宇都宮市、児童相談所設置へ 時期未定 「早急に県と協議」

宇都宮市内の児童を担当する県中央児童相談所=8日午、宇都宮市野沢町

 宇都宮市の佐藤栄一(さとうえいいち)市長は8日、市議会一般質問で「児童相談所(児相)の設置に向けて具体的に検討する」と表明した。設置時期は言及していない。児童虐待防止で強い権限を持つ児童相談所は都道府県と政令指定都市の所管だったが、児相の管轄区域人口を「おおむね50万人以下」とする改正児童福祉法が来年4月に施行されるのを前に、全国の中核市で設置に向けた動きが加速している。

 県内の児相は現在、県の機関として県北、県中央、県南の3カ所体制。宇都宮市を含む県中央児相の管内人口は約86万人。人口約51万人の宇都宮市が独立した児相を設置したとすると、県内児相の体制再編も迫られる。市子ども未来課は「早急に県と協議に入りたい」とし、県こども政策課も「宇都宮市の検討を注視しつつ、3児相の管轄区域の再編を検討していく」とした。

 佐藤市長はこの日の答弁で、児相の必要性について「児童人口が減っているのに児童虐待相談対応件数が増えている」として、対策の強化が必要との認識を示した。

 その上で検討過程の課題として(1)家庭に寄り添い支援する市が、親子を強制的に引き離す権限を持つことの懸念(2)専門的な知識と資格を持つ人材確保(3)財源の確保-の三つを列挙。先進事例の視察や国、県の支援拡充などにより、それらを解決できる見通しとなったことを明らかにした。

 児相を設置した場合に期待できる効果としては「虐待が疑われる子どもへの速やかな対応、保健と福祉の責任と権限を持つ中核市の強みを生かしながら、切れ目のない支援が可能になる」と述べた。

 今後のスケジュールについて言及を避けたのは、具体的な設置場所や施設の規模、人材育成計画が未定のため。6月の市議会厚生常任委員会で市執行部は、仮に設置するとした場合「最低5年は準備期間が必要」と答弁していた。

 厚生労働省によると、今年4月時点で全国の中核市では62市のうち4市が設置済み。開設予定時期が明確なのは6市ある。設置の方向で検討しているのは宇都宮市を含めて4市となった。

答弁する佐藤市長=8日午前、宇都宮市議会本会議場

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