耕作放棄地でテント泊 地域の応援団が活用模索

人里離れた梅の耕作放棄地で野営の準備をするリボーンプロジェクトメンバー(和歌山県田辺市上芳養で)

 和歌山県田辺市の関係人口養成講座「熊野リボーンプロジェクト」の第3期生が、耕作放棄地の活用に挑戦している。現地実習では人里離れた梅の耕作放棄地に野営し、大地の声に耳を傾けて、ヒントを探った。

 リボーンプロジェクトは、熊野の景観の保全・継承が目的。地域の暮らしと関わりながら歩く低山トラベラーを対象に2020年に創設した。低山トラベラーの第一人者大内征さん、登山アプリを運営するヤマップ(本社・福岡市)が協力している。

 第3期は10月から12月まで全5回。経営コンサルタントや教員、編集者ら県外在住の9人が、世界遺産の熊野古道を中心とした観光、世界農業遺産「みなべ・田辺の梅システム」を中心とした農業について学びながら、自身が熊野とどんな関係を築いていけるかを模索している。

 11月下旬にあった2泊3日の現地実習では、田辺市上芳養の梅林や梅の加工施設などを見学。夜は梅の耕作放棄地にテント泊した。周囲に遮るものがなく、みなべ町の夜景も見渡せる山の上。剪定(せんてい)した梅の枝で火をおこし、ジビエ肉や干物などの夕食を味わった。

 大阪市の会社員、柳原浩貴さん(33)は「山歩きが趣味。ヤマップのアプリを利用していたことで、プロジェクトに興味を持った。キャンプ経験は豊富だけれど、こんな何もない所に泊まるのは初めて」と参加を楽しみにしていた。

 里山の営みをいかに守るかが大きなテーマ。和歌山には梅のイメージがあったが、視察して農業の厳しさも実感したという。「熊野はよみがえりの地。耕作放棄地を自分を見つめ直したい人が訪れる場所にしたい。何度も訪れたいと思わせる仕組みが大切になる」と話した。

 大内さんは「耕作放棄地を実感するには、泊まってもらうのが一番と考えた。そのため、テント泊の経験がある人に絞って募集した。何もないところをどう開いていくか。イメージが湧いてきたと思う。今後の展開が楽しみ」と期待を込めた。

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