24件を底に3カ月連続で前月を上回った。11月としては、2018年以来、4年ぶりに前年同月を上回った。
 「新型コロナ」関連倒産は17件(前年同月比142.8%増、前年同月7件)と急増し、負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は38.6%(前年同月18.9%)と約4割を占めた。
 負債1,000万円未満の倒産は、小・零細企業がほとんどで資金余力も乏しい。コロナ支援効果も希薄化し、業績回復が見込めず事業継続を断念するケースが増えている。

1000万未満

【産業別】サービス業他が約5割

 産業別では、10産業のうち、増加が4産業、減少が1産業、同件数は5産業だった。
 最多は、サービス業他の21件(前年同月比10.5%増)で、11月としては4年ぶりに前年同月を上回った。ただ、構成比は47.7%で、前年同月の51.3%から3.6ポイント低下した。
 このほか、建設業が7件(同133.3%増)で3年ぶり、製造業が3件(同50.0%増)で4年ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。また、不動産業が1件(前年同月ゼロ)で、4年ぶりに発生した。一方、小売業は7件(前年同月比12.5%減)で、3年ぶりに前年同月を下回った。
 情報通信業2件、卸売業と金融・保険業、運輸業が各1件で、それぞれ前年同月と同件数だった。農・林・漁・鉱業は、2年連続で発生がなかった。
 業種別では、通所・短期入所介護事業4件(前年同月ゼロ)、建築工事業3件(同ゼロ)、内装工事業(同ゼロ)、経営コンサルタント業(同1件)、商業写真業(同ゼロ)、食堂,レストラン(同1件)、酒場,ビヤホール(同1件)が各2件。このほか、とび工事業、一般電気工事業、製缶板金業、船舶製造・修理業、工業用模型製造業、自動車部分品・附属品卸売業、野菜小売業、酒小売業、宗教用具小売業、花・植木小売業、中古品小売業、無店舗小売業、不動産管理業、すし店、理容業、美容業、劇団、書道教授業、警備業が各1件で、それぞれ前年同月を上回った。

1000万未満

【形態別】消滅型の破産が95.4%

 形態別は、「破産」が42件(前年同月比16.6%増、前年同月36件)で、4年ぶりに前年同月を上回った。負債1,000万円未満の倒産の95.4%を占め、前年同月(97.2%)より1.8ポイント低下した。
 このほか、民事再生法が2件(前年同月1件)で、2年連続で前年同月を上回った。
 負債1,000万円未満の倒産は小・零細企業がほとんどで、その多くは経営再建や事業再構築のための資金力も乏しく、事業継続を諦めていることを浮き彫りにしている。

【原因別】販売不振が6割超

 原因別は、最多が「販売不振」の28件(前年同月比±0.0%)で、前年同月と同件数だった。負債1,000万円未満の倒産の6割超(構成比63.6%)を占めたが、前年同月の75.6%より12.0ポイント低下した。「既往のシワ寄せ(赤字累積)」が1件(前年同月比±0.0%)だった。
 『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は、前年同月と同件数の29件(同±0.0%)。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は65.9%で、前年同月の78.3%より12.4ポイント低下した。
 このほか、「他社倒産の余波」が8件(同700.0%増)で3年ぶり、「事業上の失敗」が4件(同300.0%増)で4年ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。一方、代表者の病気や死亡を含む「その他」が1件(同75.0%減)で、2年ぶりに前年同月を下回った。
 「運転資金の欠乏」は、前年同月と同件数の2件だった。

【資本金別】1千万円未満が9割

 資本金別は、「1千万円未満(個人企業他を含む)」が40件(前年同月比11.1%増、前年同月36件)で、11月としては3年ぶりに前年同月を上回った。ただ、構成比は90.9%で、前年同月の97.2%より6.3イント低下した。
 内訳は、「個人企業他」15件(前年同月比±0.0%)、「1百万円以上5百万円未満」12件(前年同月比20.0%増、前年同月10件)、「5百万円以上1千万円未満」8件(同700.0%増、同1件)、「1百万円未満」5件(同50.0%減、同10件)だった。
 このほか、「1千万円以上5千万円未満」が4件(前年同月比300.0%増)で、2年ぶりに前年同月を上回った。「1億円以上」と「5千万円以上1億円未満」は、11月としては2008年より15年間で発生がなかった。

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